藤浪投手の粘投と北條選手の3点二塁打!しかし17年ぶりの9連勝はならず《阪神ファーム》
きのう15日から阪神は1軍が甲子園、ファームが鳴尾浜と、約1か月ぶりに“親子”で本拠地開催の3連戦です。その初日、鳴尾浜のウエスタン・ソフトバンク戦には1軍から山崎憲晴選手、伊藤隼太選手、大山悠輔選手の3人がやってきました。先発も藤浪晋太郎投手とあって、スタンドは平日ながら入場制限される盛況ぶり。取材陣も多かったですね。
5月1日と3日、タマスタ筑後でソフトバンク戦に連勝して首位に立った阪神ファーム。その前後も合わせ、14日現在でチーム10年ぶりの8連勝を記録しました。そして15日は藤浪投手が粘りのピッチングで6回1失点。同期入団の北條史也選手が6回に満塁の走者を一掃するタイムリー二塁打で逆転!しかし後半に再逆転を許してしまい、2001年7月以来17年ぶりの9連勝はならず…。2位・ソフトバンクとのゲーム差は1に、対戦成績は3勝6敗となりました。
久しぶりに聞けた「必死のパッチ」
一方、ナイトゲームで行われた甲子園のDeNA戦はメッセンジャー投手が好投し、6回に代打・原口文仁選手が先制の2点タイムリー!折れたバットで運ばれた打球が原口選手の執念で方向を変え、フェアゾーンに戻ったかのような当たりでしたね。これが鳴尾浜と同じ6回2死満塁で、そのあと追加点がなかったのも同じ。違うのは、再び引っくり返されずに勝ったこと?
とにかく、久しぶりに原口選手の「最高です」と「必死のパッチ」が聞けてよかったですね。2年前に比べると、少し落ち着いた感じ?(笑)。そのあと車からスタンドへ手を振っている時、ちょっとウルウルしていたような。気のせいでしょうか。パパになって初めてのお立ち台、思うところがあったのかもしれません。
なお昨夜の試合は、寮生の6人(福永春吾投手、熊谷敬宥選手、島田海吏選手、望月惇志投手、才木浩人投手、浜地真澄投手)が生観戦しました。「勉強してきます!」と気合十分だった福永投手も、しっかり何かを吸収してきたと思います。ぜひ次の登板に生かしてください。
連勝は止まったけど“同期コンビ”がいい仕事
では、残念ながら逆転負けで連勝はストップしてしまいましたが、きのう15日のウエスタン・ソフトバンク戦の詳細をご紹介します。
《ウエスタン公式戦》5月15日
阪神-ソフトバンク 9回戦 (鳴尾浜)
ソフ 000 100 302 = 6
阪神 000 003 000 = 3
◆バッテリー
【阪神】藤浪-●馬場(1勝1敗)‐島本-松田 / 坂本
【ソフ】高橋純(4回)-渡辺健(1回2/3)-小澤(2/3回)-○大竹(2勝1S)(2/3回)-川原(1回)-S寺原(3S)(1回) / 谷川原
◆三塁打 ソ:牧原、川瀬
◆二塁打 神:北條
◆盗塁 ソ:明石(1)、長谷川勇(1)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]三:大山 (2-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .500
〃中:緒方 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .208
2]二:山崎 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 1) .500
〃走二:熊谷 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .210
3]中:伊藤隼 (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .167
〃一:西田 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .308
4]一三:陽川 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .209
5]遊:北條 (3-1-3 / 2-1 / 0 / 0) .219
6]右:中谷 (3-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .185
7]左:島田 (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .260
8]捕:坂本 (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .455
9]投:藤浪 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .000
〃打:小宮山 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .360
〃投:馬場 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
〃打:今成 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .235
〃投:島本 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
〃投:松田 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
〃打:岡崎 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .313
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
藤浪 6回122球(4-9-4 / 1-1 / 0.47) 153
馬場 1回 34球 (4-1-1 / 3-3 /13.50)146
島本 1回 16球 (0-1-0 / 0-0 / 7.27) 142
松田 1回 25球 (2-0-1 / 2-2 / 6.55) 147
《試合経過》※敬称略
先発の藤浪は1回を三者凡退で立ち上がり、2回は四球、3回も2死からヒットで走者を出しますが、要所を締め無失点。しかし4回、連打と暴投で無死二、三塁となり長谷川勇に2打席連続の四球を与えて無死満塁、川瀬の二ゴロの間に先制点を奪われました。2回、4回、6回は20球以上を要し、6イニングで122球を投げながら、9三振を奪う“らしい”内容です。
でも打線は静かで、1回に先頭の大山が左前打して山崎の犠打で二塁へ、2回は先頭の北條が四球を選んでピッチャーの牽制悪送球で二塁へそれぞれ進みますが、得点にはつながらず。3回と4回は三者凡退。5回は先頭の中谷が四球を選ぶも、盗塁死など3人で攻撃を終えています。
そして6回、大山が四球、山崎は左前打で1死一、二塁として伊藤隼の中前打で二塁から大山が生還!と思いきやバックホームされたボールでタッチアウト。筒井コーチらが「ボールを落としている」と声を挙げ、矢野監督も抗議(確認?)に出たのですが、落としたのはタッチ後とのことで判定は変わらず。2死一、二塁でゲーム再開。
ここで交代した小澤から陽川は四球を選んで2死満塁となり、続く北條が初球の125キロのスライダーを見送り、2球目の138キロをとらえて打球は右中間を越える二塁打!山崎の代走・熊谷と伊藤隼、陽川が生還して3対1と逆転しました!
しかし、7回に登板した馬場が代打・西田に左前打され、牧原のタイムリー三塁打で1点差。2死後にグラシアルのタイムリーで同点。さらに四球に続いて川瀬のタイムリーで4対3と引っくり返されます。次の塚田を遊ゴロ(セカンド熊谷がはじいたものの、うまくショート北條の前へ飛んで送球)に打ち取って8人の攻撃が終了。
8回の島本は8番からではありますが三者凡退に切って取りました。ところが9回の松田が1死から明石の中前打され2死後、長谷川の打席で明石の二盗を許したあと申告敬遠。2死一、二塁として川瀬に右中間へタイムリー三塁打を浴び2点を追加されました。
なお打線は7回が1死から坂本の左前打のみ、8回は西田が左前打して暴投で二塁へ進むも後続を断たれて得点なし。9回は2死からまた坂本に左前打が出たものの、やはり無得点で反撃できず試合が終わっています。
「2試合続けて想像以上の内容」
試合後の談話をご紹介しましょう。まず矢野燿大監督は藤浪投手について「むちゃくちゃ悪いってことはなかった。この前(5月8日のオリックス戦)の方がよかったけど、最低限のことはできていた。“ストライクが入りません。自分と戦っています”というのではないから。俺はそんなに悪いとは思わない。もちろん、もっといいところを見せなあかんけど。晋太郎自身が、もっといいピッチングしたいと思っているだろうしね」と分析。
そして「自分と戦うことがこの2試合なかったので、手応えを感じているような気はした。2試合とも想像よりよかったよ。完全に外れるボールは少ないし、想像以上に投げられているかな」と繰り返した矢野監督。再昇格に関しては「1軍との兼ね合いもあるが、それを抑え込んでも晋太郎と言わせれば」と6年目を迎えた右腕に期待を込めました。
また馬場投手には「やっと投げられるようになったところで、まだまだ力が足りないかな。真っすぐをもっと投げないとね。これから同じバッターとどんどん当たっていくだろうし、先発なら余計に。あれだけ変化球をいって、最後に真っすぐを打たれるってのは真っすぐの力が足りないから」と、さらなる成長を促しています。
明確な意図を持った投球ができている
藤浪投手は、前回に続いて結果が出たことを振られ「それなり、ですかね。いい部分、反省するべき部分がありましたけど、まあまあそんなに自分の感触として悪くないですし、バランスよく投げられているのかなと思っています」と回顧。いろんな球種で三振も取れた?「そうですね。ゾーンにまとめながら、いろんなボールを使いながらってとこで、配球のバランス的にはうまく投げられたんじゃないかなと」
2試合続いたことで手応えも?「いい感じでは投げているので。使われる、使われない、呼ばれる、呼ばれないは上の判断ですし、“確証が持てないと”って言われている以上、しばらくこっちでしょうし。そんなに焦らずにというか、自分のやるべき課題とかにしっかり取り組んでいけばいいんじゃないかなと思います」
次への課題は?「フォアボールが4つあったんですけど、長谷川さんの2つめと塚田さんへのフォアボールに関して言えば、特に内容の悪いものじゃないですし、無駄なフォアボールではないと思っています。残り2つは、ちょっともったいないかなーというか。そのへんはコントロールのいいピッチャーじゃないんで仕方ないですけど、もうちょっと減らせれば。極力なくしていければと」
矢野監督は「自分と戦っているマウンドではなかった」と。自身でもそう感じた?「そうですね。迷いなく、どっちかと言うと攻めの姿勢で“こうしたらダメ、ああしたらダメ”というんじゃなくて、次はどうやろうという気持ちで投げていけているので、そのへんはすごくいいことかなと思う」
無死満塁でもプラス思考で?「そうですね。落ち着いていて、ある程度ああしたい、こうしたいという気持ちもありますし、しっかり意図を明確に、意図のある投球ができているのかなと自分では思っています」
悔しさを受け止めて次へ―
7回に登板して負けがついてしまった馬場投手は「組み立てだったり、まずストレートを押し込む力、そういうのを振り返って、ストレートでカウントを取れたり、空振りを取れたりできなかったのが苦しかった」と言っています。また「もっともっとコントロールを磨いていくのも大事だけど、まずはストレートの質ですかね。そこは大事にしていきたい部分でもあります」と、さらに実感した様子。
あとは配球というか組み立て方?「ほしいところでストライクを取りきれず、苦しいカウントになってインコースに入れて連打されたり、初球の入りが甘かったり。きょうは勉強になりました。もう次はこういうのを作らないよう、同じミスを繰り返さないように成長しないと。きょうはきょうで悔しいですが、受け止めて次は抑えられるように頑張ります」
「北條らしい」と矢野監督
次に北條選手です。矢野監督は満塁の走者を一掃する二塁打に「北條らしいね。最後のところも期待したけどね。ああいう風に、センター方向にしぶとく打っていけるバッターになっていくべきやと思うし、ああいう場面、状況、結果、打球と全部よかった。率はめちゃくちゃ上がって来ていないけど、内容ある打席が増えてきているから」と評価しました。
また「ライナーが正面だったり、ヒットと言っていいのがエラーついたりとか、北條の場合多いんで。そういうところから手応えというか、つかんでくれれば」と期待しています。
本人は「何もないですよ。試合に負けたから」と取材を辞退したのですが、それでも一時は逆転の3点タイムリーだと言ったら「初球のスライダーが、ちょっとインコースよりだったやつを打てれば一番よかったんですけど、でも次の球を仕留められたのはよかったかなと思います」と振り返ってくれました。
次の8回2死二塁で、もう1本ヒットが出ればなおよかった?「あそこで左ピッチャーからもう1本打てたら最高でしたけど、そこはまだまだ自分のダメなところなので、これからも頑張ります」
ちなみに6回が終わったところで、試合後のヒーロースピーチのことはチラリと頭をよぎった?と聞いてみたら「考えました(笑)。でも何もないなあと思って」との答え。なるほど。じゃあ整列する時にまた捻り出そうってとこだったんですね。次を楽しみにしましょう。
ワンバウンドでの走塁は任せろ?
最後は西田直斗選手。まだ復帰して打席数も少ないので、打率は試合ごとに1割くらい上がったり下がったりしますが、この日も8回の1打席のみで左前打しました。そして次の陽川選手への3球目がワンバウンドになった時、果敢に二塁へ!「結果は暴投ですけど、僕にとっては盗塁かも」と笑います。セーフになった時はベンチの歓声がすごかったと言ったら、また白い歯がこぼれました。
「ワンバンやったら足が遅くても行けるから。ガチンコで勝負したら負けるけど、相手のクセを見たりとか、変化球で走ったりとか」
ことしの“超積極的”という方針は、自ら足が遅いと申告する西田選手の意識をも変えたようで「ワンバンと偽走だけは頑張ろうと思っています!人より走れない分」と胸を張りました。
それで相手にプレッシャーを与えれば、こっちのもんですからね。矢野監督が説くように、すべての選手が進塁の意思を見せることは大きな戦力と言えるでしょう。西田選手が塁に出た時も、いえ出た時はシャッターを押す準備をしっかりしておきます!
<掲載写真は筆者撮影>