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「祝・日本一 和歌山箕島球友会」準々決勝は穴田選手が殊勲の先制打!

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
準々決勝で先制打の穴田選手(左)と、完封した和田投手(右)。左上は…林主将です。

 9月1日から4日まで、メットライフドームで開催された『第42回全日本クラブ野球選手権』は、西近畿代表・和歌山箕島球友会の2年ぶり4回目の優勝で幕を閉じました。元阪神タイガースの育成選手で、退団後の2014年から和歌山箕島球友会に在籍する穴田真規選手(24)は初戦から決勝までの4試合すべてにヒットを放って貢献!そのため本人にとって2回目の日本一ながら、また格別な喜びだったようです。

 クラブ選手権を制したことにより、和歌山箕島球友会は『第43回社会人野球日本選手権』(10月30日から京セラドーム)への出場権を得ました。今ちょうど各地で最終予選が行われているところで、近畿地区では既に日本生命と大阪ガスが、それぞれ第1、第2代表に決定。残るは敗者復活戦での3代表です。藤井宏政選手兼コーチ(27)のカナフレックスは2回戦で大阪ガスに敗れ、敗者復活の1回戦に勝って望みを繋いだものの、三菱重工神戸・高砂に負けて終わってしまいました。

 2回戦からの出場だった、阪口哲也選手(25)がいるパナソニックは第1代表決定戦で日本生命に敗れ、次は第3代表決定戦へ。また初戦で負けてしまった三菱重工神戸・高砂は敗者復活1回戦でコールド勝ち。若竹竜士投手(29)が7回完封だったそうですよ。きょうカナフレックスに勝ったので、9日はパナソニックと第3代表を争います。阪神OB同士が戦うと…みんな揃って京セラドーム!とはいきませんよねえ。

1回に先制して完封勝ち

 では、クラブ選手権に話を戻しましょう。きょうは和歌山箕島球友会の2試合目、3日に行われた2回戦(準々決勝)・九州地区代表の鹿児島ドリームウェーブ戦をご紹介します。この日は第3試合で14時開始予定だったので少しゆっくりめ。チームは午前中、地元高校の施設を借りて打撃練習を行ってから球場入りしました。実際に試合が始まったのは15時37分。ちなみに第4試合は予定より2時間遅れの18時26分開始で21時20分終了です。

 さて、試合は1回に1死満塁のチャンスを作り、穴田選手が走者一掃のタイムリー三塁打を放って先制!この援護で、先発の和田投手は5安打完封勝利となりました。 ※1回戦の模様はこちらからどうぞ。→<元阪神の穴田真規選手、4戦すべてに安打で貢献!和歌山箕島球友会が2年ぶりのクラブチーム日本一に>

《第42回 全日本クラブ野球選手権大会》

 9月3日 2回戦 (準々決勝)

鹿児島ドリームウェーブ-和歌山箕島球友会

 鹿児島 000 000 000 = 0

 箕 島 310 010 00X = 5

 

1回1死満塁で穴田選手が右中間への三塁打!
1回1死満塁で穴田選手が右中間への三塁打!
連打していた夏見選手と岸田選手が相次いで生還。
連打していた夏見選手と岸田選手が相次いで生還。
四球の岸選手も一塁から還って、走者一掃!
四球の岸選手も一塁から還って、走者一掃!

◆バッテリー

【鹿児島】●竹山-ひばり野-美山-久保 / 田中

【箕 島】○和田 / 水田

◆三塁打 穴田(箕島)

◆二塁打 夏見、穴田、水田(箕島) 冷水(鹿児島)

※個人成績は箕島のみ

◆打撃 (打-安-点/振-球)

1]右:夏見 ( 5-4-0 / 0-0 )

2]中:岸田 ( 5-1-0 / 1-0 )

3]一:岸  ( 1-1-0 / 0-4 )

4]指:林  ( 4-0-0 / 2-1 )

5]三:穴田 ( 4-2-3 / 1-0 )

6]左:平井 ( 4-0-0 / 2-0 )

〃左:木村 ( 0-0-0 / 0-0 )

7]捕:水田 ( 3-1-0 / 0-1 )

8]遊:西口 ( 4-1-1 / 0-0 )

9]二:冨樫 ( 4-1-0 / 1-0 )

〃中:森下 ( 0-0-0 / 0-0 )

◆投手 回 (安-振-球/失-自)

和田 9回 ( 5-7-1 / 0-0 )

穴田選手、5回には先頭でライトへの二塁打。
穴田選手、5回には先頭でライトへの二塁打。
2死三塁となって西口選手が左前タイムリー!
2死三塁となって西口選手が左前タイムリー!
穴田選手が生還して5点目が入りました。
穴田選手が生還して5点目が入りました。
西口選手もこんな笑顔です。
西口選手もこんな笑顔です。

<試合経過>※継承略

 打線は1回、夏見と岸田が連打し、岸は四球を選んで無死満塁といきなりチャンスを迎えます。1死後に穴田が2ボールからの3球目を打って、これが右中間を越えていく大きな当たり!満塁の走者を一掃する、先制タイムリー三塁打となりました。2回には1死から夏見がライトへの二塁打を放ち、2死後に岸のサード内野安打で一、三塁。そのあと暴投で夏見が還って3点目が入ります。

 3回は唯一の三者凡退でしたが、4回は2死満塁で無得点。5回に先頭の穴田が右越えの二塁打を放つなど2死三塁として西口が左前タイムリー!しかし6回はまた2死満塁をチャンスを生かせず、7回と8回も走者を出しながら追加点なく終わっています。

 一方、先発の和田は1回が1死からの1安打のみ。2回は味方エラーで先頭を出すも、次のバントをキャッチャー・水田が捕って三塁へ送り挟殺(2-5-6-1)。3回は1死から1番に右前打、続く右越え二塁打で二、三塁と初めてのピンチを招きますが、3番は空振り三振。4番に四球を与えて2死満塁としながらも、最後は投ゴロで無失点でした。

 4回、5回は三者凡退で、6回は1死からの1安打。7回は下位打線だったものの、なんと見逃し、空振り、空振りで3者連続三振!8回はやはり1死から1安打されただけ。そして9回は三者凡退!先頭打者を出したのは2回(エラー)と3回(ヒット)の2イニングのみです。

先制三塁打は「文句なし!」

 まず最初に、この試合の殊勲と言ってもいい穴田真規選手のコメントからご紹介しましょう。前日は冗談しか言わず「あしたも勝って、ちゃんとしゃべる」と約束していた通り、たくさん真面目に(笑)しゃべってくれました。

1回のタイムリー三塁打、原井コーチと握手です。
1回のタイムリー三塁打、原井コーチと握手です。
そのあとベンチに向かってガッツポーズ。
そのあとベンチに向かってガッツポーズ。

 1回1死満塁で回ってきた打席で「ど真ん中、いや…ちょっと外よりの真っすぐ。(カウント)2-0やから、甘めのやつは何でも振ったろうと思っていた」という真っすぐを打ったそうです。「右中間に打つイメージができていたので。最近、練習でもよく右方向に飛ぶんですよ。原井コーチのおかげで~す」と、最後は隣にいた原井和也コーチへの、わかりやすい感謝。

 原井コーチも「穴田はこの大会、予選からよかったですね。2年前に比べて?もう全然違いますよ!」と絶賛したあと「右方向に打って、それが続かないのは…“色気”かな」と笑います。再び穴田選手本人の話に戻って「きょうの三塁打は言うことなしでした。先制点やし、一発勝負ではほんまに大きい。あした、もし先に点を取られた時に、どれだけ焦らずにできるかですね」と、なかなか大人のコメント。

同級生・中谷選手の活躍も励みに

 また5回の右越え二塁打について「あれは変化球を狙ってて、ホームランを打ってやろうと思っていました。変化球が来て、ちょっと詰まったけど、うまくあっちに持っていけた。変化球を、引っ張ってじゃなく右中間へと思っていたから。あの二塁打は、調子悪かったらサードゴロになってたはず。今は壁ができているし、一歩ポイントを待てているからやと思います」と細かく説明してくれました。

二塁打を放った5回は、二塁上でこのポーズ。
二塁打を放った5回は、二塁上でこのポーズ。
5回の1点はこの2人が。二塁打の穴田選手とタイムリーの西口選手(右)。
5回の1点はこの2人が。二塁打の穴田選手とタイムリーの西口選手(右)。

 こんな具体的に語ったことは阪神時代にもなかったので、ちょっと感動していたら「俺、エラーなしやで~」とニヤニヤする穴田選手。まだ2試合しか終わっていませんけど(笑)。

 それから「○○○、頑張ってるなあ!」と急に言い出したのは、阪神に同期入団した同級生6人衆の中でも、特に仲良しだった中谷将大選手のこと。〇○○は穴田選手独特の呼び名なので伏せておきますね。この前夜、2日に甲子園であった中日戦は埼玉でもテレビ中継があり、見ていたようです。「18号ってすごいやん!やるなあ」。心底うれしそうでしたよ。中谷選手の方も、穴田選手のことを気にかけていますしね。場所は違えど、互いに切磋琢磨して活躍してください。

監督と、前主将の言葉

 続いて、和歌山箕島球友会の西川忠宏監督。1回戦同様、先取点を奪っての勝利とあり「1回の穴田の三塁打は大きかったですよ!ノーアウト満塁になって、4番が三振して嫌な感じになりかかったところ、よく打ってくれました。あの3点ですね、やっぱり。あとは5回の1点。穴田が二塁打して、西口が打って。あれも大きい。和田もよかったけど、きょうは穴田でしょうね」と絶賛です。また「OBの浦川が『穴田はタイミングの取り方がよくなりましたねえ!』と感心していました。さすが前キャプテン、よく見てくれています」と。

2015のV戦士、浦川拓人さん(前)と高橋祐太さんもスタンドに。
2015のV戦士、浦川拓人さん(前)と高橋祐太さんもスタンドに。
浦川さんに「徹!」声をかけられ、振り向いて笑顔がはじける平井選手。
浦川さんに「徹!」声をかけられ、振り向いて笑顔がはじける平井選手。

 スタンドには2015年優勝時のキャプテン・浦川拓人さんと、兼任コーチだった高橋祐太さんが来られていました。1回戦では、ネクストバッターズサークルへやって来た選手1人1人に声をかけた浦川さん。名前を呼んで「硬いぞ!」と言って笑わせるだけでも、懐かしい顔に気づいた選手は明らかに嬉しそうです。それに加えて「ちょっと開くのが早いぞ」というようなワンポイントアドバイスも。

 ずっと一緒に戦って、いつも見てきたキャプテンだからこその“応援”に、選手たちの緊張がほぐれないはずがありません。素人の私が見ても、そのあとの打席ではみんな肩の力が抜け、とても自然にバットが出ていたように思います。もちろんアドバイスも的確。それゆえの連打だったんでしょうね。そんな前キャプテンに「よくなった」と言ってもらったのは嬉しいことです。あ、もしかしたら「調子に乗せないため」本人は聞いていないかも?

チャレンジャーのつもりで

完封勝利を挙げた和田投手。気合いの投球です。
完封勝利を挙げた和田投手。気合いの投球です。
リードした水田捕手。ことしで3回目の日本一です!
リードした水田捕手。ことしで3回目の日本一です!

 続いて、5安打完封勝利の和田拓也投手は「絶対に最後まで行ってやろう!と最初から思っていた」そうです。ピンチは3回の一度だけでしたね。「1アウト二、三塁になった時、絶対に三振を取ろうと思って」三振を取り、次が4番で「際どいところに投げてフォアボールでもいいと思っていた」という通り四球で満塁になったものの次が投ゴロ。「3回までは緊張もあったけど、4回からはちょっとバッターを観察しようと思って投げ、それがはまって気持ちよく打たせて取るピッチングができた」

 前半はベンチに戻ってくるたび笑顔だったけど、後半は表情が険しくなったことを聞いたら「性格的に、気が抜けたら“やってしまう”ことがあるんです。実は練習試合でも痛い目にあったので、チャレンジャーのつもりで打ち取ることだけ考えて投げました。調子に乗らずに(笑)。それと7、8、9回に点を取られたら向こうに勢いがついてしまうので、後半こそ気を引き締めていこうと思った」という理由だったようです。

前半はイニングごとに笑顔で戻ってきましたが…
前半はイニングごとに笑顔で戻ってきましたが…
後半は厳しい表情。7回に3者連続三振を奪った時も。
後半は厳しい表情。7回に3者連続三振を奪った時も。

 ところで、ベンチに戻るたびトレーナーの方々が手を冷やしてくれていたとか?「はい。発汗して疲れがたまるので、それを軽減するために冷やすのだそうです。普通は首とかですけど、手の甲を冷やしてもらっていました。終盤になってもスピードが落ちなかったのは、そのおかげかな、関係あるのかなと思います。続けていきたいです」

 そして、穴田選手の先制打は大きかったかと尋ねたら「あの1回の3点で気持ちが引き締まり、また余裕もできました。穴田選手“さまさま”です!最近すごいんですよ。ずっと打ってる気がする。あすも信じています」という言葉が返ってきました。この時点で、自分は準決勝だと思っていた和田投手。でも任されたのは決勝!信じた通り、やってくれたんですよ。

 最後に夏見宏季選手のひとことをご紹介します。前日に5打数5安打と大当たりした、同じルーキーの冨樫和秀選手に負けじと、この日は6回までの4打席で4打数4安打。8回の5打席目は意識した?「力入りました~!打ってやろうと思って」。でも左飛で5打数4安打、それでも立派な数字ですね。

<掲載写真はすべて筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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