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5月は福永春吾投手の季節!プロ初完投、初完封で自身3連勝《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
22日のウエスタン・オリックス戦で“プロ初完投初完封”!阪神・福永春吾投手。

 きょう23日に鳴尾浜で予定されていた、ウエスタン・オリックス戦は朝8時すぎに中止となりました。もともと雨予報だったものの、降り出したのはそんなに早朝ではなく、ただ午後も予報が悪かったこともあったのでしょう。そして甲子園の1軍・ヤクルト戦も中止。きのう倉敷で勝って勢いに乗っていきたかったところだけに、残念で退屈な夜ですね。

 5月は9勝3敗1分けと好調なファームも、得意なオリックス相手に貯金を増やしたかった…というより、投げなくてはならない投手陣が多いので流れると困ります。22日は福永春吾投手1人で投げ切っちゃいましたしね。いや、いいことですよ。なんたって本人にとってプロ初完投、初完封ですから!

 なお投げ合ったオリックス・ディクソン投手も最後まで代わらなかったので、両者完投です。ディクソン投手は3失点ですが、被安打は4で福永投手より少なく、しかも自責点0でした。

9イニングでは今季リーグ初完封!

 この2投手を加えて、今季ウエスタン・リーグで完投したのは4人(ディクソン投手は2度目)。他に中日のR・マルティネス投手と阪神の望月惇志投手がいます。そして、完封勝利は望月投手と福永投手の2人だけ!望月投手が4月24日、雨のナゴヤ球場で投げた中日戦は降雨コールドゲームになったため、5イニングでの完封でした。よって今回、福永投手の9イニングで完封勝利というのは今季リーグ一番乗りですね。

 ちなみに阪神の完投は昨年が青柳晃洋投手のみ、2016年は守屋功輝投手と望月投手の2人、2015年も岩崎優投手と横山祐哉投手の2人です。その前は秋山拓巳投手が毎年のように完投や完封を記録しており、2014年から2012年までは3シーズン続けて完投と完封1試合ずつ、2011年は1完封です。2012年には別に、9回まで投げ延長突入で交代というのもありますね。この2012年は4投手が計7度の完投!二神一人投手、秋山投手、岩本輝投手が揃って2完投(1完封)、清原大輝投手が1完封という内訳でした。

 チームの状況によって、完投可能であっても登板させたい投手がいたりするので、一概に先発投手の調子云々とは言えません。でも最後まで投げるチャンスをもらったことに、福永投手が誰よりも感謝しているでしょう。もちろん見ていた我々も、9回のマウンドへ送り出してくれたチームに、お礼を伝えたいくらいです。

両チームとも先発投手のまま試合が終わったスコアボード。14時40分という時計にもビックリ!
両チームとも先発投手のまま試合が終わったスコアボード。14時40分という時計にもビックリ!

4安打で3得点の勝利です

 では試合を振り返りましょう。18日に登録を抹消された西岡剛選手と、21日抹消の俊介選手が、この日から出場しています。その2人が1番と2番で、初回得点の足がかりを作りました。

《ウエスタン公式戦》5月22日

阪神-オリックス 10回戦 (鳴尾浜)

 オリ 000 000 000 = 0

 阪神 300 000 00X = 3

◆バッテリー

【阪神】○福永(2勝1敗)/ 坂本

【オリ】●ディクソン(1敗)(8回) / 伊藤

◆本塁打 北條3号2ラン(ディクソン)

◆打撃  (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]二:西岡  (3-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .333

〃二:森越  (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .216

2]指:俊介  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000

〃打指:今成 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .200

3]左:高山  (3-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .308

4]三:陽川  (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .217

5]遊:北條  (2-1-2 / 0-1 / 0 / 0) .226

6]一:西田  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .259

7]中:緒方  (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .206

8]捕:坂本  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .304

9]右:島田  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .240

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

福永 9回 113球 (6-3-1 / 0-0 / 4.20) 148

《試合経過》※敬称略

まだ心とカメラの準備ができていない1回の攻撃。北條選手が2ランを打って戻ってきたところでようやく…。
まだ心とカメラの準備ができていない1回の攻撃。北條選手が2ランを打って戻ってきたところでようやく…。

 まず打線は1回、先頭の西岡が初球を打って三塁方向へ。ファウルかと思いきや、そのまま左翼線へのヒットとなりました。俊介はショートのエラーで無死一、二塁。続く高山が中前タイムリー!二塁から西岡が生還して高山も二塁へ進み、2死後に北條が初球を左中間へ3号2ラン!この回3点を先取しました。でも得点シーンはこれだけです。

2試合続けて好投、この試合が大きな意味を持つと福永投手も思っていたでしょう。
2試合続けて好投、この試合が大きな意味を持つと福永投手も思っていたでしょう。

 2回は先頭の緒方がセカンドのエラーで出るも、牽制で挟まれてアウト(記録は盗塁死)になるなど3人で終了。3回は三者凡退。4回は北條の四球のみで、アウトは3つとも三振。5回、6回、7回は三者凡退(5回と6回は2三振ずつ、7回も1三振)。8回も4球でサクッと2死になりましたが、途中出場の森越が右前打!1回以来のヒットです。しかし代打・今成の三振で追加点なく終わっています。

 中10日での登板となった先発・福永は1回、2回を三者凡退と上々の立ち上がり。3回に先頭の吉田雄の中前打されたのが初めての走者です。しかし後続を3人で片づけ、笑顔でベンチへ(この笑顔には理由があります。試合をご覧になった方はおわかりでしょう。詳しくは次の記事で)。

完封勝利!リードした坂本選手(右)、ファーストの西田選手(左)とまずハイタッチ!
完封勝利!リードした坂本選手(右)、ファーストの西田選手(左)とまずハイタッチ!
9回に好守備を見せたセンター・緒方選手もこの笑顔です。
9回に好守備を見せたセンター・緒方選手もこの笑顔です。
最後は高山選手(左)がレフトフライをつかんで試合終了!島田選手のランニングキャッチは撮れなくてすみません。
最後は高山選手(左)がレフトフライをつかんで試合終了!島田選手のランニングキャッチは撮れなくてすみません。

 4回は先頭の2番・岡崎に右前打、次の西村にも左翼線へうまく運ばれました。中島の右飛で1死一、三塁となり、マレーロへの四球で満塁のピンチを迎えます。そして6番・小島にカウント2-1からの4球目を打たれるも、これが二直!捕った西岡から北條に送られて併殺。この回の17球が、すべてのイニングの中で最多です。

 ピンチをしのいだ福永は5回を三者凡退に切って取り、6回は先頭・根本の1安打のみ。7回は先頭のマレーロに、入ったかと思うような中飛を打たれてヒヤリとしますが三者凡退。自身プロ初体験の8回もマウンドへ上がり、1死後に杉本の左前打を浴びるも他はフライ3つで0点に抑えています。

 そして9回。まず西村はライナー気味の右飛で島田がランニングキャッチ!続く中島は左中間へ大きなフライで、これも緒方が背走してナイスキャッチ!じゃあマレーロは左飛かな?と思ったら、福永の顔の横付近を通過する中前打。3人では終わらなかったですね。でも最後は小島を左飛に打ち取り、高山が少し動きながら捕球して試合終了!2時間8分という、非常に短いゲームでした。

完封を自信に、より上を目指してほしい

 矢野燿大監督は福永投手について「結果、9回までいけたのは自信になる。完封は、なおよかった。これで3連勝かな?最初は苦しんでいたけど、上がってきてくれた。自信にして、より上を目指してほしい」と評価し、そのあと「まだ、きょうのピッチングのまま1軍に上がって勝てるかというと疑問だけど。だから自信にして、反省もして」と続けました。

9回のマウンドに上がった福永投手。投球練習を始めるところです。
9回のマウンドに上がった福永投手。投球練習を始めるところです。

 反省点は?「ツーシーム、チェンジアップで、はっきりとボールになったのが多い。勝負にいって終わらせるか、それが生きて次の真っすぐで抑えるか、そういうところがまだ足りない。あとはランナーを背負ってのクイック。上で勝つためには、もうちょっと改善が必要かな。だいぶ押し込む場面も出てきたし、しっかりファウルを取れる部分もある。はじめの頃は前へ飛ばされていたけどね」

 3試合続いた好投、しかも完封。自信を持っていいですよね?「もちろん、もちろん。ゼロに抑えるのはすごくいいことだし、投げきれたのは何より。1点完投もいいけど、完封というのがね。自信にしてもらいたい」

キリキリ舞いの打線だったけど…

 そして「打つ方では北條選手が…」と言いかけた男性記者に「それしかないやん(笑)。他におらんやん。キリキリ舞いやん!」と3段階で返す矢野監督。苦笑いしながらも、すばやいツッコミぶりでしたね。さすが。

2ランを放った北條選手を迎えるベンチ。左は矢野監督です。
2ランを放った北條選手を迎えるベンチ。左は矢野監督です。

 1回に高山選手が先制打、なおも2死二塁で左中間へ2ランを放った北條選手です。矢野監督は「いつも言っているけど、上ではみんな4打席なんてないし、1打席しかもらえないであろう中、最初の打席で、しかもファーストスイングで決められたのは、すごく価値がある。ジョーもなかなか数字が上がってこないけど、一つ一つの内容はいいものが多いから」と、初球をとらえた1発に価値があると言います。

 「1、2軍の入れ替えが激しいし、チャンスが近づくような内容になってきた。最初の打席は見事やったし、あともついていけている。打ち方的には悪くない。中谷も行ったしね。頑張っていれば、チャンスは来るんちゃうかな」

「コントロールがよくなった」と実感

 プロ初完投、初完封の福永投手。これまでの最長イニングが7回だったので、8回も初です。完投、完封はいつ以来かと聞かれて「独立リーグで。最後の年か前の年か…。あ、最後の年にやっていますね、完封」と記憶を呼び起こしていました。

3回、初ヒットの吉田雄選手を一塁に置いて、伊藤選手から空振り三振!
3回、初ヒットの吉田雄選手を一塁に置いて、伊藤選手から空振り三振!

 試合について「序盤はわりと真っすぐ、スライダーの速い系統で攻められた。後半はカーブ、チェンジアップが増えてきて(バッターに)気持ちよく振らせず、若干くずれていた分、外野を越えなかったと思います」と振り返り、加えて「序盤に真っすぐが走っていたのが一番よかったです」とのこと。

 プロに入って一番のピッチング?「うーん。去年のジャイアンツ戦(ファーム交流試合)もよかったので。でも、コントロールがよくなったなあというのを一番思いますね!」。こちらが聞くまでもなく、自分で言ってくれましたよ。1年前と比べて、よほど実感したんでしょうね。

4回表、初めての連打を許して「あー!」という表情を見せました。
4回表、初めての連打を許して「あー!」という表情を見せました。

 6安打のうち連打は4回の一度だけ。唯一のピンチもそこでした。「4回も球はよかったので。もっとリズム、テンポ、バランスを考えるようにしたら、うまく間合いとか噛み合ってきました。このピンチを乗り切ったら、また流れが来ると思って、しっかり1人ずつ」。前回の試合後に「前の1球、次の1球と考えすぎていたのをやめた」と話していたのですが、今回も?「はい。配球は考えますけど、それ以外は。打たれても切り替えて」

1イニングずつの積み重ね

 ところで、最初のヒット(3回の先頭に中前打)を許した時、かなり悔しがっていたのでは?「あれは捕れたなあ!と思って」。なるほど、自分が捕球できたのにという悔しさで、ノーヒットノーランを狙っていたわけではなかったみたいです。他にもそういう打球が多かったような。「そうですね。捕れたらよかったんですけど」

ヒーロースピーチ中の福永投手。その内容は次回に。
ヒーロースピーチ中の福永投手。その内容は次回に。

 次に向けての課題として「変化球をもっと低めに投げること。追いこんでからは、もっと低く投げきれるようにしたい」と話す福永投手ですが、全体的に低めのコントロールはできていたと思われます。さらに、ということでしょうね。

 最後まで行くというのは、どのあたりで告げられた?「いえ、投げ終わる度に(高橋)建コーチから『次、先頭をしっかり!』と声をかけられて。それで、8回が終わって戻った時も『次、先頭をしっかり!』と言われたので、ああ最後も行くんやなと思いました」

 ちなみに、試合後のヒーロースピーチも福永投手です。その中身は次の記事に書きますので、お待ちください。

1軍へ、次は自分が!という気持ちで

唯一のピンチだった4回1死満塁で二直併殺!セカンド・西岡選手(左)とショート・北條選手(右)。
唯一のピンチだった4回1死満塁で二直併殺!セカンド・西岡選手(左)とショート・北條選手(右)。

 この人も、もしかしたら途中でヒーロースピーチのネタを用意すべき?と考えたかもしれませんね。最後は北條史也選手のコメントです。1回にディクソン投手の初球(145キロ)を左中間へ。11日に、やはり福永投手が先発した中日戦(鳴尾浜)以来の今季第3号2ランでした。「みんながつながったんで、変化球を狙うか迷ったんですけど、シンプルに真っすぐのタイミングでいこうと思って」

 初球を一発で仕留めたことを矢野監督は評価しています。「それがファームの全体的な課題なので。初球からガンガンいって、それをファウルにせず、きょうはいい結果になってよかった」。タイミングがうまく取れている?「初球からいくにも打席に入る前の準備とか、積極性とか。ただ単に打つんじゃなく、準備した上での積極性を心がけてやっています」

試合後に整列した時の北條選手。いい笑顔です。
試合後に整列した時の北條選手。いい笑顔です。

 凡打の内容もよくなってきたのでは?「4月の、最初の頃よりはマシになっていますけど、もっと打って打率を上げていかないと1軍に行けないので」。中谷選手が昇格したことも刺激になる?「最近入れ替わりが多いので、次は自分が行くっていう気持ちを忘れずにやっていきます」

 ※次の記事では、ここで書ききれなかった内容を“こぼれ話”としてご紹介しています。→<「マウンドで スピード違反 罪はなし」 福永投手が披露した一句です。>

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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