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阪神タイガース・福永春吾投手 甲子園のマウンドに残してきた課題を解くのは自分自身

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
10日に先発した福永投手。鳴尾浜も星野仙一さんを追悼し、全員が「77番」でした。

 四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスから入団して、ことし2年目を迎えた福永春吾投手(23)。昨年2月、安芸キャンプ最初の対外試合だった四国銀行戦で初登板すると、ウエスタン・リーグ開幕後は先発として4月末までに3勝を挙げました。そして5月6日に1軍昇格!甲子園の広島戦で初登板初先発となったのですが…4回10安打6失点で5回途中交代という苦いデビューだったことは、皆さんも覚えていらっしゃるでしょう。

 再昇格の機会がなく、リベンジを今季に持ち越した福永投手は「フェニックスくらいから、ふっ切れました。でもシーズン中はかなり考えていた。いろいろと。もう一度上がりたいと思うあまり、結果を追い求めてしまったのかもしれません。結果が出ないから悩んでいたのかも…」と振り返ります。

 高橋建投手コーチも同じく「去年もこの時期、そう悪くなかったんですよ。でも1軍に上がった時が分岐点になった。課題が出て、課題のまま終わってしまった。それから自分でフォームチェックとか色々して、自信を取り戻したのかな。それが、ことしはすごく見える。真っすぐで勝負したり、プラス思考の言葉に表れている。物事がプラスに動いていますね」と分析しました。

 伝え聞いた福永投手は「建さんには、バッターからすると“嫌じゃないボール”が多いという話があって、それは次に生きてこないボールだったんだと思います。でも、よくなってきたってことですよね?」と少し嬉しそうです。高橋コーチの言葉でわかるように、2月の春季キャンプをとても有意義に過ごしたと思われる福永投手。充実していたかと聞いたら「かなり!」と即答でした。

「100点満点だった」キャンプを回顧

今季キャンプ初実戦の前日、ブルペンで福原コーチ(左手前)からアドバイスを受ける福永投手(右)。左奥は矢野監督。
今季キャンプ初実戦の前日、ブルペンで福原コーチ(左手前)からアドバイスを受ける福永投手(右)。左奥は矢野監督。

 では矢野燿大監督から投手部門のMVPに選ばれた安芸キャンプでの話をご紹介しましょう。打ち上げの日も監督からMVPというのは聞いていなかったようで、伝えた瞬間にパッと顔を輝かせて「嬉しいです!」と素直な反応。ことしキャンプで取り組んだ大きなテーマは「フォーム的なことで、それを1か月で自分のものにすること」だったと言います。

 「初めて実戦で投げる時(12日・ハンファ)は、メチャクチャ不安でしたね。ストライク入るかな?変化球は大丈夫かな?と。その1試合目、真っすぐはよかったけど変化球が抜けていたので、2試合目の春野(17日・西武)は、そのフォームで変化球をしっかり投げられるように。あとはスピードと力強さだと思っていました。それで最後のゲーム(25日・JR四国)は真っすぐの強さだけにこだわって投げたんです。初球から」。はい。いきなり146キロ、147キロでしたね。

 「たとえカウントが悪くなってバッターが真っすぐを待っていても、真っすぐを投げてファウルを取らないと。ファームでかわすようなピッチングをしても上では通用しないから。自分の真っすぐで押し込めるよう、ブルペンでもかなり投げました。変化球はカーブ5球だけで、あと全部真っすぐっていう日もあった。70球のうち変化球ちょろっと、とか。キャンプに入ってから、真っすぐだけでブルペン(のピッチング)を終えるなんて、なかなかないですよね」と少し笑います。

行動目標を持って練習すること

ことし新しく作ってもらったというバットケース。
ことし新しく作ってもらったというバットケース。

 キャンプの休日はどんなふうに過ごしましたか?「ことしはタイミングよく試合で投げた後に休みがあったから、うまく回ったと思います。登板後にかなりウエートとかやって練習の強度を上げて、休みの日は完全に疲れを取るという感じで。投げきって、休みは休んで、また次の日からと、しっかり練習に波が作れた。上げっぱなしだと落ちていく、波を作りながらいった方がいいって聞いたからです」

 キャンプインからガンガン投げていましたね?「最初のクールは4連投しました。4日目はもうボールがヘロヘロで(笑)。どうなるんやろと言われたけど、バッピ(打撃練習の登板)との兼ね合いやフォームなど、自分がやりたいこともあったんで」。こういうのはルーキーイヤーと違い、やはり2度目の春季キャンプだからこそでしょう。

 「“行動目標”みたいなものを持って、きょうは何をすると考えながらやりました。チームの練習はもちろんしっかりやってから、個別練習を自分の考えでやる。ことしのキャンプは練習の中で個別の時間をちゃんと作ってもらっていたので、プラスアルファのところを考えて練習できました」

キャンプ同様に継続すること

自分で持ってもらって撮影(かなりピントが甘い…)。すると矢野監督から「よっ!二刀流」の声が。
自分で持ってもらって撮影(かなりピントが甘い…)。すると矢野監督から「よっ!二刀流」の声が。

 たとえばどんな目標?「これとこれをしていたら大丈夫っていうのを、毎日持ってやっていました。フォームはここを意識して投げる→達成できたら結果につながる→きょうはうまく結果になった、というふうに。一日の中で、あしたやりたいことを考える。最初は結果、その結果を出すために何をすればいいか書き出して、そのことだけを考えるという感じです。そうやって結果が出たと思います」

 計画通り進んだわけですね。「キャンプはたまたま、うまくいったと思います。うまくいかない日も、もちろんありました。ブルペンでボロボロだったとか。その中で、個別練習にシャドーピッチングをやったりしたらフォームに集中できる。ピッチングだと結果が見えてしまうから、自分の行動目標への意識が薄れてしまうと思って」

 そして「ことしのキャンプは100点満点です。自分の思ったこと、やりたいことがかなりできました」と振り返った福永投手。キャンプが終わっても継続しますか?「結果を出さなければいけない立場で、それは一番思うことですけど。結果、結果とそればっかりになって、今までやってきたことがブレブレになる。今後も個別の時間をうまく考えてやっていきたいです。キャンプと同じように」

おもしろいカーブを生かすこと

 なおキャンプが始まる前、矢野監督から「1か月の間に自分がシーズンで戦える準備をして、これっていうものを確立した方がいいと言われました。2人の時に」とのこと。キャンプ中、矢野監督が「いいね、おもしろいね」と評価していたカーブの話を聞いてみると「最後のブルペンでも、カーブも決め球になるんやから、自分のピッチングの幅が広がるから、と言われた」そうです。

 おもしろいというのは?「なんか違うらしい。って他の人のカーブも打席に立たないからわからないんですよ。比較できないんで…」。それはそうですね。「安藤コーチからもカーブでカウントが取れるので決め球になるし、決め球に持っていけるという話があったのと、(岡崎)太一さんや板山さんには『カーブも有効』と聞きました」

これは2月17日、西武との練習試合(春野)で投げた写真です。
これは2月17日、西武との練習試合(春野)で投げた写真です。

 それはどのように?「追い込まれてからカーブって、あまり頭にないはずだと。唯一カーブが真っすぐの軌道から外れるので、顔が上がってしまう。次の真っすぐで戻せない。追い込んでからカーブを投げられるのは強みになる。しっかり投げられたら、それで打ち取れるし、次のボールがより有効になる、ということです」。じゃあ実戦で生かしていきましょう。「はい。これから試合でカーブをしっかり投げられたら。カーブが使えるとわかったので」

打たれるところに投げてしまった反省

 キャンプが終わり、すぐに始まったファーム教育リーグ。最初は3月3日と4日、タマスタ筑後で行われたソフトバンク戦でした。福永投手は2戦目に先発し、4回を投げ9安打5失点と見事な打たれっぷり。1回は牧原選手を変化球(フォーク?)で空振り三振といい滑り出しだったと思いきや、そこから3連打で1失点。2回は連打があった中で0点に抑えたのはいいけど、3回は四球と連打で1点、1死を取ったあとにタイムリー三塁打(しかもルーキー周東選手に)など、この回3失点。4回は三者凡退です。

 「ボール自体はメッチャよかったんですけど…」。ですけど?「バッターのスイングゾーンに、みんな集まってしまって。真っすぐも、スライダーも、カーブも、チェンジアップも」。テレビで見た限り、そんなに球が高いとも思えなかったけど。逆にコントロールよすぎたとか?「バッターの目線が全部そこにあったみたいで。勝負球の変化球も“目付け”がそこにあり、ワンバウンドを振らないから少し上げて勝負したところで打たれた」と福永投手。

 「試合後、福原コーチから『最初にもっと高めのボール球で目線を上に持ってきて、高さのゾーンを上げておけばよかった。ゾーンで空振りってのはなかなかないから、いかにボール球をストライクに変えられるか、じゃないか』と言われました。速い真っすぐでファウルさせてもストライク、低めのボール球を振らせるのもストライク。でも、あの日はストライクのストライクを投げてしまった。バッターの目線を変えさせられなかった」

前回と今回の課題もクリア

10日の香川戦で先発。5回で8三振を奪いました。
10日の香川戦で先発。5回で8三振を奪いました。

 次は10日、四国アイランドリーグplus・香川オリーブガイナーズとの交流試合で先発しました。5回を投げ2安打8三振3四死球という内容で、なんと103球も投げています。そのうち2回が25球、3回は23球、5回は29球ですからね。なお詳しい内容と5回の野選についてのコメントは、前の記事でご覧ください。→<阪神ファーム・矢野監督が受け継ぐ「厳しくて、思いっきりやさしい」星野イズム>

 試合後のコメントはこちらです。「きょうは左バッターに対して外のスライダーでカウントを取ること。カーブで三振というか、勝負球にカーブを使うこと。この2点を課題に投げました。両方ともできたと思いますけど、きょうは何とか0点でよかった、という感じですかね」。また次の段階で課題があるんでしょう、きっと。

 5回で8奪三振でした。「8個ですか。けっこう取っていますね。いいところに決まっていました。甘くはなかったです。狙ったところに投げられたので、そこはよかったと思います。前回は振ってくれなかった。相手が違うけど、そこをどう振らせるかと考えていて、今回は振ってくれたんで」。ちなみに4回の3者三振はチェンジアップ、カーブ、スライダーだったそうです。

星野仙一さんは「小学1年か2年の時に阪神の監督だった。怖い人だなあという記憶が…」と福永投手。それはもう、だいぶ柔らかくなられた頃ですけどね。
星野仙一さんは「小学1年か2年の時に阪神の監督だった。怖い人だなあという記憶が…」と福永投手。それはもう、だいぶ柔らかくなられた頃ですけどね。

 4日のソフトバンク戦での反省は生かした?「はい!インハイとか攻めて、ボールになる球もあればファウルもあったり。相手バッターを窮屈にさせて、最後につなげられたので。ちょっとずつですけど」

 矢野監督は「きょうの福永は、いいのと悪いのがハッキリしていたね。でも一球一球のボールは去年より確実によくなっている。試合になれば色んなことが入ってくるので、そのレベルをもうワンランク上げていかないと」と話しています。安芸キャンプのMVP投手にも早くチャンスがきますように!

監督にはまず「どうや?」と聞かれる

 ところで、矢野監督が選手にかける言葉をこれまでも書いてきました。守屋功輝投手は「継続やで」という声が指標になっていること。緒方凌介選手に聞くと「続けていればチャンスはあるから頑張れといつも言ってもらった」と。福永投手も「このイニングはどうだった?と聞かれて、自分ではこう思ったと答えたら“そやな”って感じですね。ブルペンでも、まず“どうや?”と聞かれる」

 この「どうや?」の問いは、他の選手やルーキーに対しても同じだそうです。キャンプ中、シート打撃で投げた高橋遥人投手に何か声をかける矢野監督を見て、どんな話を?と尋ねたら「会話というより、質問をした。まず聞かないと、こっちが決めてかかるのはよくないから。どう思って投げた?とか、いま走ったのはどういう考えで?とか質問をする」という答えでした。その「どうや」に、選手が「こうや」と伝えるわけですね。

昨年の写真ですが…1軍から戻ってきて最初の登板で先発し、4勝目を挙げた福永投手。
昨年の写真ですが…1軍から戻ってきて最初の登板で先発し、4勝目を挙げた福永投手。

 「矢野さんには、いつもしっかり見てもらっていると思います。自分がどうなっていくべきなのかという話や、自分の投げる1球1球に意図を持て、とも言われました」と福永投手。最後に今季の目標をどうぞ。

 「1軍で活躍すること。しっかり活躍するのを見てください!」

 これはファンの皆さんへのメッセージとしてきたものですが、矢野監督やコーチ陣への言葉でもあるでしょう。去年、甲子園のマウンドに残してきた課題を福永投手が自分自身でクリアする日はいつか、みんな楽しみに待っていますよ。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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