Yahoo!ニュース

阪神タイガース・ファーム版『ウル虎の夏』は、3戦全勝で1軍にバトンタッチ!

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
ファームの“ウル虎の夏”、最後は30歳のバースデーだった小豆畑選手がスピーチ。

 夏の阪神タイガース一大イベント『ウル虎の夏2018』は20日~22日、遠征中の1軍に代わってファームがウエスタン中日戦で盛り上げました。“ウル虎イエロー”はナイター照明の中で一層映えますね。これがファームにとっては今季最後の甲子園開催だったのですが、見事に3つとも勝って、試合終了後にはヒーローインタビューと六甲おろしの大合唱!それにホームランも毎日見られて、皆さん堪能してくださったでしょう。

 最終戦の22日は1回、江越大賀選手の先頭打者ホームランで先制!しかも初球を打ったものです。江越選手は16日のソフトバンク戦(タマスタ筑後)でも、試合開始直後に同じく初球をレフトスタンドへ放り込みました。つまり、この7連戦の最初と最後に出たということですね。なお江越選手の先頭打者アーチは、これで今季5本目でした。

 ちなみに7月は11試合のうち6試合で初回に得点している阪神。その6試合はすべて勝っています。というか、7月の成績は9勝1敗1分けですからね。

 22日現在で81試合を消化した阪神は、47勝29敗5分けで首位。貯金18というのはもしかしたら、最終成績がちょうど47勝29敗(12分け)で優勝した2006年以来かも。ただしシーズン途中まで詳しく調べていないので、断言はできません。とにかく、また「○年ぶり」が今後も出てきそうな予感がします。今のところ2位のソフトバンクに4ゲーム差。残りは最大で40試合、もう3分の1となりました。

きょう24日からは1軍による『ウル虎の夏』後編。勝ってほしいですね!
きょう24日からは1軍による『ウル虎の夏』後編。勝ってほしいですね!

 では22日の試合結果をご覧ください。昨年も7月21日に甲子園のナイターでプロ初勝利を挙げた竹安大知投手が先発です。6月29日のオリックス戦(甲子園)で6回1安打無失点と好投して以来、23日ぶりの登板でしたが、今回も6回を2安打無失点。しかも5回2死まではノーヒット!三塁を踏ませぬ快投を披露して3勝目を挙げています。そんな竹安投手でも、江越選手でも、2安打2打点の高山俊選手でもなく、試合後のヒーロースピーチは小豆畑眞也選手でした。詳しくはのちほど。

《ウエスタン公式戦》7月22日

阪神- 中日21回戦 (甲子園)

 中日 000 000 100 = 1

 阪神 240 020 00X = 8

◆バッテリー

【阪神】○竹安(3勝)-マテオ-歳内-尾仲 / 坂本-小豆畑(7回~)

【中日】●山本拓(4敗)(2回)-鈴木翔(3回)-三ツ間(1回)-谷元(1回)-伊藤準(1回) / 加藤-武山(6回~)

◆本塁打 神:江越12号ソロ(山本拓)

     中:野本4号ソロ(マテオ)

◆二塁打 神:高山、今成

◆盗塁  中:渡辺(5)

◆打撃  (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]右:江越  (4-1-1 / 2-0 / 0 / 0) .215

2]一:荒木  (2-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .202

〃三:森越  (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .254

3]指:緒方  (3-2-1 / 0-0 / 0 / 0) .271

〃打指:西田 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .192

4]左:高山  (4-2-2 / 1-0 / 0 / 0) .323

5]二:板山  (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .290

6]三:今成  (3-1-2 / 0-0 / 0 / 0) .226

〃一:山崎  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .286

7]捕:坂本  (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .307

〃捕:小豆畑 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .150

8]遊:熊谷  (1-0-0 / 1-2 / 0 / 0) .198

9]中:島田  (3-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .216

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

竹安 6回 80球 (2-6-1 / 0-0 / 0.98) 145

マテ 1回 10球 (1-0-0 / 1-1 / 4.50) 152

歳内 1回 10球 (0-0-0 / 0-0 / 4.70) 147

尾仲 1回 17球 (0-1-0 / 0-0 / 3.06) 148

 ※マテ=マテオ

《試合経過》※敬称略

島田選手は2安打。盗塁は、加藤捕手に刺されて残念ながら失敗でした。
島田選手は2安打。盗塁は、加藤捕手に刺されて残念ながら失敗でした。

 まず打線から。冒頭で書いたように1回、甲子園2度目の先発となった市立西宮高出身のルーキー・山本拓が投じた初球(144キロ、高めの真っすぐ)を左中間へ!低い弾道で飛んで行った打球はレフトスタンドへ刺さる第12号ソロ。荒木の左前打と緒方のファースト内野安打で無死一、二塁として1死後に板山が投ゴロ。二塁へ送られ、ショートは一塁へ転送しますが悪送球となって荒木が生還。2点を先取しました。

マテオは7回に登板するなりホームランを浴びています。
マテオは7回に登板するなりホームランを浴びています。

 2回は坂本と熊谷が連続してストレートの四球を選び、縞田の左前打で無死満塁。江越は三振に倒れるも、荒木の犠飛で1点。さらに緒方が右前タイムリー!前進して捕り、投げようとしたライトですがボールは置き去り…。これで二、三塁となって高山が右前へ2点タイムリー!この回4点を加え、6対0とリードを広げます。

 その次は5回。2死から高山が右翼線二塁打、板山は四球、続く今成が左中間へタイムリー二塁打!これで山山コンビ(ちょっと懐かしい)が還って2点追加。6回は島田が右前打したものの二盗失敗。なお4回に四球を選んだ熊谷も刺されて、仲良く盗塁失敗。さすが中日・加藤ですね。そのあと7回と8回は三者凡退で終わりました。

8回は歳内がピシャリ!10球のうち7球が145キロを超える真っすぐでした。
8回は歳内がピシャリ!10球のうち7球が145キロを超える真っすぐでした。
9回は尾仲が三者凡退。最速は148キロです。
9回は尾仲が三者凡退。最速は148キロです。

 一方の投手陣。まず先発の竹安は1回、先頭・溝脇に四球を与えますが後続を断って無失点。2回と3回は2三振ずつ奪って三者凡退、4回は内野ゴロ3つで片づけ、まだノーヒットです。5回もすんなり2死までいって、7番の谷は2球で追い込み1球ボールのあと144キロの真っすぐをライト前へ…。59球目で初ヒットです。続く伊藤康にも中前打され、内野陣がマウンドに集合。次の加藤は、この日冴えていたフォークで空振り三振!6回は再び三者凡退で投げ終えた竹安。

 7回はマテオと、この日30歳の誕生日を迎えた小豆畑のバッテリー。マテオは先頭の野本に、いきなり152キロの初球を右中間スタンドへ放り込まれましたが、あとはスイスイと内野ゴロ3つで抑えています。8回の歳内は10球で三者凡退!最後は尾仲が同じくビシッと三者凡退で、試合終了です。

“優先させることができる”内容

 試合後の矢野燿大監督の話は、まず竹安投手のことです。「1軍でも勝てるチャンスがあるような中身。右バッターにインコースも行けているし、フォークもバッターを崩したり空振り取れたりしていたし、カーブでもカウント取れたり。全般に見て、これなら(1軍で)勝てるチャンスがあるなっていう投球だった。あとはクイックやね。どうしても、もうちょい速くしてこないと隙をつかれたら走られるようなクイックなんで」

竹安投手は6月29日以来の登板だったものの、今回も6回無失点の好投!しっかりアピールしました。
竹安投手は6月29日以来の登板だったものの、今回も6回無失点の好投!しっかりアピールしました。

 ピッチングの内容自体は、1軍を狙う競争の中に入っていける?「そうやね。アイツも前半苦しい思いをしたけど。ここに来て、そういう投球を見せてくれている。フォアボールで崩れるタイプじゃないしね。何回か続けば推薦というか、そういうとこで名前が挙がってくる内容だったから。まあ、きょう一回ではね」

竹安投手が初ヒットを許したのは5回2死から。59球目でした。
竹安投手が初ヒットを許したのは5回2死から。59球目でした。

 今後は中何日という形でローテーションに入れて?「2軍の先発って、1軍から(投げるピッチャーが)来たりするから予定していても変わるので。でも今回のピッチングだったら、ある程度“こういう間隔で”ってことになってくると思う。まだ次が決まっているかどうかわからないけど、優先させるような内容やったと思う。フォークがよかった。もともとシュートはいいけど、きょうは球の力があるから右バッターにシュートが食い込んでいた。武器になるんじゃない?」

えぐい打球は江越選手の代名詞です

 次に、江越選手の先頭打者ホームランには「すっごい打球やったな!あんなん入る?入らんぞ普通、あの打球。えぐいぞ、ほんま。あれこそ“半端ねえ”よ。日本人選手では江越くらいじゃない?すごいわ~」と感嘆の言葉を連発した矢野監督。

 「1球で仕留めるってのが2軍での大きなテーマ、課題。1軍へ行った時に代打で出ていって、大げさに言うと1球ファウルしたら終わりなんだから。それくらいの気持ちでね。俺が言わんでもベンチでみんな“1発で仕留めよう!”って声もあるくらい浸透してる。いいスイングでファウルってのはよくあるけど、いいスイングで仕留められたのは評価できると思う」

江越選手の写真がうまく撮れず…これは20日、ホームランの糸井選手を迎えているところ(中央)です。
江越選手の写真がうまく撮れず…これは20日、ホームランの糸井選手を迎えているところ(中央)です。

 そして「まあ、もう1本ね。いつも“1本で終わるなよ、もう1本いけよ”と言ってて、内容もいいのがあったけど。ホームラン12本やったっけ?こうやって結果がついてくるのはいいこと。でもポテンシャル的にいうと、まだまだこんなもんじゃないと思うし。もっともっと高いレベル目指して、ただいま成長中」と締めくくりました。なるほど今もなお成長しているんですね。楽しみです。

 なお江越選手本人も「よかったです」と感想を述べたホームラン。矢野監督が入ると思わなかったと。「僕も入ると思わなかったです」

 今週2本目の初回に初球を打った先頭打者ホームラン。1打席目から集中できている?「そこはチームで言われていることなので。しっかり捉えられて、いい流れを作れてよかったです。次の、チャンスの打席で最低限の仕事ができたらよかったんですけど」。やはり無死満塁で回ってきて三振に倒れた2回の打席を反省しています。

「1軍で投げ、そこで勝てないと意味がない」

 次は竹安投手。ナイスピッチングでした!「いろいろ試しながら結果も残せたのでよかったんですけど。初回の先頭バッターのフォアボールと、連打された時はその前にけっこう変化球を投げていたので、ちょっと真っすぐをどんどん投げていこうというテーマを持っていった回で。でもちょっと力み方を間違えて…。棒ダマだったりシュートして甘くしまったりとか。そういう球を打たれてしまったので、力み方をしっかり改善して、もっとファウルや狙ったところで空振りを取れたらまた違うかなと思います」

高山選手は前日に続くマルチヒットで、2打点と竹安投手を援護。
高山選手は前日に続くマルチヒットで、2打点と竹安投手を援護。

 先発で2試合続けて好結果が出ていることについては?「そうですね。やっぱり結果を残してなんぼというか、結果を残さないと1軍に上がれないのでいいかなと思います。でも、まだまだな部分もある。そこは毎回しっかり気にして次に臨めたら」。矢野監督も、これくらいのピッチングを続ければ推薦できると。やはり1軍で投げたい思いはある?「そうですね。いくら2軍で抑えても、上で投げないと、1軍で勝てないと意味がないので。内容にこだわりながらも、しっかり1軍のバッターを抑えられる投球を続けられたらと思います」

 ヒットを打たれていないのは気づいていた?「いや、でも打たれたあとが大事だと思っていたから。長いイニングを投げたかったので、どちらかというと1人1人アウトを取るというよりは、ゲーム全体の流れとして長く投げるための布石をしっかり打っていくということを考えていました。だからヒットを打たれる、打たれないというより、そのあと投げるための配球を考えていたので、そこまで気にはしていなかった。点差もあったから、そこはこだわるべきではないと思って」

好投の要因は“ウル虎”ユニホーム?

昨年に続いて、ことしもウル虎の夏でフォークが冴えたという竹安投手。これフォークですかね?
昨年に続いて、ことしもウル虎の夏でフォークが冴えたという竹安投手。これフォークですかね?

 フォークがよかったですね。自信でも手応えはありますか?「ことしずっとフォークがよくなかったんですけど、きょう結構よかったので多めに投げました」。最近よくなったのではなく?「はい、きょう。きょうがよかったです。去年もウル虎の夏でフォークがよかったんですよ!」。夏男かな?「ウル虎の夏男かもしれないです」。うまい!

 ちょうど1年前、7月21日にここで勝ってマイクを持って。「はい。去年のウル虎の夏が、去年で一番フォークがよかった日だった。きょうもことし一番よかった」。何か要因があるのかな?たとえば湿度とか。「ユニホームがいいかもしれないですねえ」。そこですか(笑)。あれがプロ初勝利だった。きょうもヒーロー?と思ったら小豆畑選手に持っていかれましたね。「持っていかれましたねえ。誕生日には勝てないです」

甲子園で祝ってもらった「いい誕生日」

「あ、あ」とマイクテスト中の小豆畑選手(右)を見守る板山選手(中)。ニヤニヤしている緒方選手(左)。
「あ、あ」とマイクテスト中の小豆畑選手(右)を見守る板山選手(中)。ニヤニヤしている緒方選手(左)。

 試合が終わってヒーロースピーチのマイクを渡されたのは、“持っていった男”・小豆畑選手でした。

「最後までご声援ありがとうございました。去年の7月22日も甲子園で勝つことができたので、とてもいい思い出になると思います」。ここでちょっと説明を。昨年の7月22日、先発出場だった小豆畑選手は才木浩人投手と高宮和也投手をリードして7回までマスクをかぶり、6回1安打無失点でプロ初勝利を挙げた才木投手がヒーローインタビューを受けたんですよね。

 小豆畑選手のスピーチに戻ります。

まさか自分で「ハッピーバースデー、おれ♪」って歌うとは思いませんでした。
まさか自分で「ハッピーバースデー、おれ♪」って歌うとは思いませんでした。

 「ちなみに、きょうは何の日か知っていますか?」と呼びかけ。打席に入った時に“ハッピーバースデー”の合唱が起きたので、皆さん気づいていますよね。沸いた歓声を聞き、小豆畑選手は「きょうはみんな知っている通り…モレノ投手の誕生日です!」。スタンドから笑いが。「と同時に、僕の誕生日でもあります!それでは自分で祝いたいと思いま~す」。マイクを握り直して「ハッピーバースデー、おーれー!」と歌い出しました。

 スタンドにマイクを向けて続きを促し、そのあとの「ディア―、おーれー!」と最後のトゥーユーの部分でまた「おーれー!」と音程をいっさい気にせず叫んで終了。「ありがとうございましたぁ!」と頭を下げると、うしろに並ぶ選手たちと新井良太コーチがもう大爆笑です。

久々のマスク、嬉しかった!

 試合後に話を聞くと、まず「モレノの誕生日はきのう(21日)だったみたいで。けさベンチでお祝いしたから、きょうだと思っていた」と苦笑いの小豆畑選手。スピーチは自分だと思っていた?「いえいえ、良太さんからマイクを渡されたんですよ。竹安やと思っていたからビックリした!」。新井コーチは「決めたのは監督ですよ。監督が小豆畑にって」と経緯を教えてくれました。

この日活躍した選手たちも、この歌に大爆笑!
この日活躍した選手たちも、この歌に大爆笑!

 小豆畑選手は「久しぶりに守ったので嬉しかった!しかもマテオってね(笑)。逆に開き直れたかも」と興奮冷めやらず。確かにマスクをかぶったのは6月15日の中日戦(甲子園)以来ですね。その時は先発出場で6回まで。試合に勝って、マウンドでハイタッチをするのは最高?「はい、よかったです!いい誕生日になりました」。いつものようにスマホで愛娘の写真や動画を見ながら、さらに笑顔倍増の帰途。パパ、頑張ってください!

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

岡本育子の最近の記事