ことしも都市対抗野球大会出場を決めた、もと阪神タイガースの選手たち

2次予選を突破した玉置隆投手(中)、若竹竜士投手(右)、阪口哲也選手(左)。

 社会人野球の『第89回都市対抗野球大会』は7月13日から12日間、東京ドームで開催されます。ほとんどの地区で2次予選が終わり、代表チームが名乗りを挙げました。きょう北信越で代表が決定、あとは北海道、東海、中国で早ければ11日にも決まる予定です。雨で日程のずれた近畿2次予選は9日、NTT西日本が9回サヨナラ勝ちで日本生命を破って閉幕。これで代表5チームが出揃っています。

 プロ生活を終えたあと、社会人野球の世界で現役選手、兼任コーチ、また監督やコーチとして“日本一”を目指す選手にとって一番大きな舞台は、やはり都市対抗野球でしょうね。もと阪神タイガースの選手たちもしかり。その中で新日鐵住金鹿島で3年目のシーズンを迎えた玉置隆投手(31)、三菱重工神戸・高砂に入って5年目の若竹竜士投手(30)、パナソニック4年目の阪口哲也選手(25)が、ことしも東京ドーム行きを決めました。

入部して3年連続の都市対抗!

 新日鐵住金鹿島(鹿嶋市)は、順当に茨城1次予選をクリアして北関東2次予選へ。そこで1回戦トーナメントを経て突入した代表決定リーグで初戦を落とし、1勝1敗で6月3日の最終戦を迎えました。相手のSUBARUは2勝、また日立製作所も午前の試合で勝って2勝1敗、もし負けたら終わってしまうところで玉置投手が完封勝利を挙げたのです。

いつも「最高のチームです」という玉置投手。ぜひドームでの1勝を!<筆者撮影>
いつも「最高のチームです」という玉置投手。ぜひドームでの1勝を!<筆者撮影>

 「ここで先発するのは決まっていました。ただ、こんな崖っぷちで来るとは思わなかったけど」と苦笑い。試合を振り返って「しんどかったですねえ。2死二、三塁が2度もあった」と言います。でも3回に1死から連打と盗塁などで作った2死二、三塁のピンチは空振り三振!他のイニングも要所を締めるピッチングです。

 玉置投手いわく「うちが7回まで2安打だけだったんですよ。相手は前にも抑えられたピッチャーで。でもここまで点が入らないとは思わなかった」という打線が8回、先頭の谷口選手のヒットや犠打などで2死二塁として、9番・安達選手がエンタイトルツーベース!これで1点を先取しました。そして9回に2度目の2死二、三塁があったものの最後は左飛に打ち取り、1対0で試合終了。(※試合経過は新日鐵住金鹿島野球部の公式サイトより)

 7安打完封の玉置投手は「140球以上投げたみたいで。5回までに9三振でしたからね。6回以降は三振なしですけど」と笑いますが、続いた言葉が「でも2日後に先発することが決まっていて」というもの。ええっ!それはさすがに…。「はい。全然力が入らなくて、3点取られて3分の2回で交代しました」

 翌日から代表決定トーナメントに入り、初戦は日立製作所に勝利。問題は5日の第1代表決定戦で、これまたSUBARUとの顔合わせです。完投から中1日の玉置投手は1回にヒットと犠打、三振で2死二塁になったあと4連打を食らって3失点。8回に1点返しただけで6対1で敗れた打線には「初回の3点で相手を乗せてしまった自分のせい」と話し、日帰りで和歌山から応援に来てもらった皆さんにも「降板してしまって申し訳ない」と悔やみます。

北関東おなじみの3チーム

 そして6日、残り1枠をかけた戦いの相手は日立製作所。3回までに4点を取られるも6回に1点、8回に2点を返し1点差まで追い上げました。しかしその裏にまた2点を追加され、3対6で迎えた9回表。ヒット、セーフティバント、死球で無死満塁として押し出しの四球と2点タイムリー二塁打で同点!犠飛で勝ち越し、さらにタイムリー二塁打!一挙5点を奪う大逆転で8対6の勝利です。

 「みんな諦めていなかった。『向こうは勝ったと思ってるぞ!いける、いける!』って。いや~僕も負けたと思っていましたからね。すごいですよ」とチームメイトの気迫に感心しきり。「毎年きつい戦いですけど、今回が一番きつかったかなあ。日程的にも。三つ巴になってから、僕らは3試合やっていますもんね」

昨年の日本選手権前の練習で投げる玉置投手です。<筆者撮影>
昨年の日本選手権前の練習で投げる玉置投手です。<筆者撮影>

 三つ巴というのが毎年同じ顔ぶれ(新日鐵住金鹿島、SUBARU、日立製作所)で争う代表決定トーナメント。ことし新日鐵住金鹿島は6月4日、5日、6日と3試合やりました。確かに他の2チームは2試合ですね。よって鹿島は代表決定リーグ戦と合わせると6月1日から6連戦!これもハードだったでしょう。ところで玉置投手は肩、ひじ、その他も問題ない?「はい、今回も元気に働いてくれました!」。よかった。

 無事に3年連続18回目の本戦出場を決めた新日鐵住金鹿島。「3年連続出場ってのが(入社して)最初の目標だったので、よかったです。いつも厳しい戦いで、まさか3年で達成できるとは」と玉置投自身も感慨深げ。本戦に向けては「この2年、全国制覇を目標に掲げてやってきたんですけど、自分たちの力のなさを知った。去年に関しては僕が足を引っ張ってしまったし…。なので僕たちの力を自覚して、初戦を勝つ。それしか考えないことにしました」と、まずは1勝という誓いです。

 

こちらは入部して5年連続です!

都市対抗で先発するところ、見てみたいですね!
都市対抗で先発するところ、見てみたいですね!

 三菱重工神戸・高砂(神戸市・高砂市)は、近畿2次予選の1回戦でミキハウスベースボールクラブに5対4で勝ち、2回戦は日本生命に2対0の完封勝ち、そして5月26日の準決勝・パナソニック戦で若竹投手が先発!4回1失点で次へつなぎ、5対2の勝利です。5月31日に行われた第1代表決定戦は、4対3で大阪ガスに逆転勝ちして、5年連続35回目の都市対抗出場となりました。

 予選では1試合だけの登板だった若竹投手ですが、社会人に行ってから公式戦で先発というのは記憶になかったですね。「去年の終わりぐらいから先発をやらせてもらっています」。そうでしたか。「先発をやりたいとは言っていたんですけど、結果もちょくちょく出始めたからですかね」

 “ちょくちょく”っていう言葉に笑っちゃいますが、よくなったのは何かを変えて?「けっこう真っすぐが抜けたり、コントロールがアバウトだったんです。それで小さい変化球を、カットボールとかを覚えて。それからかな」。なるほど、つまり変化の小さい変化球ですね。「今もフォアボールを出しますけど、自分の中で気持ち的に余裕ができたと思います」

先発としてドームのマウンドに

 チームは近畿2次予選を負けなしで突破し、みごと第1代表での出場が決まりました。若竹投手にとっては「入って1年目が第1代表でした。その時に一度だけ投げています」という本戦。三菱重工神戸として出た2014年の第85回大会は、3回戦で西濃運輸に敗れましたが、その最後の8回裏の初登板。1三振を奪って1イニングを三者凡退という内容です。

強気の直球勝負!という若竹投手ですが、80キロ台のカーブも忘れられません。
強気の直球勝負!という若竹投手ですが、80キロ台のカーブも忘れられません。

 ことしも東京ドームで投げたいですね。「はい。先発したいですね」。それは我々も望むところ。三菱重工神戸・高砂といえば、守安玲緒投手が先発して完投するイメージです。かなり長くエースで頑張っていますね。「でも守安は僕と同い年ですよ」。え、そうなんですか!そうそう、2012年に日本ハムへトレードされた時の相手・今成亮太選手とも同い年ですね。昨年に続いて今季もファームでの出場になっていますが、9日のオリックス戦(紀三井寺)で3ランを打ちました。若竹選手も、1軍で盛り上げる今成選手を見たいでしょう。きっと。

 写真を見ると顔つきが精悍になったような。気のせい?「あはは!どうでしょう。昔に比べたら痩せたんじゃないですかねえ」と若竹投手。ニックネームは昔も今も「ぷっちょ」です。

昨年と同じ第4代表となりました

7日に出場を決めたパナソニック・北口監督の胴上げ。
7日に出場を決めたパナソニック・北口監督の胴上げ。

 パナソニック(門真市)は5月24日の2回戦でニチダイと対戦して、0対0のまま延長突入。11回表に三上選手の2ランが出て2対0で勝ちました。26日の準決勝は三菱重工神戸・高砂に敗れ、敗者復活戦へ。31日はNTT西日本に勝ったものの、6月2日の第2代表決定戦で大阪ガスに完封負け。4日の第3代表決定戦は昨年と同じ日本新薬との顔合わせで、昨年と同じく…負けました。そして雨で順延された7日の第4代表決定戦はNTT西日本に4対2で勝利!3年連続52回目の本戦出場です。

田中充コーチ(左)、田中篤史コーチ(右)、後界コーチ(中)。
田中充コーチ(左)、田中篤史コーチ(右)、後界コーチ(中)。

 試合後に「きのう、エンドランが成功する夢を見たんです。それに賭けてみよう、エンドランばっかりしてやろうと思った」と北口正光監督。0対0の4回、最初のエンドランで無死一、二塁に。「これを決めてくれたところからゲームが動いた」と監督が振り返り、次は打者が空振りしたものの「ダブルスチールになった!」。重盗で1点を先取したあとのエンドランは失敗しますが「粘ってくれて」タイムリー。この回の3点で試合が決まったようなものでしょう。

こちらはパナソニックが誇るピッチャーズです!
こちらはパナソニックが誇るピッチャーズです!

 「夢のおかげです!(創業)100周年と会社から言われてるんで、この1年で勝負を賭けて花を添えたい。まず都市対抗で、てっぺんを狙いたいですね」。4月に梶原康司監督から北口監督に代わったばかり、でもスタメンでの起用が増えた阪口選手について聞いてみました。「バッティングがよかったから使っていたんだけど、エラーをしてから打つ方の調子も落ちてきたんで」。そこへケガから戻ってきた松根選手がうまく入っちゃったわけですね。

バッティングはいい感じに

4日の試合前、シートノックで走る阪口選手。
4日の試合前、シートノックで走る阪口選手。

 では阪口選手の話をご紹介します。近畿2次予選の最初だった5月24日のニチダイ戦で、阪口選手はいつものように8番サードで先発出場しました。ところが本人いわく「2つ続けて送球エラーしてしまって…」途中交代となり、以降はスタメンなし。出場も4試合目の6月2日、大阪ガス戦の9回にサードを守っただけです。「慌てなくていいところで、慌ててしまいました。引きずらんとこうと思ったけど」と反省。

同い年で同期のパナソニック4年目5人衆。後列左から北出投手、榎本投手、福原選手、前列左から藤井健選手、坂口選手。
同い年で同期のパナソニック4年目5人衆。後列左から北出投手、榎本投手、福原選手、前列左から藤井健選手、坂口選手。

 とはいえ、今季は3月中旬に行われたJABA東京スポニチ大会の3試合目・三菱重工名古屋戦で途中出場ながらホームラン!しかもレフトへ打っています。3月下旬の大阪府野球連盟春季大会では二塁打と盗塁。4月下旬のJABA京都大会は5試合すべてフル出場で、30日の日本生命戦では2ランを含むマルチヒット。この大会の優勝(日本選手権出場権獲得!)に貢献しました。5月はJABA北海道兼東北大会でもレフトへの三塁打があります。

 バッティングのことを聞かないと。「いい感じです。ことし最初に打ち方を変えたんです。逆方向にも飛ぶよう、コーチと話もしたりして」。どんなふうに変えたの?「今までボールに対して“がっついていた”のを、体の近くにポイントを持ってくるようにしました。それでボールが長く見られるようになった」。なるほど、それで左方向への打球も増えたわけですね。

試合には出なかったけど、記念撮影の掛け声は坂口選手(前列中央)が担当。「江戸へ行くぞー!」
試合には出なかったけど、記念撮影の掛け声は坂口選手(前列中央)が担当。「江戸へ行くぞー!」

 ただ、試合に出られなくてもベンチで誰より大きな声を出していたのは、みんなが知っています。阪口選手と同い年で仲良しの藤井健選手も、その1人。この試合でタイムリー含む二塁打2本、予選全体でも1試合に1本は打っていて「哲の声が打たせてくれたんです。マジで、打席でもちゃんと聞こえていますよ」と言ってくれました。ベテラン柳田選手も「ほんと助けられている」と。でも、ことしは本戦で打って守る哲ちゃんが見られるよう祈ります!

切り替えて秋の戦いへ

 残念ながら本戦出場がかなわなかった、もと阪神タイガースの選手たちもいます。

 藤井宏政さん(28)が今季からコーチ専任となったカナフレックスは滋賀1次予選で無念の敗退。野原祐也監督(33)が率いるクラブチーム・OBC高島は滋賀1次を勝ち抜いたものの、京滋奈1次予選で涙を飲みました。穴田真規さん(25)が昨年までの4年間所属したクラブチーム・和歌山箕島球友会は、大阪・和歌山1次予選を余裕で突破して近畿2次へ進んだのですが、1回戦でニチダイに大敗。敗者復活の1回戦はミキハウスベースボールクラブに惜しくも9回サヨナラ負けで終了しています。

 他に、九州2次予選で敗退となった沖縄のエナジックには石嶺和彦監督(57)、大城祐二コーチ(32)、今季から西村憲コーチ兼投手(31)がいます。また藤田太陽さん(38)が総合コーチを務めるロキテクノベースボールクラブは富山・石川・福井1次予選をクリアして北信越2次予選へ進出するも、1回戦で敗れました。

 よってカナフレックス、エナジックは11月の社会人日本選手権に向けて9月に開催される最終予選が次の戦いです。OBC高島、和歌山箕島球友会、ロキテクノベースボールクラブは9月にメットライフドームで行われる全日本クラブ選手権出場を賭け、まもなく1次予選が始まるところ。ちなみに和歌山箕島球友会は昨年のクラブチャンピオンなので1次は免除、7月7日の西近畿2次で連続出場を目指します。

《番外編》日本新薬・榎田投手

6月4日、代表決定で胴上げされる日本新薬・吹石監督。
6月4日、代表決定で胴上げされる日本新薬・吹石監督。

 番外編として、日本新薬(京都市)の話も少し書かせていただきます。パナソニックとの第3代表決定戦は0対0のまま延長に入り、12回表に2点を取った日本新薬が勝ち。就任2年目の吹石徳一監督(65)は「ホッとした感じですわ~。東京ドームでは、大変だった予選の苦労が実るんじゃないかなあ」と、胸をなでおろしておられました。

 この日、先発して7回2/3を投げ5安打無失点だった榎田宏樹投手(29)は「マメがつぶれて出血したので交代しました。ベストじゃないまま投げるより、いいピッチャーがいるから託した方がいいと。若い子が動いてくれて僕が手助けする形で回れば、すごくいいバランスだと思う」と話しています。

笑顔いっぱいのガッツポーズ。中央が榎田宏樹投手です。
笑顔いっぱいのガッツポーズ。中央が榎田宏樹投手です。

 「2年目くらいから今のツーシームを覚えて、それを軸に投げられるようになりました。それに付随してチェンジアップやスライダーもよくなってきた。きょうは自分のペースで狙ったところへしっかり投げられたので、自分としてはベストの投球だったと思います」。初めて鳴尾浜へ練習試合で来た宏樹投手に話を聞いてから6年。とっても大人になりましたね。

「兄が勝ったから僕も勝てました」

 3月に阪神から西武へ交換トレードで移籍した、兄の榎田大樹選手(31)が、この前日の阪神戦(メットライフドーム)で5勝目を挙げたので、そこも聞いてみると「きのう兄が勝ってくれたので、きょう僕も頑張ろうと思ったんです。兄弟としても、一投手としても見習うことが多い。ステージは違っても、見ていて勇気をもらえます。きょう、いいピッチングができたのは兄のおかげ」と笑顔で答えてくれました。

最後にまたパナソニックの写真を。記念撮影の右半分です。前列左が北口監督。
最後にまたパナソニックの写真を。記念撮影の右半分です。前列左が北口監督。
こちらが左半分です。前列右端が田中キャプテン。
こちらが左半分です。前列右端が田中キャプテン。

 試合は見られた?「携帯のテレビで。タイガース戦だから何とか勝ってくれないかなと思っていたので、よかったです」。何か言葉を送った?「ナイスピッチングとだけ。兄が投げた日は僕から連絡を入れます。愛想のない返事しか来ないけど(笑)。僕は兄が投げるのをテレビで見られるから」

 都市対抗は全試合テレビ中継があるので、宏樹くんの投げるのも見てもらえますね。「そうですね。それに親も、東京と埼玉なら両方行けると喜んでいます」。なるほど、大会の後半にはメットライフドームで西武の試合が組まれているので、ぜひ両方のタイミングが合いますように!

 番外編のおまけです。兄弟つながりで阪神の江越大賀選手(25)の弟・江越海地選手(24)が所属する三菱日立パワーシステムズ(横浜市)も、西関東2次予選の第2代表として3年連続10回目の本戦出場が決まりました。海地選手をはじめ、もと阪神の野原将志さんが3年間いた三菱重工長崎で一緒にプレーしていた選手が統合によって多く在籍しています。昨年は残念ながら5月末から9月中旬までファームだった兄・大賀選手ですが、ことしはぜひ1軍で、うまく重なる横浜遠征に参加してください。

    <記載のない写真は各チームより提供>