秋山投手から若手バッテリーへ、互いを知ることのススメ《阪神・安芸キャンプ》

10年目、円熟の時を迎えた秋山投手は提案しています。チームのため、自分ために。

 第4クール最終日の17日、ブルペンは大賑わいでした。岩田稔投手、秋山拓巳投手、石崎剛投手、呂彦青投手、高橋遥人投手、川原陸投手、牧丈一郎投手、湯浅京己投手の8人がピッチング。また昨年8月に左肩のクリーニング術を受けた横山雄哉投手は今もアップのあと別メニューで、これまで室内でのネットスローとキャッチボールだったのですが、第4クールからは屋外でのキャッチボールを始めました。表情も明るくなったような気がしますね。

 またメイングラウンドの全体練習後の特打で、17日は最後に平田勝男監督が打撃投手を務め、打席の小宮山慎二選手にゲキを飛ばしたり、好打を絶賛したり。その声に乗せられて小宮山選手がサク越えの打球を放ち、スタンドのお客様も拍手と歓声!子どもたちは「もう1本、もう1本」とはしゃいでいました。そして平田監督が投げ終わると大きな拍手が起き、監督は手を振って応えながらベンチへ。

 引き揚げてきた小宮山選手に聞くと「いや~よかったです。監督が盛り上げてくれたからですよ」と笑顔。前もって決まっていたのかどうかは未確認ですが、小宮山選手は「きのう全然だったので(16日の西武との練習試合で小宮山選手はノーヒット)…気にかけてくれたんだと思います。悩んでいたのが恥ずかしい。嬉しいですよね。ありがたかった!」としみじみ。サク越えもありましたね?「はい。打ちやすい、いい球です」

ネット越しですみません。カナフレックスの藤井宏政コーチです。
ネット越しですみません。カナフレックスの藤井宏政コーチです。

 そうそう!17日は、もと阪神で現在はカナフレックスのコーチをしている藤井宏政さんが、監督やマネージャーとともに安芸キャンプを訪れました。ブルペンでは食い入るようにピッチャー陣を見ていましたね。藤井さんは秋山投手の1つ先輩で、一緒に遊びに行ったりもしていたことを思い出します。

秋山投手の声が響くブルペン

 さて、あす19日から始まる第5クールでは20日に再び西武との練習試合が予定されています。場所は高知市東部野球場。前日の雨がどれくらい、何時まで降るのか…という心配はありますけど、気温は高そうですね。先発は秋山投手で間違いないかな?という気がします。あ、雨の心配をしているからじゃないですよ。なんて言っている自分自身が雨女でした。すみません。

 きのう17日のブルペンで、秋山投手は80球を投げました。ファームのキャンプ中心に見ている私にとって、安芸のブルペンで投げる秋山投手は久しぶりだなあと思い調べてみたら、2013年(入団4年目)以来の安芸スタートなんですね。以降はずっと宜野座なので、6年ぶりです。

片山捕手に自身の球の軌道を伝えている秋山投手。
片山捕手に自身の球の軌道を伝えている秋山投手。

 この日は球種を1、2球ずつ変えながら投げたり、キャッチャーにカウントと球種を伝えたり。より実戦モードに入ったのかなと思ったのですが、実は別の意図もあったようです。ブルペンに入ると、いつも受けてもらっているアルバイトのキャッチャーに「片山が来たら代わって」と秋山投手。51球を投げたところで片山捕手が到着しました。

 マウンドから大きな声で自分の球の傾向や、どう投げたいかなどを伝えます。キャッチャーを呼んで言うのではなく。しかも「これが真ん中に入ると、いい印象がない」とか「こういう球を僕は避けたい」とか、すごく具体的でした。あまり見ない光景だったので練習後に聞いてみたところ、あえて大きな声で出したのはキャッチャーと、さらに周りで投げている若いピッチャーにも伝えたかったから、だそうです。

伝えることから始まる信頼関係

ピッチングを終えると、マウンド付近にしゃがんで話し込む秋山投手(右)と片山捕手(左)。
ピッチングを終えると、マウンド付近にしゃがんで話し込む秋山投手(右)と片山捕手(左)。

 「どうしたいかを伝えないとキャッチャーもわからない。僕も意思を持って投げなければボールに伝わらないし。キャッチャーが出すサインに、僕も納得して投げたい。そういうのをしっかり理解した上でサインを出してもらわないと、僕自身の球に影響することになるから」

 なるほど、そういう狙いがあったわけですか。

今度は立って、バッターボックス方向を見ながら説明。
今度は立って、バッターボックス方向を見ながら説明。

 「あとは(片山に)僕のスタイルを伝えました。構え方です。ピッチャーにもよりますけど、僕にとっては苦手な構え方だったので…。僕はミットめがけて、体めがけて投げるので、防具をしっかり見せてほしいと言いました。ちょっと斜めに入っているので、しっかり見せてほしいと」

 ボールの軌道も説明していたでしょう?身ぶり手ぶりで。「それも伝えないと、あいつも何(のサイン)を出していいかわからないと思うから」。かなり具体的でしたね。

 「逆に、それをやらないピッチャーが多すぎます。ただのブルペンになってしまっている。自分の意図を伝える人の方が少ない。そう言ってやるのは、その子の身にならない。って、10年経って思います」。これはつまり、若いピッチャーに直接そうアドバイスしても本人のためにはならないから、僕がこうやってキャッチャーに言葉とピッチングで伝えている、この背中を見ろ!という意味だと理解しました。

 「僕自身のためでもあるけど、他の人にもうまくなってほしいという気持ちがあるので。そういうことをちゃんとやれば、内容の濃いピッチングになると思います」

 1軍とは違い、ファームでは若いピッチャーやルーキーのキャッチャーもいて「ピッチャーはいい球を投げようとしか考えないし、キャッチャーは捕るだけになっている。ピッチャーのいいところを引き出すのはキャッチャーにもできると思うので、そういうとこでもピッチャーはよくなるよ、って話はしました。それが正解かどうかはわかりませんけど、やっぱり話は聞かなあかんと僕は言っています」

先輩の“財産”、有効活用してほしい

引き揚げる時、平田監督(右)から呼び止められて何か話をしていました。
引き揚げる時、平田監督(右)から呼び止められて何か話をしていました。

 そういえば昨年の1月、自主トレ中に取材を受けた秋山投手が「今までしてこなかったけど、ことしは後輩にアドバイスをする」と話していたことを思い出しました。何年もかけて積み上げてきた、いわば自分の財産だから、それをライバルになっていくかもしれない後輩へ“分けてあげる”わけですよ。教えてあげろとも、教えてくださいとも簡単には言えません。

 それでも「2年間、上で投げさせてもらって、実際にそういう練習をしないと(いいパフォーマンスは)出せないと思いました」と秋山先輩は言います。みんなにうまくなってほしい。それはつまり自分自身の確認にもなって役立つからと。

 10年目を迎えた秋山投手が手にいれたいのは、間違いなく優勝でしょう!そして、そのために必要な右腕です。右膝の手術明けということで安芸キャンプに来ていますが、すぐ1軍へ戻るはず。今がチャンスです。その背中を見て、声を聞いて、たくさん学んでください。

12日に行われたシート打撃で投げる秋山投手。
12日に行われたシート打撃で投げる秋山投手。

 なお、自身のピッチングについては「コンディショニングですね。体の状態がよくなれば勝負できるかなと思うので、いかに足をよくするか。きょうのブルペンはよかったです。足もよかったので、そういうのを維持できるか」と話していました。20日のピッチングがきっとまた後輩に何かを伝える、そう思います。

 今、チームに秋山投手の同級生は多くいるけど、高校から一緒に入団して、ともに10年目を迎えたのは原口文仁選手と2人だけです。「もうリハビリしているんでしょう?」と気にかけている様子でした。自分たちが激励できることを、いろいろ考えているみたいですよ。病に勝った同期が元気に戻ってきて、また秋山投手と甲子園でバッテリーを組むところ、楽しみに待ちましょう。

    <掲載写真は筆者撮影>