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村上頌樹投手がチーム58年ぶり2人目の投手三冠へ!《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
2月の安芸キャンプにて。中央(前の右に遠藤選手、左に藤田選手)で笑顔の村上投手。

 7月30日から9月12日までの18連勝で、ウエスタン・リーグの優勝争いに名乗りを上げた阪神ファーム。首位を走るソフトバンクに追いつきながら、なかなか引き離せなかったのですが、16日に行われた今季最後の直接対決を制し、ついに優勝へのマジックナンバー9が点灯しました。

 この段階では残り9試合での9なので、あってないようなもの。最短で22日に優勝というのも、あくまで計算上のことでした。ところが17日、阪神-中日戦(ナゴヤ)が雨天中止。ナイターのソフトバンク-広島戦(タマスタ)も台風接近のため中止でマジックは8に減り、18日も阪神は中止で7に、さらにソフトバンクが敗れたため、もう1つ減って6になったのです。

 さらに19日は阪神が中日に勝ち、ソフトバンクは広島に連敗を喫して、阪神のマジックナンバーは4まで減りました。残り6試合で4なら今の阪神にとって、それほど大変なことではない気がします。ガチガチになって延びる可能性はあるかもしれませんけど。

 それにしても、18日と19日のソフトバンク-広島戦はすごい試合でしたね。取って取られて、逆転につぐ逆転という、まさに激闘!こんなスコアです。

【18日】

  広 114 000 103 =10 (14安打)

  ソ 201 114 000 = 9  (12安打)

【19日】

  広 120 110 200 = 7 (12安打)

  ソ 001 003 010 = 5 (10安打)

 18日のソフトバンクは8勝を挙げていた大竹耕太郎投手が先発で、この日勝てば阪神の村上頌樹投手と並んでリーグトップタイになるところ、なんと3回途中に6失点(自責2)で交代。これもまた予想外でした。

 一方、19日に村上投手が6回1安打無失点の好投で10勝目!しかも6イニングを投げて84回2/3となりました。これは、ちょうどチームの最終規定投球回数と同じ。もう最後まで投手成績のランキングから消えることはありません。

 では試合を振り返り、そのあと個人タイトルの話を書かせていただきます。

中日との今季最終戦

 台風や前線の影響で17日と18日は流れてしまった中日との3連戦。今季のここまでの中止はオリックス6試合、ソフトバンク5試合、広島4試合しかないのに、中日は12試合も流しているんですね、確かに最後が21回戦というのは少ないでしょう。

 最終戦は、ルーキー・村上投手の好投に応えるごとく、同期の佐藤輝明選手が4安打3打点と大当たり!板山祐太郎選手も2ランを含む3安打4打点でした。

《ウエスタン公式戦》9月19日

 中日-阪神 最終21回戦 (ナゴヤ)

  阪神 201 030 002 = 8

  中日 000 000 200 = 2

◆バッテリー

 【神】○村上(10勝1敗)-加治屋-岩田将-アルカンタラ-伊藤和 / 榮枝

 【中】●高橋宏(5敗)-垣越-橋本-梅津-ロサリオ-鈴木-近藤-丸山 / 郡司-石橋(6回~)

◆本塁打 中:山下6号2ラン(加治屋) 神:板山5号2ラン(丸山)

◆二塁打 神:山本、佐藤輝2、遠藤 中:藤井

◆盗塁  神:遠藤(2) 中:根尾(2)

◆打撃    (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

 1]中:江越   (5-2-0 / 2-0 / 0 / 0) .250

 2]遊ニ:山本  (3-1-0 / 0-2 / 0 / 1) .300

 3]三一:板山  (4-3-4 / 0-1 / 0 / 0) .268

 4]右三:佐藤輝 (5-4-3 / 1-0 / 0 / 0) .280

 5]左:高山   (5-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .208

 6]捕:榮枝   (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .255 

 7]一:片山   (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .204

 〃走右:奥山  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .294

 8]指:長坂   (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .211

 9]ニ遊:遠藤  (4-2-0 / 1-0 / 1 / 0) .219

◆投手    (安-振-球/失-自/防御率) 最速

 村上   6回 61球 (1-4-0/0-0/2.23)145

 加治屋 0.2回 21球 (2-0-1/2-2/5.81)147

 岩田将 0.1回 7球 (0-0-1/0-0/3.18)130

 アルカ  1回 19球 (0-1-0/0-0/0.00)151

 伊藤和  1回 10球 (0-1-0/0-0/2.63)141

       ※“球”は四球と死球の合計

《試合経過》※敬称略

 先に阪神の攻撃から。1回は江越と板山の右前打などで1死一、三塁として、まず暴投で1点。板山を二塁に置いて、佐藤輝は中前タイムリー!この回2点を先取しました。3回は山本の左越え二塁打などで2死二塁となり、またしても佐藤輝が今度は中越えのタイムリー二塁打を放ちます。

 5回は遠藤が右中間への二塁打(ライトの藤井がはじき、センターの岡林が処理)、江越は右前打、山本の四球で無死満塁のチャンス。板山が右前打で2人を還し、自身も三塁へ進むと、続く佐藤輝の右前打で生還!佐藤輝の3打席連続タイムリーもあり、この回3点を加え6対0とリードを広げました。

 とどめは9回。遠藤が右前打し、2死後に二盗成功。ここで板山がライトへ第5号2ラン!佐藤輝がこの日4安打目の右中間二塁打を放つも、後続を断たれて攻撃終了。それでも、先制、中押しに続いてダメ押しの2点を追加した打線。計8点を取っています。

 変わって投手陣。先発の村上は1回、2回と三者凡退で立ち上がり、3回は2死から9番の根尾に左前打と盗塁を許したものの、溝脇を一ゴロに切って取り、自身がベースカバーに入って無失点。4回、5回、6回はすべて三者凡退の見事なピッチング!

 7回に登板した加治屋は1死から藤井の二塁打を許し、2死後に5番・山下にライトへの2ランを浴びます。さらに四球を与えたところで降板。代わった岩田将も四球を与えましたが、次を打ち取って追加点はなし。

 8回はアルカンタラがショート山本の捕球エラーで溝脇を出したものの、他はしっかり抑えて無失点。9回は伊藤和が4番からをビシッと三者凡退!村上の1安打、加治屋の2安打のみ、計3安打2失点で試合終了です。

 前カードのソフトバンクに続き、これで中日とも今季日程がすべて終わり、対戦成績は12勝7敗2分けでした。

チーム12年ぶりの首位打者に

 さて前回の記事で、小野寺暖選手がウエスタン・リーグの首位打者を獲るための規定打席数について書いたのですが、18日の中止で試合数が減ったため、このあとファームの試合に出られなくても最終的な規定打席をクリアすることが確定。問題は解決しています。でも小野寺選手は、きょう20日に登録抹消となってしまって…これは残念ですね。

 問題は解決したんですけど、少し脱線します。規定未到達で首位打者や最高出塁率者となった例は過去に何度もありました。野球規則9.22(a)により、足りない打席分を打数として加えて、すべて凡退で計算しても打率や出塁率が上回った場合は、特例によりタイトル確定となるためです。

 最近ではイースタンで2018年の巨人・石川慎吾選手(打率、出塁率)、2017年の楽天・枡田慎太郎選手(出塁率)がそうでした。ウエスタンはこれまで8度あり、近いところでは2008年の中日・新井良太選手と2006年の阪神・狩野恵輔選手です。狩野選手のことは記憶されている方も多いのでは?

 2006年のシーズン終盤、規定打席に到達していた阪神の赤松真人選手が打率(.300)と出塁率(.366)で2冠確定だと思っていたら、どんでん返しがありました。狩野選手がかなり打っていたとはいえ、規定に17打席も足りなかったので除外していたし阪神ではなかなかないことだったので、現場で誰も気づかなかったくらいです。

 でも先ほど書いたように、足りない17打席を打数に足した上で凡退と計算しても.348という高い打率で赤松選手を超える狩野選手が首位打者に、赤松選手は最高出塁率打者のみになりました。我々も、すごく勉強になったシーズンです。

 狩野選手と赤松選手、うまく2冠を分けられてよかったですよね。この2人は入団年こそ違いますが、同い年でとても仲よし。首位打者が獲れないとわかった際も、赤松選手は言いました。「恵輔なら仕方ない。恵輔ならいいです。よかった」と。あの時の笑顔が忘れられません。

広島の現役時代の赤松真人選手です。2015年5月、淡路でのウエスタン・阪神-広島戦にて。
広島の現役時代の赤松真人選手です。2015年5月、淡路でのウエスタン・阪神-広島戦にて。

最多盗塁も14年ぶり

 脱線から戻りますね。結局、規定はクリアした小野寺選手ですが、足りないのは3打席だけでしたから未到達でも問題なかったでしょう。現在は打率.319、出塁率.396という数字。追いかけてくるソフトバンクの柳町達選手と、広島の正隨優弥選手が気がかりです。

 阪神の場合、ホームランと打点の二冠は喜田剛選手や森田一成選手、陽川尚将選手らがいるものの、首位打者を見ると2009年のバルディリス選手が最後なんですよね。また最高出塁率も過去に誠選手や北川博敏選手、浜中治選手らが獲っていますが、2006年の赤松選手以降は誰もいません。

 打席数の関係ないところで、本塁打はソフトバンクのリチャード選手の12がトップ。1本差で広島隨の正隨選手、さらに1本差でソフトバンクのバレンティン選手が続いています。リチャード選手も正隨選手も1軍ですが、これはどうなるかわかりませんね。最後に出てくる可能性も考えられます。

 打点は阪神の井上広大選手が50でトップ。2位はリチャード選手の49、3位が小野寺選手の44。ケガで欠場中ながら、ここまで抜かれなかった井上選手ですけど、これもまだ微妙でしょう。小野寺選手が抜く可能性もまだ残っていますね。

 盗塁は阪神・島田海吏選手の21がトップのままで変わりなく、2位の広島・羽月隆太郎選手が4差と少し縮めてきました。

 最多盗塁は、2017年に植田海選手がリードしながら最後でソフトバンク・釜元豪選手に抜かれて1差で獲れず、2018年も島田選手で確定かと思われた終盤にソフトバンク・周東右京選手が走りまくって1つ上回りました。惜しかったですねえ!2015年から6年連続でソフトバンクの選手が独占している最多盗塁、島田選手が獲れば2007年の赤松選手以来となります。

投手三冠なら58年ぶり2人目!

 そして投手陣は、19日の中日戦で10勝目を挙げた村上投手が、ソフトバンクの大竹投手と2勝差。また、阪神が残り6試合をすべて消化した場合の規定投球回数もクリアしたので、勝率.909リーグトップで最後まで名前が残ります。6回無失点で防御率もさらに上げて2.23。これもトップです。

 初先発だった5月4日の中日戦で1敗したあと、勝ち負けのつかない先発試合があったものの9連勝の村上投手。特に8月以降は投げた5試合すべてで白星がつき、無失点が2試合ありました。

 阪神では2019年の秋山拓巳投手に並ぶ10勝で、リーグ最多勝利が確定すれば、その秋山に次いでの受賞となります。また阪神の新人投手では、2009年にリーグ最多勝利のタイトルを獲った蕭一傑投手の7勝が最多だったので、それを更新したわけですね。

 規定投球回をクリアしたことで、最多勝利だけでなく、最優秀防御率、勝率第1位の三冠も十分に狙えます。ほぼ確定と書きたいのですが、何があるかわからないので「狙える」と言ってみました。

 ウエスタン・リーグでの投手三冠は、最近でも大竹投手をはじめソフトバンクの投手が獲得していますが、阪神ではいつ以来?誰以来?と資料を調べたら、なかなか名前が出てきません。二冠はあります。2018年の福永春吾投手や2013年の白仁田寛和投手(防御率と勝率)、2008年の鶴直人投手(勝利と勝率)など。

 でも三冠は、ものすごく遡って1人だけありました。1963年、東京オリンピックの前年のこと。阪神の中井悦雄投手が20試合(114回1/3)を投げて13勝1敗、防御率1.17、勝率.929で三冠を手にしています。その前にも後にもないので、たった1人、たった1度。ここへ58年ぶりに村上投手の名前が記録されるのでしょうか。

負けたけど優勝が決まった3年前の9月22日、この日の広島戦で俊介選手(左)は2安打を放ちました。
負けたけど優勝が決まった3年前の9月22日、この日の広島戦で俊介選手(左)は2安打を放ちました。

3年前と同じ日、同じ場所で…

 現在はマジック4で、21日に阪神が勝ってソフトバンクが負ければマジック2、翌22日も同じ結果なら0。よって最短の優勝決定は22日ということで、もし決まれば2018年にリーグ優勝した日と同じ、しかも同じ相手、同じ場所ですね。

 3年前の9月22日、マジック1で乗り込んだのが由宇球場でした。この日は広島に勝つか引き分け、もしくは中止でも決まる条件だったのに4対0と完封負けを喫した阪神…。でもカープの皆さんのご厚意で、そのままソフトバンクの結果を待ったわけです。

ソフトバンクが負け、グラウンドをお借りして行われた胴上げには、カープの監督やコーチ、選手たちもベンチ前で並んでくださって感激しました。あの時と同じ由宇での広島戦、またソフトバンクも同じくタマスタでのオリックス戦なんですよね。

 ただし3年前は13時開始だったタマスタ、今回は22日が17時開始なので球場での胴上げは無理でしょう。なんなら24日からの甲子園で優勝ってのもいいな、なんて思っちゃいましたが、それはやっぱりダメです。余計な段取りなんか考えず早く決めましょう!甲子園でペナントを披露するために。

 それにしても、このあとソフトバンクと3連戦、続いて阪神と3連戦というオリックスが鍵を握っているかもしれませんねえ。

 きょう21日の広島戦で先発予定の西純矢投手は、ここまで77回1/3を投げており、あと7回1/3で最終規定投球回をクリアします。中止があればさらに少なくなりますが、とりあえず5回は投げて防御率も上げておきたいですね。

  《掲載写真は筆者撮影》

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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