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味方エラー3連発で大量失点… 18歳・望月投手の初甲子園《6/26 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
初の甲子園も、同級生・小笠原投手との投げ合いも楽しみにしていた望月投手ですが…

梅雨の晴れ間の26日、18歳同士のフレッシュな投げ合いを楽しみに甲子園球場へ出かけられた方も多かったでしょう。ウエスタン・リーグの阪神‐中日戦は、阪神がドラフト4位の望月惇志投手(横浜創学館)、中日がドラフト1位の小笠原慎之介投手(東海大相模)の先発で始まりました。同じ神奈川出身で、これまで何度も対戦している2人ですが、プロに入ってからは初顔合わせです。

前日、望月投手は「(小笠原投手を)もちろん意識しますけど、自分のピッチングをするだけ。しっかり投げたい」と言っていました。自身のテーマ曲が流れるのも初めて?と聞いたら「はい」とニッコリ。そこへやってきた山田バッテリーコーチが「おお~テーマ曲か。何や?」。すると「え、あの、普通の曲です」と思わず答えた望月投手。普通って(笑)

さて、試合は序盤から予想外の展開となっています。甲子園で、またテレビ中継でご覧になった方も多いでしょう。では結果と試合経過をどうぞ。

《ウエスタン公式戦》6月26日

阪神-中日 16回戦 (甲子園)

中日 150 100 200 = 9

阪神 001 020 010 = 4

◆バッテリー

【阪神】●望月(1勝1敗)-高宮-山本-鶴-筒井-福原 / 鶴岡-小宮山(5回~)

【中日】○小笠原(1勝2敗)(6回1/3)-阿知羅(2/3回)-金子(2/3回)-福谷(1回1/3) / 木下-松井雅(6回~)

◆本塁打 溝脇1号ソロ(望月)

◆三塁打 遠藤

◆二塁打 陽川、遠藤、上本

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]二:上本  (4-1-1 / 0-1 / 0 / 1) .317

2]遊:森越  (5-1-1 / 2-0 / 0 / 0) .213

3]中:江越  (5-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .211

4]右:横田  (4-2-0 / 1-1 / 1 / 0) .284

5]三:陽川  (4-2-2 / 0-1 / 0 / 0) .333

6]一:へイグ (4-0-0 / 1-0 / 0 / 1) .395

〃一:荒木  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .250

7]指:ペレス (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .307

8]捕:鶴岡  (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .333

〃捕:小宮山 (1-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .286

9]左:柴田  (3-2-0 / 0-1 / 0 / 1) .242

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

望月 4回 79球 (5-1-2 / 7-2 / 2.04) 151

高宮 1回 13球 (0-1-0 / 0-0 / 0.00) 140

山本 1回 16球 (0-1-0 / 0-0 / 1.69) 138

鶴  1回 21球 (3-0-0 / 2-2 / 1.96) 143

筒井 1回 24球 (0-1-2 / 0-0 / 3.08) 140

福原 1回 14球 (0-0-0 / 0-0 / 4.70) 142

試合経過

まず望月は1回、先頭の溝脇に左前打され、三ツ俣の投ゴロで1死二塁。続く遠藤のタイムリー(一塁ベースに当たって右前へ)を許しますが、次を投ゴロ併殺打に仕留めて1点にとどめました。2回は先頭の藤井をセカンド・上本の捕球エラーで出し、ここから悪夢が始まります。

藤井の二盗後、近藤に四球、古本は中飛で1死一、三塁として8番・木下の一ゴロを捕ったヘイグ。バックホームしようとした送球が、一塁へ向かう木下に当たりボールは転々、その間に1人生還(記録はヘイグの送球エラー)。1死一、二塁で続く井領は左飛、と思ったら柴田が落球。1死満塁となって、溝脇に左前タイムリーを浴びました。さらに暴投で木下が生還。三ツ俣は三ゴロ、陽川がバックホームして2死一、二塁。

ようやく先が見えてきたところで、次の遠藤に右中間へ大きな当たり…。これがタイムリー三塁打となって2人を還します。森野を二ゴロに仕留め、何とか終わった2回。被安打2ながら3失策が絡み5失点(自責は0)です。3回は2死後に四球を与えたものの無失点。4回は溝脇に今季1号ソロを許して1点追加されています。望月は2回までに50球を要してしまったため、4回で交代しました。

5回は復帰登板の高宮が4番・森野からの3人をピシャリ!6回の山本も三者凡退です。7回は鶴が溝脇に中前打(4安打目)され、犠打で二塁へ進めて遠藤に右中間タイムリー二塁打。石川にも連続タイムリーを浴びて、この回2点を追加されました。8回は筒井が2四球を与えるも0点に抑え、9回は福原が三者凡退という継投です。

変わって攻撃。小笠原に対して1回は三者凡退、2回は横田の四球と盗塁のみで得点につながらず。しかし3回、1死から柴田と上本が連続で四球を選び、森越の左前タイムリーで1点を返しました。4回は陽川の中前打と暴投、2死後に鶴岡が四球を選んだものの追加点はありません。

5回は2死となったところで江越が左前打、横田はバットを折りながらの内野安打、暴投で2死二、三塁となり、陽川の左中間タイムリー二塁打!2人が還っています。6回は2死から柴田がショート内野安打で出塁、また7回は横田の右前打と陽川の四球で一、二塁とするも得点なし。

そのあとは8回に小宮山の死球と柴田の右前打で1死一、三塁として、上本が左越えタイムリー二塁打で1点を加えましたが、9回は三者凡退で終了。この1週間はソフトバンクに2敗1雨、中日にも2敗1雨で、計4連敗。貯金は3まで減りました。

掛布監督、久保投手コーチの談話

開口一番「エラー、ミス。それがすべて」と掛布監督。そのあと「でもクリーンアップが3連打!初めてじゃない?」と笑って「陽川は肩が入りすぎていたから、左の肩を入れすぎるなと、けさ言いました。意識したかどうかわからないけど、結果が出たからね。横田のはバットが飛んでったけど」と再び笑います。前日は揃って打てなかった3人ですが「きょうは、いい責任を感じてやってくれた」と評価。また望月投手については「甲子園で緊張したかな。そんなに調子よくなかったんじゃない?球が高かったね」とのことでした。

ミーティングを終えて高橋コーチ(左)、山本投手(中)と戻ってくる望月投手。
ミーティングを終えて高橋コーチ(左)、山本投手(中)と戻ってくる望月投手。

久保投手コーチは「甲子園、初戦敗退や~」と高校野球大会に例えて苦笑い。「2回がね。もう少しイニング数を延ばしたかったんだけど、2回までで50球。5回、6回は躊躇した。小笠原のようにコンスタントに100球投げているなら行かせられるが、2回が長すぎたね。こういうこともある。ただ溝脇のレフト前、遠藤の右中間は。ああいうとこは意地で真っすぐでいく戦い方もあるけど、相手が押せ押せの中、流れのまま力でねじ伏せにいった」

これからのことは「いかに速くて強い真っすぐを、150キロの速さを、相手に感じさせるか。どこで投げるかが今はすべてですね。常に全力でいこうという、しっかりした好青年のピッチングが出ているでしょう?」と久保コーチは話しています。その表現、すごくよくわかります。

「味方のミスを助けていくのも今後の課題」

では、しっかりした好青年・望月投手のコメントです。「いろいろ課題も見つかりました。やっぱりストレートの球速もイニングごとに落ちてきていますし、スタミナ面もこれからの課題です。変化球とのバランスも考えてやっていけば、ストレートで強く全力でというのもなく、リズムよくいけると思います」

初めての甲子園のマウンド。いろんな意味で忘れられない経験になりましたね。
初めての甲子園のマウンド。いろんな意味で忘れられない経験になりましたね。

試合を振り返って「全体的に球が高かった。決めにいったのも、ベルトより少し高めで、それを打たれました」と反省。そして「この前のオリックス戦(17日、舞洲)も高かったので、それを意識して次までにやっていきたい」と望月投手。

それにしても、1イニングに3失策とは不運が重なった試合でしたね。「いろんな方に『いい経験できた』って言ってもらって、そういうこともありますけど…。そのあとのバッターをしっかり抑えるのも、いいピッチャーになっていくために必要なこと。味方のミスを助けていくのも、これからの課題です。そういうのも見られたので、いい経験でした」。やっぱり好青年!そうです。野手が助けてくれることも多々ありますからね。

1軍の甲子園で小笠原投手と投げ合う時が楽しみです。
1軍の甲子園で小笠原投手と投げ合う時が楽しみです。

甲子園で初めて投げた感想は、前日に島本投手から「投げやすいよ」と言われていた通り「投げやすいと思います」とのこと。そして「久保コーチに『これがホームのマウンドになるんだから、自分のピッチングができるようにしていけよ』と言われたんです。しっかり練習して、いい方向に持っていきたい」とうなずきました。

久保コーチから「練習よりも試合の中で課題を見つけて成長していくこと」が大切だという話があったとか。初めて投げた甲子園で、プロ初黒星を喫した18歳のルーキーですが、そこで得たものは何よりも大きな財産となったでしょう。自分の投球テンポが守備に悪影響を及ぼしたのでは…と反省する望月投手。いや~あんな立て続けにエラーが出ることはそうそうありませんよ。いつかきっと、思い出して笑える日が来ます。

戻ってきた高宮、キレ抜群の変化球

5月9日に登録を抹消され、同11日に右わき腹の筋挫傷と診断され鳴尾浜で調整していた高宮投手が、きのう5回に投げました。1イニングを13球で三者凡退。上々の復帰登板では?「そうですね。ところどころスライダーの抜けがあったけど、全体的にはよかったです。状態は思ったより、よかったですね」と明るい表情。

試合後の高宮投手。復帰登板は三者凡退でした。
試合後の高宮投手。復帰登板は三者凡退でした。

「1か月ちょっと空いたんで、ピッチングもそんなに投げ込んでいないからどうかなと思ったけど、シーズンで投げているのと変わらない球がいったかなと。変化球もキレがあったし、休んで逆にキレがよくなったのかなってくらい(笑)。まだわかんないですけどね」

もう脇腹も不安なく?「きょう投げて今のところは大丈夫です。ピッチングの状態としても。これからゲームにどんどん入っていける感じです」。久保コーチは「もう1、2試合くらい(ファームで)。もちろん1軍との兼ね合いもあるんで」と話しています。頼もしい左腕が戻ってきましたね。

陽川は5試合ぶりのヒット、横田もマルチ

陽川選手は5回に2点タイムリー二塁打!写真は別の打席です。
陽川選手は5回に2点タイムリー二塁打!写真は別の打席です。

陽川選手は4回に中前打、5回には2点タイムリー二塁打を放ちました。17日のオリックス戦(舞洲)で2安打して以来、5試合ぶりのヒットです。「2アウトからつながって、ああいう展開で点差も開いていたので、何とか塁に出てつなぎたいと思っていました」と5回を振り返ります。「追い込まれていましたし、何とか食らいついていきたいというのが、ああいう結果になったと思います」

毎試合コンスタントにヒットが出ないことは「3月や4月のような状態ではないと自分でもわかっています。そこを何とか、あの状態に持っていくことが課題ですね。1軍での課題も見つかっていますし、修正しながらやっていきたい」と陽川選手。具体的なことは言いませんでしたが「(春先に比べ)そこまでよくないとわかっている。課題を乗り越えないと1軍では打てないので」と、再昇格に向けてのアピールを誓っています。

この足も大きな魅力の横田選手。10日ぶりのマルチでした。
この足も大きな魅力の横田選手。10日ぶりのマルチでした。

横田選手もマルチヒットです。4回に内野安打で、7回の右前打は横田選手らしい打球だったように思いました。戻ってきたかな?「いや~そんなことはないですねえ。まだまだです。追い込まれてからの対応ができていないんで。バッティングカウントで打てるようにしないと」。じゃあ次の試合を見ましょうか。「はい。次を見てください!」

出た時は1本、1本打ったら2本

最後は、3回に小笠原投手からチーム初ヒットとなる左前タイムリーを放った森越選手。ナイスバッティングでした。「きょうのは最近の中ではよかったですね」。1回や7回の打席でインコースの球を何度かカットしていて、タイムリーのチェンジアップも内寄りに来ていましたね。「ファウルでは意味ないですね。僕、インコ―スが好きなんで。それゆえに何でも手を出してしまうってのもありますけど」

タイムリーは放ったけど、チームが4連敗でちょっと浮かない表情?の森越選手。
タイムリーは放ったけど、チームが4連敗でちょっと浮かない表情?の森越選手。

ずっと試合に出続けているわけではない立場ながら、出場すればヒットというイメージです。いやイメージではなく、実際に打席のあった最近4試合を見てみると、すべて打っていました。16日の広島戦(由宇)が1安打、21日のソフトバンク戦(タマスタ)は二塁打2本と単打の計3安打、23日の同カードは途中から出て二塁打、そしてきのう26日も。

「出た時は1本、1本打ったら2本、2本打ったら3本と思っています!」

この前向きな姿勢は守備にも出ていて、常にアグレッシブなプレーを見せてくれる森越選手。1軍で必要とされる時がきっと来る。そう信じています。

※最後にお知らせ。28日は鳴尾浜に社会人クラブチーム・和歌山箕島球友会を迎えて交流試合が予定されています。穴田真規選手は退団後初の鳴尾浜なので、本人も、また同期の選手たちも楽しみにしているでしょう。心配なのはお天気だけです。なんとか試合ができますように!

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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