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監督の留守中も、“矢野野球”の形は変わらず《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
1軍の日程終了後に宮崎入りした板山選手。早速15日の試合で4番を打ち、HRも!

 矢野監督が朝一番の飛行機で帰阪した14日、そして来季の1軍監督就任が決まった15日、みやざきフェニックス・リーグ参加中の若トラたちは、ことし矢野監督が説いてきた教えを実践して連勝!野手は超積極的に攻め、投手は強い真っすぐを投げての勝利でした。16日は残念ながら完封負けだったのですが、きょうは14日と15日の試合の結果と、監督代行を務めた高橋建投手コーチの話などを中心にご紹介します。

 そうそう、14日の楽天戦が終わった時にベンチ前で迎える高橋コーチのところへ駆け寄ってきた熊谷選手が、ウイニングボールを手渡したのです。受け取った高橋コーチは熊谷選手に何か言われて(おそらくウイニングボールですと)、少し笑みを浮かべながらポケットへ。翌日それを尋ねたら「熊谷がわざわざくれた、その気持ちがありがたいですよね。(宿舎の)部屋に置いています」とのことでした。

【14日】捕手4人がフル出場!

 まず14日はSOKKENスタジアムでの楽天戦。この日は高山選手が右足の張りで欠場しました。試合前練習の途中で判断されたようで、そこから急きょ小豆畑選手が外野守備の練習を開始!野手が9人になったため控えはいません。よってキャッチャーが5番から8番までズラリ、4人揃ってフル出場です。前日は岡崎、小宮山、長坂の3選手が出ていて「さすがにキャッチャー4人はないでしょうね」と話していた矢先のこと。

 小豆畑選手と、6回から守った小宮山選手も含めてライトの守備機会はありません。小豆畑選手が2回に中村選手の右前打を処理しただけですかね。試合後は「人生初の外野」と笑っていた小豆畑選手。「紅白戦とかではあったかなあ」とのことなので、対外試合では初ですね。

《フェニックス・リーグ》 10月14日

阪神- 楽天 (SOKKEN)

 楽天 010 100 000 = 2

 阪神 300 000 00X = 3

  ※特別ルール

◆バッテリー

【阪神】馬場-歳内‐石崎 / 長坂

【楽天】千葉(5回)-鶴田(1回)-今野(1回)-菅原(1回) / 石原

◆二塁打 神:熊谷、小宮山 楽:中村

◆盗塁 楽:村林、松本、南

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]遊:熊谷  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 1)

2]二:荒木  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

3]中:緒方  (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0)

4]左:江越  (4-1-1 / 2-0 / 0 / 0)

5]一指:岡崎 (3-2-0 / 0-0 / 0 / 0)

6]指右:小宮 (3-1-2 / 0-0 / 0 / 0)

7]捕:長坂  (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

8]右一:小豆 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

9]三:藤谷  (3-1-0 / 0-0 / 0 / 1)

 ※小宮=小宮山、小豆=小豆畑

 

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

馬場 6回 105球 (8-7-2 / 2-2) 152

歳内 2回 24球 (0-3-0 / 0-0) 145

石崎 1回 20球 (0-0-1 / 0-0) 150

《試合経過》  ※敬称略

1回に先頭で二塁打を放った熊谷選手(左)。
1回に先頭で二塁打を放った熊谷選手(左)。
歳内投手は7回と8回、パーフェクトに抑えています。
歳内投手は7回と8回、パーフェクトに抑えています。

 先取点は阪神。1回に熊谷が中越え二塁打を放つも荒木の投ゴロで三塁封殺。しかし緒方の死球に続き、4番の江越が左前打で荒木が生還!緒方は三塁へ、江越も二塁へ進み、2死後に小宮山が左中間へのタイムリー二塁打で2人を還します。

 3点の援護をもらった馬場ですが、2回は四球と石原、杉本のヒットなどで1死満塁として、9番・南への死球で押し出し。4回には松本の右前打と盗塁などで2死三塁として、また南にタイムリー内野安打を許し、1点差となりました。

 馬場は5回、6回と三塁まで走者を進めながら無失点。ついで登板した歳内が3奪三振など、2イニングを完璧に抑えます。ただし打線も2回以降、ヒットは出るものの追加点は奪えず。9回は石崎が登板て2死から八百板に四球を与えますが、長坂が盗塁を阻止して試合終了です。

矢野監督に見てもらいたい“力投”だった

14日は試合前にサイン会が行われました。青柳投手(左)と、試合を欠場することになった高山選手(右)が参加。
14日は試合前にサイン会が行われました。青柳投手(左)と、試合を欠場することになった高山選手(右)が参加。

 試合後、高橋投手コーチは“監督代行”の感想を聞かれ「ちょっと身構えた部分はありますね。ちょっと身構えますけど、みんなには普通に矢野監督の形を継続してもらえればと思っていました。全力疾走とかね、していたんじゃないかなと思いますので、とりあえず継続できてホッとしています」と答えました。

14日の阪神スタメン。5番からズラリとキャッチャーが並んでいます。
14日の阪神スタメン。5番からズラリとキャッチャーが並んでいます。
岡崎選手はマルチ安打で帰阪。一緒に帰った小宮山選手も2点タイムリー二塁打。
岡崎選手はマルチ安打で帰阪。一緒に帰った小宮山選手も2点タイムリー二塁打。

 続いて馬場投手について。「きょうは矢野監督に見てもらいたい、馬場の“力でいく”ピッチングだった。ゴロアウトが多かったけど、フライを打たせたりとか。そういうところで矢野監督の、強い球を投げていこうっていうメッセージを実践していく気持ちや思惑が感じられた。それと前日の浜地はポップフライが多くて、それにも影響を受けたらしく『強い球を放りたい』と思ったそうなので、力強い球を投げていたんじゃないですかね。でも相変わらず、やっぱりゴロアウトを取る変化球がうまいピッチャーだなという感じはしますね」

 好投した石崎投手には「3度目の正直でしょうか(笑)。ちょっと2アウトからフォアボールを出したのが、もったいないというか。“ピッチャーあるある”ですけどね、2アウトからのフォアボール。もうこれは永遠の課題かもしれません。それはありましたけど、ストライク先行でいけたので。ストライク先行でいけば彼は何とかなる、ってのは何度も言っているので、そこはできたかな」と振り返っています。

捕手総動員&福永がベンチ入り

熊谷選手が手渡したウイニングボールをポケットにしまう高橋コーチ。
熊谷選手が手渡したウイニングボールをポケットにしまう高橋コーチ。

 高橋コーチの話は続きます。江越選手が初回に放った先制タイムリーは、前日に続く“初球打ち”で「僕はピッチングコーチなので何とも言えないけど」と前置きをしたのち「金本さんがモノにしたかった選手だと思うのでねえ。きのうも、ファーム選手権でも(ホームランを)打ちましたよね?すごいパフォーマンスをする選手だと思う」と高橋コーチ。

 また福永投手が“外野手”としてベンチ入りしていた点は「野手が9人しかいなかったので何かあった時のために。ベンチでいっぱい声を出していましたよ。革手袋をはめたりとか、ちょっとその気になっていたけど、出すわけにはいかないから(笑)。ほんと申し訳なかったけど9人しかいなかったので、お願いしたら快く受けてくれた」。というか、やる気満々だったみたいですね。

“8番・ライト”の小豆畑選手(左)。試合前もいろんな人に声をかけられていました。
“8番・ライト”の小豆畑選手(左)。試合前もいろんな人に声をかけられていました。

 小豆畑選手は三刀流?「三刀流ねえ(笑)。矢野さんが小豆畑と西田の名前を挙げて『よく頑張っている』と言っていたように、小豆畑の1つのプレーで盛り上がるのは間違いない。必死にやってくれているので」と高橋コーチ。小豆畑選手本人は「紅白戦とかはあるかもしれないけど、対外試合では人生初外野です」と言っていました。

 浜中打撃コーチも総動員の捕手陣に対して「本当にありがたかった。最後まで(何事もなく)元気にやってくれて」と感謝。そして締めは「あすから若手がやってきて、来シーズンへの競争が始まる」という言葉でした。

「強さはあったけど、高かった」

 では選手のコメント。最初は馬場投手です。「BCリーグ(との練習試合・2日)に投げて、ファーム日本選手権に投げて、きょう投げて、来年はやっぱり強さを出していかないといけないなと思ったのでフォームを結構変えています。コントロールはちょっとアバウトになっているんですけど、まずはストレートの速さ。コンスタントに150近い、150を超えてくる。そういうところで、まずストレートの強さをこの1か月でものにしたい。変化球は今まで使っていたので、その中で配球とストレートの強さを今、勉強しているところです」

14日に先発した馬場投手。8安打されたものの力強いピッチングでした。
14日に先発した馬場投手。8安打されたものの力強いピッチングでした。

 試合を振り返って「きょうは、強さはあったけど高かった」と馬場投手。「2アウトから打たれたのも真ん中のストレート。でも収穫もあって、低めのスライダーやスプリットを振らせることもできたし、三振も取れた。真っすぐでファウルさせたり外野フライを上げたり。真っすぐで強みも少しは出していかないといけない部分があるので。きょうは、強さがあったけど高かったというのが一番わかりやすいですね。それでピンチもあったので、次はきょうの反省をまた考えて投げていけたら」

 フォームを変えて意識しているのは?「体重移動と、余計なことを考えないでファームを大きく使って腕を走らせる。いろいろ改善したところはあるんですけど、それはちょっと言葉にするのは難しいので。自分の中では結構変えて投げているつもりです。今まで以上にスピードは出ますけど、その分ちょっとコントロールがばらついている部分も。そこは慣れて、克服していくしかないので」

 前に比べて手応えを感じる?「はい!あります」。いつ頃から?「BCリーグの時(練習試合)からです。ファームのシーズンが終わってから思いきり変えました」。監督が変わって迎える来季にも「まあ自分のやることは変わらないですし、自分と向き合ってやっていければ」と答えました。

積極的に、なおかつ見極めて

9回に登板した石崎投手。2死から四球という“ピッチャーあるある”を悔やみます。
9回に登板した石崎投手。2死から四球という“ピッチャーあるある”を悔やみます。

 次は石崎投手。2死からの四球に「3人でピシャリと終わるのが求められるものなんですよねえ。見ていて安心感がある」と苦笑い。高橋コーチいわく“ピッチャーあるある”だそうで。でも、きょうは安心感があったと思いますけど。「ありました?よかったです。3人目で、謎に息が切れとった(笑)。きょうはバランスよく投げようと思って。自分と戦っても仕方ないので、バッターと戦わないと。ここまで4失点、4失点ときて自分を見失っている部分があったかも。だからゼロでよかったです。三振を取りたいってのもありましたが…」

 今後も同じようなところでの登板になりますかね?「課題を持って、きょうみたいな力感が出せれば安定できるかな。そこを求めて。あとは狙えるところを狙っていきたい」

 1回に先制タイムリーの江越選手は「しっかり1球でとらえたのでよかったです」とのこと。矢野監督が言い続けているテーマを実践できた?「そうですね。チャンスだったので、より積極的にと」。来季へのアピールはもう始まっていると思いますが。「課題もたくさんあるので、そこをしっかり克服してアピールしていきたい」

試合後の練習が終わったところ。コーチと会話をして笑顔になる江越選手です。
試合後の練習が終わったところ。コーチと会話をして笑顔になる江越選手です。

 そのあとの3打席は三振、初球を打って遊飛、三振でした。「3打席目も、もうちょっとネクストからタイミングを合わせていけたら。ちょっともったいない。最後も雑というか。そこをしっかりと見送って、何とか相手の配球というものを、簡単に投げさせないようにしていかないと」

 カウントを作ることを課題に?「矢野監督にも言われていたんですけど、ボール球をしっかり見送ったり、追い込まれてファウルで粘ったりしたら、バッテリーも配球をいろいろ考えると思うので。そこは積極的にいく中でも雑にならず、見極めをしっかりとしたい」。そういう捕手目線でのアドバイスはプラスになる?「そうですね」。打順が4番になっても、初球からという気持ちは変わらず?「全然考えていなかったです。普通に自分のすべきことだけを」

【15日】合流した選手が即活躍!

 15日は西都での日本ハム戦でした。明け方まで雨が降っていたため打撃練習は室内で行われたものの、試合には影響なし。なお前日の試合後に岡崎選手と小宮山選手が帰阪、新たに石井投手、森越選手、坂本選手、板山選手、植田選手が合流しました。この日も高橋コーチが指揮を執っています。

 試合は無事に、と言いたいところですが、2回の攻撃中にアクシデント発生。先頭で四球を選んだ緒方選手が二盗を試みた際、アウトの判定後も倒れたままでした。杉本トレーナーらが駆け寄り、すぐに担架を要請。コーチや選手も出て担架で運び出される時、あおむけに寝た緒方選手の右膝をトレーナーが持ち上げています。しばらくして到着した救急車で搬送されました。

盗塁を試みた際に右膝を痛め、担架で運ばれる緒方選手。
盗塁を試みた際に右膝を痛め、担架で運ばれる緒方選手。

 夕方、広報から『宮崎県内で受診した結果、右膝関節のねんざ』と連絡があり、緒方選手はそのまま帰阪。今後は未定だそうです。野手との接触はなく、映像を確認するとスライディングの衝撃で右膝が捻られたような状態でしたね。自分で体を起こせないほどの痛みだったのでしょう。古傷がある右膝だけに心配です。軽く済みますように。

《フェニックス・リーグ》 10月15日

日本ハム- 楽天 (西都)

 阪神 001 201 100 = 5

 ハム 000 002 001 = 3

  ※特別ルール

◆バッテリー

【阪神】石井-尾仲‐守屋 / 長坂

【日本ハム】中村(3回)-白村(2回)-田中豊(2回)-高山(1回)‐宮台(1回) / 郡‐黒羽根(9回表)

◆本塁打 神:板山ソロ(田中豊)

◆三塁打 神:植田 日:姫野

◆二塁打 神:藤谷 日:森本、難波

◆盗塁 楽:村林、松本、南

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]二:植田  (3-2-2 / 1-2 / 0 / 0)

2]遊:熊谷  (5-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

3]中:江越  (4-1-1 / 1-0 / 0 / 0)

4]右:板山  (4-3-0 / 0-0 / 0 / 0)

5]左:緒方  (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0)

〃左:荒木  (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0)

6]一:森越  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃一:小豆畑 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

7]指:坂本  (4-1-1 / 1-0 / 0 / 0)

8]捕:長坂  (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0)

9]三:藤谷  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

  

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

石井 6回 105球 (6-1-1 / 2-2) 143

尾仲 2回 35球 (2-3-0 / 0-0) 147

守屋 1回 26球 (1-0-2 / 1-1) 148

《試合経過》  ※敬称略

 まず打線は3回、1死から藤谷が左越えの二塁打を放ちます。続く植田の打球は一塁ベースを直撃して高く跳ねるヒット!これで藤谷が先制のホームを踏みました。そのあとは植田と、左前打で出た熊谷が盗塁失敗で1点のみ。緒方を含め、3回までで3つの盗塁を阻止した相手キャッチャーは郡です。

板山選手はホームラン!ベンチで迎える選手たちは両こぶしを縦に並べて“アゴタッチ”を要求しています。
板山選手はホームラン!ベンチで迎える選手たちは両こぶしを縦に並べて“アゴタッチ”を要求しています。

 4回は江越と板山が連打!ともに初球をとらえた中前打でした。荒木が四球を選んで満塁となり、森越の遊ゴロ併殺打で1点。2死二、三塁で坂本が左前タイムリー!さらに6回には板山が、これまた初球をセンターバックスクリーンへ放り込み、4対0とリードを広げます。

 新たに合流した選手は野手陣だけでなく、先発の石井も頑張りました。1回は内野安打で出た石井一の二盗を坂本が刺したあと、3番・森山には右越えの三塁打を浴びたので、ランナーがなくて何よりですね。そこからは2回、3回、4回と続けて三者凡退!アウトは8つのフライと1つの見逃し三振という内容です。

尾仲投手は7回に登板。2イニングを投げ無失点でした。
尾仲投手は7回に登板。2イニングを投げ無失点でした。
9回は守屋投手。暴投で1点を失ったものの、バットを真っ二つに折る投球も。
9回は守屋投手。暴投で1点を失ったものの、バットを真っ二つに折る投球も。

 5回も1安打のみ。自己最長の6回は先頭からヒットと四球などで1死二、三塁として、3番・姫野の右犠飛。続く森山に左前タイムリーを浴び、これで4対2となります。すると7回、1死から長坂が中前打して2死後に植田が右越えのタイムリー三塁打!8回は板山の右前打のみ。9回は2死から長坂の右前打、藤谷は振り逃げ、植田が四球を選んで満塁と攻めましたが無得点。

 投手陣は7回から尾仲に代わり、郡の中前打と難波の左翼線二塁打で二、三塁とするも、アウトは3つとも三振で無失点。8回は三者凡退です。9回は守屋が先頭の平沼に四球を与え、1死後に大累の中前打などで2死二、三塁となったあと、暴投で1点を失いました。最後は投ゴロで試合終了です。

“勝負する石井”になってきた

 まず監督代行・高橋投手コーチの話です。石井投手について「成長を感じるくらいね。ルーキーで入ってきた春先の“遠慮がちな石井”に比べて、だいぶ“勝負する石井”になっていたので、よくなっていくんじゃないかなと思います」とコメント。粘ってくる相手に対して「それでも向かっていけた、フォアボール1つに抑えたっていうのが彼の成長だと感じます。今まで(NPB相手に)こんな長いイニングを投げられなかったので、6回というのは今後に明確な課題が出たと思う。本人にとってもすごくよかった気がします」とのこと。

ホームランの板山選手を迎える高橋監督代行(左)。
ホームランの板山選手を迎える高橋監督代行(左)。

 フライアウトが多かった点は「持ち味かもしれませんね。ただフライアウトを取れるといっても、浜地のポップフライとは違って、ちょっと打球が怖い。ヒヤッとするようなイメージもあったので、そこはもう1回か2回、回転数が上がればまた違うのかな」と話しています。

 1軍から合流してきた野手陣が活躍したことに「僕から野手のことは…代行ですけど。でもやっぱり全力で、気を抜かずにやっていましたね。担当コーチの方々が、スタートからやらせていたんじゃないでしょうか」と満足げな高橋コーチでした。

「6回はバテました」と告白?

 次は選手のコメント。選手には試合の話と矢野1軍監督就任について聞いています。また後者だけの場合もあります。

 最初は石井投手です。試合後の練習場所へ向かいながら「どこでやるのか何をやるのかわからないんです。初めてきたので」とキョロキョロ。よく考えたら合流して即先発だったんですね。ここまで非公式戦で5回を投げたことは何度もありますが、6回はプロ最長で「6回は…バテました」と正直な告白と苦笑。

合流してすぐ先発した石井投手。プロ最長の6回を投げました。
合流してすぐ先発した石井投手。プロ最長の6回を投げました。

 5回までは72球だったのに、6回で105球になりましたね。「決め球がないので、粘られて球数が増えました。球速も、勢いもなくなっていたかと」。フライアウトが多かった点は「強い球を投げる意識でいったので、フライアウトが多かったと思います」と石井投手。じゃあ、これからの課題はスタミナ?「スタミナと決め球ですね」。なるほど。追い込んで決められたら、球数も減らせますもんね。

 なお矢野監督については「ことし1年、ファームで見てもらっていたので、そういう部分では自分のことも知ってもらえていると」と石井投手。いやいや、そりゃもちろん知っていますよ!つまり、新しい監督だったら一から覚えてもらわないといけないという意味のようです。

来年も自分をアピールするだけ

 植田選手は3回に右前タイムリー、7回は右越えタイムリー三塁打と気を吐きました。「タイミングの取り方とか、シーズンが終わってから変えたんですけど、きょうやってみていい感じでした。ここ(フェニックス)で、やれることをやっていきたい」。矢野新監督に関しては「今まで通り、自分のアピールできるところを出していくだけです」というひとこと。

西都の球場は台風でスコアボードが倒壊。ご覧のように手作業で『H』や『E』は右の方がボードを上げて表示してくださいます。
西都の球場は台風でスコアボードが倒壊。ご覧のように手作業で『H』や『E』は右の方がボードを上げて表示してくださいます。

 坂本選手は4回のタイムリーを「1軍で試合に出る機会が少なかったので、(フェニックスでは)やりたいことをやってみようと思っていました。1本出た結果はよかった」と振り返り、矢野監督就任には「守る方、打つ方、トータルで言ってもらっていますし、自分で噛み砕いて表現できるようにしたい。それは、どの監督であったとしてもですけど。勝てるように、求められたところで」と言っています。

 続いて江越選手。この日のヒット(4回に先頭で中前打)も初球打ちでした。「打席内容も前よりよくなっていると思うので、継続したいです。きょうはしっかり打ちにいった中で見逃せたり、ある程度カウントを作れたと思います。たまに強引に振りにいってしまうことが課題」。1軍監督になる矢野監督へは「自分のやることは明確なので、変わったなというところをアピールしたい」そうです。

「1年間の恩は1軍で返したい」

 長坂選手は「頑張ります!(1軍の)試合に出られるよう頑張るだけです」、熊谷選手は「矢野さんに教えてもらったことは自分のためになっています。来年1軍でやれた時は、そういうことを踏まえながらやっていきたい」と、矢野1軍監督就任についての言葉を述べました。

坂本選手のタイムリーで生還し、先発の石井投手(右)とタッチする板山選手(左)。
坂本選手のタイムリーで生還し、先発の石井投手(右)とタッチする板山選手(左)。

 締めは板山選手で、まず試合のことを聞いています。終盤に1軍でしっかり爪痕を残して合流したフェニックス。いきなりホームランを含む3安打、しかもすべて初球を打ったもの。いい結果ですね?「速い真っすぐを打つという課題があったんですけど、それができたのでよかったです」。今後の課題も同じ?「速い真っすぐを打つことです」

 矢野監督の就任が正式に決まりました。この1年間、監督の口から一番多く出たのは間違いなく板山選手の名前でしょう。その感謝の思いを伝えないといけませんね。「1軍の舞台で、結果で応えたいと思います」。特に自分のやることは変わらないと話しながらも、最後に「1年間かけてもらった恩を、1軍で返したいです」と言いました。

 ことし2月から始まった板山選手の全力疾走。来年も矢野監督の前で見せてください。ただし、その舞台は1軍ですね。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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