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「インタビューの邪魔者、アメリカンノック、お茶目なメンデスなど…」宮崎こぼれ話《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
15日のアメリカンノック、陽川選手(左)の捕球にバツを出す山田コーチ(右)。

 2日から、高知県の安芸市営球場で始まった阪神タイガースの秋季キャンプ。同時に鳴尾浜球場でも、矢野燿大新監督のもと秋季練習がスタートしました。安芸には1軍の監督とコーチ陣だけでなく、ファームから藤本敦士コーチ、福原忍コーチ、そして新井良太コーチも参加しているようですね。

 テレビのキャンプ中継では、フェニックスリーグ最終日に宮崎から高知へ向かうトラックに荷物を積んだ選手たちが、日焼けした顔でバットを振り、走っている姿が見られました。安芸もかなり暑そうで!そんな中でみっちりと鍛えている様子ですが、もちろん鳴尾浜でも同じ。残留組の選手にとっては、安芸に負けてたまるかという気持ちがある分、もっと“熱い”かもしれません。

インタビューの邪魔をする面々

 さて、阪神の10年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた『第14回みやざきフェニックスリーグ』。きょうは“こぼれ話”をご紹介します。第2クールの10月15日、DeNA戦は11時に中止が決まり12時から再び練習。その前にベンチで、西田直斗選手と北條史也選手のテレビインタビューが行われました。聞き手は田尾安志さんと男性アナウンサー。ちょうど暇を持て余していた選手たちが、次々と覗きにやってきます。

テレビインタビューを受ける西田選手(上)と北條選手(下)。右はどちらも田尾安志さんです。
テレビインタビューを受ける西田選手(上)と北條選手(下)。右はどちらも田尾安志さんです。

 テレビカメラの後ろから笑わせようと変顔をしたり、メンデス投手は口にタオルをくわえて正面に立ったり。真面目に答えていた西田選手も、思わず顔がにやけてしまい言葉に詰まります。その仕返しとばかり、北條選手の時に西田選手が黒いガムテープを切り取って貼った太い眉で登場!思わず吹きましたが、北條選手はあまり反応しません。すると今度はもっと太い眉にしてダメ押し。

西田選手からガムテープの太眉を借りてスタンバイする今成選手。この手をどければ…。
西田選手からガムテープの太眉を借りてスタンバイする今成選手。この手をどければ…。

 さらに今成選手までガムテープを眉に貼り、それを隠しておいてパッと見せる(「いないいないばあ」の要領)パフォーマンス。これ、さすがですね。ちょっと北條選手の頬が緩んだ気もします。最後は、わけのわからないまま鼻の下と顎にガムテープを貼られた板山祐太郎選手も登場。でも無反応だった北條選手は終了後に「板山さん、おもろないです」の一言。確かに板山選手のつけヒゲ、ものすごく似合いすぎて逆に笑えませんでしたね。

 これらのガムテープパフォーマンスはしっかり写真に撮ったのですが、皆さん「載せないで」ということだったので文章だけでご勘弁ください。何とか雰囲気は伝わったでしょうか?

声と打球が飛ぶアメリカンノック

 この日は中止が決まったものの、それ以降あまり雨が降らなかったので、外野を使ってのアメリカンノックが行われました。野手も投手も一緒に前半と後半に分かれ、投手は10本捕り、野手は20本捕りのノルマだったようです。

アメリカンノック開始直後の様子。まだ余裕が…いや、もう既にキツそうな人もいる?
アメリカンノック開始直後の様子。まだ余裕が…いや、もう既にキツそうな人もいる?
打ち続けの筒井コーチに水を手渡す才木投手。向こう側では望月投手が藤本コーチに。
打ち続けの筒井コーチに水を手渡す才木投手。向こう側では望月投手が藤本コーチに。

 ノッカーは守備走塁担当の筒井壮コーチと藤本敦士コーチ。外野フライを打ちながら「こらこら、まだこっち見るな~!前を見て走らんかい」とか「田面はいいねえ、いい走り!見ていてアドレナリンが出るねえ」とか、大きな声が飛びます。前半グループの原口文仁選手がなかなか終わらず、後半グループに食い込んでようやくノルマを達成しました。

 その頃から、室内練習場で連続して早打ちのティーバッティング(連ティー)に立ち会っていた監督代行の山田勝彦バッテリーコーチも合流。ギリギリで捕球できなかった原口選手や陽川尚将選手らに両手でバツを出すシビアな判定で、選手たちはその場にばったり倒れて起き上がれません。

 

「腕を振って走れ~!」と言われる才木投手。グラブをしていたら振りにくい?
「腕を振って走れ~!」と言われる才木投手。グラブをしていたら振りにくい?

 山田コーチがかける言葉に、見ている我々は思わず笑ってしまいます。たとえば「福永、全身を使いすぎや!」。確かに福永春吾投手、頭のてっぺんから足の先まで力が入った走りに見えました。また才木浩人投手には「腕を振れ~」、さらに「もっと腕を振れって!」。最後は「仲野さん、才木の走り方おかしいよ」と仲野伸洋トレーナーへの訴え。でも仲野トレーナーは「彼の持ち味です」とクールな返しでした。

休みなく1時間40分…コーチに感謝!

 今成選手のあの明るさ、元気、サービス精神は若手のお手本ですね。アメリカンノックでの走りを見ていても、さすがだなあと思います。途中、ライトからレフトへ走って厳しい打球をナイスキャッチした時のこと。捕ったボールをグラウンドのアルバイトさんに返さず、試合みたいにレフトスタンドへポーンと。そこにおられた見学のお客様は大喜びでした。あとで今成選手に聞いたら「嬉しすぎで投げちゃった!」そうです。

これは29日。連続ティーで疲れ果てて倒れる江越選手(上)と座り込んだ糸原選手(下)
これは29日。連続ティーで疲れ果てて倒れる江越選手(上)と座り込んだ糸原選手(下)

 最後は小豆畑、緒方、北條、長坂の4選手。4人とも捕れたら終わり!という声がかかったあと3往復くらいして、ようやく3人が成功。残る小豆畑眞也選手がクリアすれば…というところで、なんと(周囲の声によると)エラー!全員がバッタリとその場に倒れこみました。小豆畑選手には、いや他の3選手にも申し訳ないけど大爆笑です。

先に終わった高山選手が、虎テレさんのカメラを借りて撮影中。その被写体は…後日わかります!
先に終わった高山選手が、虎テレさんのカメラを借りて撮影中。その被写体は…後日わかります!

 そんな中、長い手足を軽やかに回転させて、難なく打球をつかむ藤谷洸介選手は目につきますね。走れる選手だけに、アメリカンノックも得意なのかなと思って、やる前に聞いたら「得意ではないです。一生懸命やるだけです」と珍しく控えめなコメント。でもこれでは終わりませんでしたよ。帰りに感想を尋ねると「余裕です。だって速いから」とニヤリ。

 このアメリカンノックが終わったのは13時40分過ぎ。つまり筒井コーチと藤本コーチは1時間40分も、休みなくノックをし続けていたわけです。その終盤、望月惇志投手が才木投手を連れて2人のコーチに飲み水を持っていっていました。グッジョブです。なかなか気が利きますね。

いろんな方との再会も楽しみな宮崎

16日、高橋コーチ(右)に挨拶をするロッテの井口新監督(左)。
16日、高橋コーチ(右)に挨拶をするロッテの井口新監督(左)。

 10月16日も同じように試合前に降った雨で中止。この日はSOKKENスタジアムのロッテ戦で、もと阪神の鶴岡一成2軍バッテリーコーチと会いました。阪神の選手がまだ投げている時にブルペンへやってきて、小豆畑選手を見るなり「みなさーん、小豆畑の態度が大きくなっていますよ~。気をつけてくださいよ~」と大きな声で(笑)。そう言われながら小豆畑選手は嬉しそうだったような気がします。

大先輩への挨拶は欠かせません。上が高橋コーチと高濱選手、下は横川さんと佐々木投手。
大先輩への挨拶は欠かせません。上が高橋コーチと高濱選手、下は横川さんと佐々木投手。

 同じく元阪神のロッテ・高濱卓也選手が「挨拶しないと!」と駆け寄ったのは、阪神の高橋建バッテリーコーチ。なるほど、横浜高校の大先輩ですね。一緒にやってきたロッテのルーキー・佐々木千隼投手が挨拶をしていたのは、阪神の横川雄介ブルペンキャッチャーでした。都立日野高校の先輩で、10歳差くらいでしょうか。めったに会えないので、挨拶の機会は逃せませんね。

 ロッテといえば阪口哲也選手の高校の後輩・三家和真選手もいます。広島を戦力外となったあとルートインBCリーグの信濃、石川でプレーして再びNPBに戻りました。同じ石川から育成ドラフトで入団した安江嘉純投手も、一二三慎太選手が派遣されていた時に話を聞かせてもらったのですが、プロ1年目の終わりにやっと会えました。

ロッテの安江投手。1年前、BCL石川時代に同じポーズで撮りましたね。
ロッテの安江投手。1年前、BCL石川時代に同じポーズで撮りましたね。

 昨年9月末に金沢で阪神との交流試合があって写真を撮った、あれから1年あまり。お互いに「早いですねえ」という言葉が出てきました。そして先日のドラフト会議で、古巣の石川から3人のピッチャーが支配下選手として指名されています。嬉しい反面、先輩として負けられないですね。頑張ってください!

 なお10月17日のヤクルト戦は早朝に中止が決まり、午後13日から西都原運動公園での練習。ここでも元阪神のヤクルト・北川博敏2軍打撃コーチと2年ぶりくらいの再会でした。北川コーチが「どんどん太って横に広がっていくわぁ」と言いながら見せる笑顔は、いつもと同じです。ルーキーの時から見ていますけど、全然変わりませんね。

人懐っこいメンディー、来年もぜひ

14日、試合後のランニング中も、隣の青柳投手に“ちょっかい”を出すメンデス投手(左から2人目)。
14日、試合後のランニング中も、隣の青柳投手に“ちょっかい”を出すメンデス投手(左から2人目)。

 “こぼれ話”の締めはメンデス投手。ファームでの登板が多かったシーズンですが、25セーブを挙げてウエスタン・リーグ最多セーブのタイトルを獲得しました。これは1996年にダイエー・ミツグ(斉藤貢)投手が記録した20セーブを上回るリーグ最多セーブ!当時より総試合数が増えたとはいえ21年ぶりの新記録、すごいですね。

 そんなメンディーことメンデス投手は、1年目と思えないほどチームに溶け込み、いたずらを仕掛けたり、取材の邪魔をしたり。記者としゃべっている選手にちょっかいを出すなんて日常茶飯事です。でも可愛げがあるので、みんなに慕われるんでしょう。なつかれすぎて「もういいって」と怒っている選手もいますが、もちろん本気ではありません。

野手の上がりを待ちながらバットを手に誰かの物まねも。
野手の上がりを待ちながらバットを手に誰かの物まねも。
ヘルメットの意味がないですね。この写真を見て本人も大笑いでした。
ヘルメットの意味がないですね。この写真を見て本人も大笑いでした。

 ものすごく積極的に話しかけ、みんなも普通に返しているので大木一仁通訳に尋ねたところ「わからない時や通訳が必要な時は、僕を呼びますね。だから、それ以外はあえて入らないようにしています」とのこと。宮崎でも雨の室内練習場でキョロキョロしたあげく、ヘルメットをかぶりバットを持って誰かのフォームを真似ていました。そのフォームよりも、かぶりきれず頭に乗っかったヘルメットがおかしくて写真を見せたら「キャハハハ!」と、本人も大爆笑。

 先日、帰国したメンデス投手は「いつも私を支えてくれ、元気をくれたタイガースファンの方々、本当にありがとうございました。来年戻って来ることができれば、ことしより成績を残せるように精一杯頑張りたいと思います。大好きな皆様に愛を込めて」というコメントを残しています。来年も阪神でプレーしてほしいですね。今度は甲子園での登板が増えますように。

 

失敗を恐れないこと、声を出すこと

 第4クールまで監督代行を務めた山田コーチには、全体を振り返ってもらいました。「1つ言えるのは、監督もそう見ていたし僕も思うけど、失敗を恐れて消極的になっている選手が目立っていたんですよ。走ってアウトになっちゃダメとか、若いのに失敗を怖がっていた。守りに関してもね。そういうのをなくす、解放していくことが一番」

フリーで投げるため、キャッチボール中の東マネージャー。この日2度目の登板です。
フリーで投げるため、キャッチボール中の東マネージャー。この日2度目の登板です。

 また試合の内容に関しては「勝ったときって1回に点を取れているでしょう?やっぱり先制点は大事だよ。それにはバッターの準備が必要。またダブルスチールも3回くらいやったんだけど、これも準備がいることだからね」という話です。確かに重盗も、普段は走らないであろう選手の盗塁企画も、なかなか新鮮でした。フェニックスだからこそかもしれませんが、怖がらない気持ちを忘れずに来年を迎えてほしいと思います。

勝利で締めた最終戦、選手を出迎える矢野監督(手前)や山田コーチ(右)。
勝利で締めた最終戦、選手を出迎える矢野監督(手前)や山田コーチ(右)。

 27日の練習試合から指揮を執った矢野監督は、29日が中止になって宮崎県総合運動公園内の木の花ドームで行われた練習後、こんな話をしています。「練習もそうだけど、積極的に失敗を恐れずやっていく姿を見せてほしいですね。声を意識してほしい。声にはすごいパワーがあって、周りも自分も元気づける。1軍も含め、そういうチームだという伝統を作っていかないと」

 とにかく今は、安芸でも鳴尾浜でも「声と元気でアピール!」です。

     <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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