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この秋、福永投手が取り組むカーブで“白黒はっきり”《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
16日に、今フェニックス2度目の先発をした福永投手(写真は13日の練習中)。

 きょう18日のお昼すぎに阪神甲子園球場の球団事務所前を通りながら、ちょうど1週間前の11日も同じような時間にスポーツ紙の記者が慌ただしく行き交っていたなあと思い出しました。その直後に金本監督の辞任が発表され、翌12日に行った宮崎でも余波が…。フェニックス・リーグ休日のチーム宿舎で記者陣が朝から晩まで、矢野ファーム監督を待っていたんですよね。

 そのあと13日に宮崎入りした揚塩球団社長と会談を持った矢野監督が、14日早朝の飛行機で帰阪。そして15日のフェニックス・リーグ試合中に“監督受諾”のニュースが入りました。きょう18日の正午には矢野監督就任会見が行われたわけで、まあ激動の1週間と言っていいでしょう。せめてもう1年ファームで監督をしてほしかったという勝手な思いはありますが、決まったからには期待を込めて応援します!超積極的な1軍を。

 さて、フェニックス・リーグです。大変遅くなりましたが、きょうは第2クール最終の16日に行われたDeNA戦の結果をご紹介します。結果は4対0でDeNAの勝ち。両チームで計22三振という、スコアブックが青い試合(ヒットが多ければ赤い)でした。特に阪神は全選手が計13三振を喫し、そのうち7つが見逃しです。まあストライクゾーン云々と言えなくもないですが、それは両方とも条件は同じ。一方、7回を投げた阪神の先発・福永投手も、本人が「珍しい!いつもは6回で2つくらいなのに」という9三振を奪っています。

《フェニックス・リーグ》 10月16日

阪神- DeNA (アイビー)

 De 000 020 200 = 4

 阪神 000 000 000 = 0

 

◆バッテリー

【阪神】福永-谷川 / 坂本

【DeNA】平良(6回)-進藤(1回)-中後(1回)-田村(1回) / 嶺井‐山本(7回~)

◆本塁打 De:佐野(福永)

◆二塁打 De:飛雄馬2、宮本

◆盗塁 神:江越、板山

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]遊:熊谷  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

2]二:荒木  (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

3]右:江越  (3-0-0 / 2-1 / 1 / 0)

4]中:板山  (3-0-0 / 2-1 / 1 / 0)

5]三:森越  (4-2-0 / 2-0 / 0 / 0)

6]捕:坂本  (3-1-0 / 1-1 / 0 / 0)

7]指:小豆畑 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0)

8]左:長坂  (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

9]一:藤谷  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

 

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

福永 7回 88球 (8-9-2 / 4-4) 144

谷川 2回 23球 (0-0-0 / 0-0) 145

《試合経過》  ※敬称略

試合開始前のメンバー表交換を行う阪神・高橋監督代行(右)と、DeNA・万永監督(左)。
試合開始前のメンバー表交換を行う阪神・高橋監督代行(右)と、DeNA・万永監督(左)。

 このフェニックスで2度目の先発となった福永。1回1死からヒットを許しますが併殺で無失点。2回は5番・飛雄馬の二塁打や死球などで2死一、三塁となるも、嶺井を空振り三振に!3回と4回は三者凡退でした。ところが5回、先頭に死球を与えると、続く8番・佐野にライトへの2ランを浴び先制を許します。次の嶺井に中前打されたものの、坂本の盗塁阻止などで追加点はなし。6回はわずか7球で、再び三者凡退です。

先発の福永投手。7回で9奪三振は、なかなか珍しい?
先発の福永投手。7回で9奪三振は、なかなか珍しい?

 しかし、7回はいきなり飛雄馬の右越え二塁打と山下の中前打で一、三塁とし、1死後に嶺井の左前タイムリー。続く宮本にも右越えのタイムリー二塁打を浴びて計2点を追加されましたが、なおも1死二、三塁のピンチはしのいでいます。ついで谷川が登板。3番から始まった8回、続く9回と2イニングを完璧に抑えました。

 一方の打線はDeNA投手陣の前に三振の山…。しかも先発・平良には6回までに10三振を奪われ、そのうち7つが見逃し三振です。そして8回に藤谷が中後から空振り三振をした時点で全員三振を記録。さらに9回も1三振で、3回を除く毎回三振を喫しています。

リリーフの谷川投手は2回をパーフェクト!
リリーフの谷川投手は2回をパーフェクト!

 1回は三者凡退。2回は1死から森越が内野安打とショートの送球エラー、坂本の四球があったものの無得点。2回は内野ゴロ3つで三者凡退。4回は江越が四球を選んで二盗成功、1死後に森越の左前打で一、三塁とするも得点できず。5回は長坂が右前打、藤谷もいい当たりの中前打、と思ったらセンターからの送球で長坂が二塁でアウトに…。当たりがよすぎましたね。

 6回は三者凡退。7回も進藤に対して熊谷が左前打しますが得点なし。9回は田村から板山が四球を選び、森越の三振で二盗成功。坂本が左前打して1死一、三塁とチャンスを迎えたものの、最後は小豆畑が投ゴロ併殺打で2者残塁。散発5安打と、DeNA4投手全員から喫した13三振で完封負けでした。

「とにかく球が強い、すごい球を投げる」

 監督代行の高橋投手コーチは、福永投手について「カーブを課題として、いいカーブもありました。三振を取りにいっていたのでね。三振が多かったでしょう?あとは試合勘を戻せば失点も減らしていける。その過程と考えたら、決して悪くはないピッチングをしたかなと。数字上は7回4失点だから微妙ですけど、内容的には取り戻してきたかなという気はするんですよね」と振り返りました。

 「カーブとか、チェンジアップとか引っかけ気味になったりするところの技術を磨いていけば。球が強いんでね、とにかく。すごい球を投げるんでね。戻ってくれば大丈夫」。また、とらえられた打球が続くことに関して「そこはちょっとマウンド上で、ピンチと思ってしまうというか、展開を敏感に感じとるところがある。感性だといい言い方になってしまうけど、肌で感じるタイプだと思うので、ある意味“鈍感”になってくれることもありかなという気はします」とのこと。

本文と無関係ですが…16日のスタメン。やはり捕手は総動員でした。
本文と無関係ですが…16日のスタメン。やはり捕手は総動員でした。

 現役時代、高橋コーチにもそういう場面が?「僕も敏感だったね。僕自身が福永と通ずるものをすごく感じる。マウンドでの足の上げ方とか、一喜一憂しすぎてしまうところとか。それは出していいようで、ピッチャーとして隠さなきゃいけない部分があるのでね。そういうところでピンチがピンチに見えてしまうピッチャーだから。僕自身も経験しているけど、そういうとこで堂々とできる時は勝てる。そういうのを感じてほしい」

時には“はったり”も必要

 そうでないピッチャーもいる?「もちろん。浜地とか若い子、才木もそうですけど。やっぱり負けん気が強くて常に攻めていける、負けず嫌い、そういうのが表に出るピッチャーはいっぱいいます。福永ってのは周りが見えていない、でもピンチは見えてしまう。自分も現役時代にすごく感じたのと近いものを持っていますね。そこは経験して克服してほしいなというのはある」

 続けて「はったりもありだと思います。姿として野手に背を向けている限りは、背中でしっかり受け止められるっていうのかな?堂々とした態度に見えることが福永にとって大事かなと思います」と高橋コーチ。

 6回で交代する可能性もあったと思いますが「福原コーチとも話して、やっぱり7回を投げさせる価値のあるピッチングをしていたのは間違いないので。谷川のタイミングも考えていましたけど、7回までいかせたってのは僕と福原コーチの、福永に対しての価値観。6回で終わらせなかった、もう1イニングいけるという価値観」と話しています。そして「最後に課題がまた出たということ」で、ある意味では収穫でしょう。

力ずくではない状態で強い球を

 次に、8回と9回を完璧に抑えた谷川投手を、高橋コーチは「よかったと思います。前はちょっと力ずくで投げているところがあったので。もう少し躍動感からリラックスした中での、きょうの強い球というイメージだったら、もっといいなと思いました。きょうは全力で投げて全力の球がいっている感じ。これが躍動感からすごい球っていうイメージがついてくると僕の中では、またいい時の谷川に戻ったなと思えるんですけどね」と評しました。

谷川投手のフィニッシュ。躍動感からの強い球が理想なんですね。
谷川投手のフィニッシュ。躍動感からの強い球が理想なんですね。

 それはつまり、フォームと実際のボールとのギャップがないということですか?「どっちも強すぎるんですね。力ずくの力も強すぎるし、球もきょうは結構強かったので。強い球がいくことは悪くないんだけど、躍動感のあるところからいけたら、もっと素晴らしいピッチャーだと。あとシュートなど、うしろから見ていないのでわからないけど、精度がどうだったかを今後の会話で聞いてみます」

◎のチェンジアップ、○×はっきりのカーブ

 選手のコメントは、ほとんどが福永投手です。まず三振が多かった点は「ゲーム前に、カウント球はチェンジアップを投げたり、勝負球はカーブを投げたりというふうにしていたんです。投げていく中で、真っすぐが最近では一番走っていて、加えてチェンジアップがすごく抜けたというのもあって、中盤くらいからチェンジアップを勝負球にも持ってきました」とのことで、チェンジアップが有効だったようです。

 2回から3回にかけての空振り三振で、125キロや126キロというのが?「チェンジアップです。ちょっとイメージを変えて。シーズン途中に投げていたんですけど、130キロ中盤まで出ていたのが使い物にならないと言われたんで投げていなくて(苦笑)。フェニックスに来てから、カウント球でもう一度イメージを変えて投げてみようと思って投げ始めました。なので、きょう自分の中ではチェンジアップが意外な収穫です」

 ホームランは?「カーブです。フェニックスでは、カーブでカウント取る、カーブで勝負する、カーブで打ち取るってのを一番に置いてやっているので、その課題のボールで打たれたのは、かなり“反省できる”のではないかなと思う。他のボールで打たれたわけじゃなく、課題としているカーブで結果が出ているので。逆に、それ以上に空振りを取ったり、ファウル取ったり、凡打させているのも多いから、きょうはカーブが結果として白黒はっきり出たかなと思いますね」

最初の打席でインコースへ

キャッチャー総動員のため、イニング間のピッチング練習で球を受けるブルペン捕手の本田さん。
キャッチャー総動員のため、イニング間のピッチング練習で球を受けるブルペン捕手の本田さん。

 全体的にはよかった?「自分の中ではそうですね。あとは打たれたところの技術を上げていくこと。1-1からストライクを取りにいってしまったカーブで打たれている。そこがもっと、ゴロを打たせるカーブに変わってくれば。それ以前に真っすぐも、もっとインコースに突っ込めたり…できればなぁ」。だんだん声が小さくなっていますよ(笑)。

 連打を食らった7回を自己分析すると?「全体的に甘くなった。ただやっぱりカーブを打たれた。課題のカーブが結果的に甘く入って打たれた、というのもあります。きょうは前半から変化球をかなり多く使っていたので、たぶん向こうのバッターも途中から、バッティングカウントになった時ぐらいに絞りやすくなってくるんじゃないかなあと思ったので、やっぱり前半にしっかり内へいっておかないと」。この点は4番の細川選手で、わかりやすく説明してくれました。

 「細川とかは1打席目にかなり内へいったので(143キロの真っすぐで空振り三振)、そのあと外のボール球のスライダーで三振したり(3打席目)、外の真っすぐで差し込まれてライトフライ(2打席目)とか。それが1つの、いい打ち取り方ですよね。3打席。4打席と戦っていく中で、しっかり最初に内へいけたので。各バッター、そういうふうにインコ―スへいける時にインコースを使って体を動かしたら、あとの打席が変わってくるかもしれない。きょうはそれができなかったのと、課題のボールであるカーブで打たれた、というところですね」

課題はカーブと、その精度

 カーブはもともと投げていたと思いますが、課題としているのはどんなこと?「ゲームの中でアクセントになるボール。今までは、バッターが張っていない初球の入りだったり、ボール先行でパッと投げたり、というふうにしか使っていなかった。なので幅を広げるために最後の勝負球に持ってきたり、自分的にそう有利じゃない場面でカーブを投げたりしました」。つまり課題は精度?「カーブの精度ですね」。ということは技術?「悪いボールはきょうは顕著に打たれた、でもいいボールもあるので。カウントでの精度を上げていきたい」

自分を客観的に見られるという福永投手ですが、先を読みすぎてもよくないのかもしれませんね。
自分を客観的に見られるという福永投手ですが、先を読みすぎてもよくないのかもしれませんね。

 それは監督やコーチのアドバイスで?「いえ、自分で。自分の中で、真っすぐとスライダーの次に確実にカウントを取れるボール、勝負できるボールというのがカーブだった。逆に、今まで自分が楽な時に投げていたカーブみたいな感じで、きょうはチェンジアップを使うつもりだったんですけど」。思った以上に効果があったわけですね。

 

 ちなみに、高橋コーチが「試合の展開を読んでしまうところは自分と通ずる」と。「よく言われます。去年のフェニックスの終わり頃かな?自分と似ているところがあると初めて言われて。それまではメッチャ厳しくて、抑えてもメッチャ厳しくて。でも去年のフェニックスで“似ているところがあるから”と言われて1年間、いろんな経験談などを聞かせてもらいました」

 最後に「フェニックスとはいえ、もう3か月もしたらキャンプが始まるので、あんまりゆっくりしている時間はない」という福永投手。素ですね。実りの秋と言ってのんびりやっている場合じゃないかもしれません。「フェニックスで投げるのは、あと1試合くらいですかね。課題のまとめをして、(秋季)キャンプに行ったらしっかりアピールして、1軍キャンプに」

レフト長坂、ファースト藤谷

 キャッチャー陣がフル回転の、ことしのフェニックス・リーグ。岡崎選手と小宮山選手が帰ったものの、野手も増えたし…と思ったら緒方選手の負傷(右膝の捻挫で帰阪)があり、高山選手もこの日はまだ欠場(右足の張り)、さらに16日は植田選手が発熱による体調不良で大事を取って休養。というわけで、この日は長坂選手がレフトを守って、藤谷選手はファーストでした。

 守備機会はなかったものの、初めて見る長坂選手のレフト。試合後に聞いてみたところ「人生初、ではないですね」と言います。キャッチャー以外は「ウインターリーグとか紅白戦とかでファーストをやった」そうです。外野はいつ以来?「高校以来ですかねえ。景色は特に変わりませんよ」。いや、全然違うと思いますけど。

写真は別の日ですが、こんなふうに2人でいることの多い同級生。藤谷選手(右)と熊谷選手(左)。
写真は別の日ですが、こんなふうに2人でいることの多い同級生。藤谷選手(右)と熊谷選手(左)。

 この日はご両親も観戦されていた藤谷選手は、初ファースト。お父さんは「相手は左バッターが多いから心配」とおっしゃいましたけど、問題なく終わって何よりです。藤谷選手本人は「サードと同じ距離なので、そんなに違和感はなかったです」とのこと。ショートの熊谷選手に送球するのが不安じゃないかと、藤谷選手にとても失礼なことを聞いたら「大丈夫でしたよ。デカいんで」と笑顔。なるほど、“的”は大きい方が投げやすいですね。

 余談ですけど、藤谷選手が野手に転向して一緒にいることが多くなった、この同級生コンビ。特に宮崎へ行ってからは毎日、飲料の自販機前で2ショットを見ます。ジャンケンでどちらが買うかを決めているらしく、ここまでの戦績は五分五分だと言っていました。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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