今季初のサヨナラゲーム!9回に打って走って逆転勝ち《阪神ファーム》
今週前半は鳴尾浜でウエスタン・オリックス戦が行われました。初戦の9日は、才木投手がロメロ選手に2ラン、杉本選手に3ランを浴びて5失点。5回を投げ三振は9つ奪っていますが、四球も5つあり計101球とかなり多めですね。ついで谷川投手も1点を失い、石井投手と歳内投手は1イニングずつを無失点。
ただし打線が、エップラー投手に対して7回まで3安打、そのあと海田投手と金田投手にも1安打ずつで計5安打のみ。3月23日のソフトバンク戦(タマスタ)で三森選手にサヨナラ2ランを浴びて以来、今季2度目の完封負けを喫しています。鳴尾浜で公式戦負けなしだった今季、これが初黒星となったわけです。
でも10日の雨天中止を挟んで、11日は劇的なサヨナラ勝ち!高橋遥投手がオリックスのドラフト7位ルーキー・中川選手に1号2ランを浴びて、リードされたまま迎えた9回に高山選手のタイムリーと相手エラーで追いつき、最後は金田投手から板山選手が決勝打を放っています。今季初のサヨナラ勝ちにスタンドは総立ちとなり、グラウンドでは平田監督やコーチ陣が選手と一緒に大喜び!もちろん、負けが消えた高橋遥投手も嬉しそうに見えました。
ちなみに阪神ファームのサヨナラ勝ちは、昨年6月15日の中日戦(甲子園)で9回裏に西田選手の逆転サヨナラ2ランが出て以来のことです。
なお阪神は12日から由宇と豊平での広島戦で、きょうは3対1で負けたようですね。阪神は1回に島田選手、荒木選手、片山選手の3連打で1点を先取したものの、2回に馬場投手が船越選手に1号2ランを浴びて逆転されました。また岩田投手が6回に坂倉選手のタイムリー二塁打を許し、ついに今季初失点。最後の福永投手は8回1イニングを0点に抑えています。
《ウエスタン公式戦》4月11日
阪神-オリックス 5回戦 (鳴尾浜)
オリ 000 002 000 = 2
阪神 000 000 003x= 3
◆バッテリー
【阪神】高橋遥‐○望月(2勝1敗) / 片山
【オリ】K-鈴木(7回2/3)-荒西(1/3回)-●富山(1勝1敗)(2/3回)-金田(0/3回) / フェリペ
◆本塁打 オ:中川1号2ラン(高橋遥)
◆二塁打 オ:中川、フェリペ
◆盗塁 オ:根本(5)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]中:江越 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .278
2]遊:木浪 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .125
3]一:荒木 (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .278
〃打:俊介 (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .333
4]捕:片山 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .353
5]左:高山 (3-2-1 / 0-1 / 0 / 0) .450
〃走:熊谷 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .205
6]三:陽川 (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .200
〃走:小幡 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .107
7]指:板山 (4-2-1 / 0-0 / 0 / 0) .217
8]右:島田 (3-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .220
9]二:植田 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .125
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ※
高橋 6回101球(6-7-1 / 2-2 / 1.29) 148
望月 3回 47球 (2-4-0 / 0-0 / 2.25) 153
※チームのスピードガンによる数値
《試合経過》※敬称略
まず守備からまいりましょう。先発の高橋遥は1回、三者凡退の立ち上がり。2回は先頭の4番・中川に右翼線二塁打を浴びますが、後続を2三振などで断って三塁へ進めることなく終了。3回は連続三振を奪いながら四球と連打で2死満塁とするも、中川を二飛に打ち取ってピンチをしのぐと、4回と5回は三者凡退!しかし6回、1死から根本に内野安打を許し、続く中川には初球の真っすぐ(144キロ)をセンターへ。バックスクリーン中ほどに当たる2ランで先制されました。
ついで登板した望月は、7回が三者凡退。8回は根本の右前打と盗塁で1死二塁としただけ。9回は2死から8番・フェリペに左翼線二塁打を浴びるも、途中出場の鈴木昂をカーブで空振り三振に切って取り、3イニングを無失点で投げ終えます。
一方の阪神打線は、K-鈴木の前に1回から4回までパーフェクトピッチングを許し、5回1死から高山がチーム初ヒットの右前打を放ったのですが、陽川の遊ゴロ併殺打であっさりチェンジ。6回は先頭の板山がショート内野安打、島田は左前打で無死一、二塁とするも送りバント失敗などで後続を断たれて2者残塁。7回は2死から高山が選んだ四球のみでした。8回も島田が右前打しますが二盗失敗など、3人で攻撃を終えて4安打無得点。
そして迎えた9回裏、先頭の江越がショート内野安打で出て、オリックスは3人目の富山が登板。代打・俊介の四球などで2死一、二塁として高山が中前タイムリー!江越が二塁から還り、センターが打球を逸らすのを見て俊介も生還!土壇場で2点を取り追いつきました。送球の間に高山は二塁まで進み(打点1)、代走が熊谷。オリックスは投手交代です。
代わった金田は陽川に四球を与え、小幡が代走。2死一、二塁となって、続く板山はカウント1-1からの3球目を右前タイムリー!熊谷が二塁から一気に生還し、サヨナラ勝ちで試合終了。
「最近はツーシームに助けられている」
試合後のコメントです。高橋遥投手は、この日の投球全体を振り返って「この間の広島戦(3月31日・鳴尾浜)に比べたら、きょうはコントロールなどがアバウトで苦しかったんですけど、でもしっかり投げきるところは投げきれて、何とか5回までゼロで抑えられた。ただ甘く入ったボールを打たれちゃったので…抜けたのはしょうがないと言ったらあれなんですけど、その抜けたヤツを完璧に打たれた。やっぱりもっと体力も、ボールの強さもつけなきゃと思いました」と反省も口にしています。
テンポがよかった点はあまり意識していないそうで「スリーボールが多かったんですけど、しっかり粘れていたと思う。フォアボールを1つ出しちゃって、そこから結局ピンチになった。フォアボールは、ほんと要らないなと思います」と。確かに、要らないですね。
平田監督もツーシームの“落ち”がいいと話していた変化球に関しては「ほんと最近すごくツーシームに助けられているんです。それで真っすぐも生きてきて。きょうよかったのはツーシームと、あとはインコースに真っすぐを結構な確率で投げきれたのこと。スライダーも悪くはないんですけど、この間もきょうもツーシームが頼りになった。スライダーに自信は持っているけど、それ以上にツーシームが最近はいいと思います」と高橋遥投手。
“東都”の後輩に打たれた悔しさ
今回は100球がクリアラインで、最終的に計101球を投げました。「久々に100球を超えて、ランナーを背負ったのが最近の中では一番多いと思うので、いつも以上に疲れたかなと。でも後半はしっかり投げ切れました。ホームランを打たれた1球は本当に悔しいです」
いつもの「楽しかった」というフレーズは出てこないのかなと思ったら「でもまあ楽しかったので。苦しみながらも楽しかった」と言っていて、何だかホッとしましたね。チームも勝ったから、なお嬉しいでしょう。
そろそろ1軍登板というところも視野に入ってくると思いますが、本人は「まだ全然。みんなすごいんで。ファームでみんな抑えているから、その競争に割って入らないと。まずファームのみんなのいい流れに乗って。みんなすごいなと思います。自分で結果を残さなきゃ。もっと状態を上げていけるように練習します」と、彼らしい早口で言葉をつなぎました。
最後に、ルーキーの中川選手に二塁打と2ランを打たれたことについて「東都の後輩の中川に打たれた。大学の時もよく打たれてたんです。1本目は甘いボール、2本目はバチッといかれた」と悔しいそうです。まさにその通り「悔しかった。悔しいです。次はないようにしたい」と締めくくっています。
望月投手の好投が呼んだサヨナラ
香田投手コーチは高橋遥投手に「イニングと100球(の課題)をクリアしてくれたのはよかった。内容もテンポもよくてね。ホームランは、いろんなタイミングを変えようとか、ランナーのこととか考えながら、スッと入ってしまったかな。4番バッターだったので、もう少し慎重にいけばよかった。でもいいボールがいっていたし、ツーシームでいい空振りを取れていた。順調にきていますよ」と及第点。
変わって望月投手は、これが1軍から戻って最初の登板でした。「変化球でカウントを取りたいところで取れたし、片山さんと組み立てながら投げられたと思います」。カーブも何球か投げていますね?「前からファームで投げていましたが、きょうはカーブでカウントを取れると思っていたので。片山さんも多分受けていて、カウントを取りやすいと思ったのかなと」
ランナー出してからも問題なく抑えていたところは「試合が2点差で負けていて、もう1点も取られてはいけないイニングとわかっていた。(ランナーが出た場面は)2つともヒットと盗塁、二塁打で一塁が空いていたし、点をやらないよう考えて投げました」と望月投手。奪った三振も150キロ前後の速球あり、110キロ台の変化球ありと、さすがのピッチングですね。次のチャンスが早く来るよう祈っています。
「冷静に判断した」板山選手
9回2死から中前タイムリーを放ち、そこへ相手エラーが重なって同点の走者をも迎え入れた高山選手。囲まれての取材では「ランナー還すことを意識していました」と話したあとは、いつもと同じ「全部集中してやっていますが、あの(1打席目の)セカンドゴロで終わっているので。あとの3打席は出塁しましたけど…」というコメント。
そう。5回の2打席目は右前打、7回の3打席目は四球を選んで、9回にはタイムリーを放っても、です。今回ファームにやってきてから「1軍で1打席しかチャンスがない、だから1打席目で打たなければ意味がない」と繰り返す高山選手でした。
続いて板山選手です。2死から2対2になって、なおも四球で2死一、二塁の場面。自分が決着をつけてやる!という気持ちで打席に?「決めてやろうという思いはありましたが、狙いを絞って甘い球をしっかり仕留める気持ちです。内野のポジションも見て冷静に、ヒットゾーンが広いとわかっていたので、狙い球を絞って打てばいいと」
1球目の変化球がボール(球場表示のスピードガンでは116キロ)、2球目は真っすぐ(同じく144キロ)でファウル、そして3球目も真っすぐ(同じく147キロ)、これをライト前へ!コースはどんな感じでしたか?「内甘くらい(インコース甘め)ですかね。1球前はファウルしたけど、切りかえて次のボールにいこうと。引きずらずに打てたのでよかったです」
この一打も1軍へ行くための積み重ねですね。「続けるしかないので。頑張ります」
☆おまけ☆サヨナラ勝ちの風景
ところでサヨナラ勝ちの瞬間に、決勝打の板山選手や同点打の高山選手はもちろんですが、次の打者だった島田選手と一塁走者だった小幡選手の“はしゃぎっぷり”もすごかったですね。
歓喜のハイタッチが終わって整列する際、平田監督が迷わず「板山!」と指名したヒーロースピーチ。板山選手の噛みしめるような話し方が印象に残っています。
「きょうは最後まで応援ありがとうございました」のあと少し間をおいて「いい当たりではありませんでしたが、皆さんの声援のおかげで勝つことができた」というようなことを言い、最後は「あすからしばらく遠征が続きますが、一生懸命がんばりますので、応援よろしくお願いします」と締めて終了。
そして整列して一礼する際、横田選手が隣にいた長坂選手の腕を高々と上げていたのは何だったんでしょう?長坂選手も何だかニヤニヤしていたんですけど。また二塁から走ってサヨナラのホームを踏んだ熊谷選手に「ナイスラン!」と言ったら「あれは誰でもセーフですよ」。笑顔でサラリとかわされました。
<掲載写真は筆者撮影>