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「練習前の準備」でケガなく終了! 阪神タイガース・安芸キャンプ総括

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
『超変革』のスローガンを掲げた安芸キャンプ。最終日はこの連隊歩調で練習終了です。

2月1日から高知県安芸市で行われていた阪神タイガース・ファームの春季キャンプは、24日で終わりました。休み…ではなく自主練習日を挟んで、きょう26日からは鳴尾浜で練習が始まっています。ことしはファームの教育リーグが3月3日に始まるので、2月いっぱいはキャンプの延長という感じでしょうね。1軍と同じく29日まで、この1クールは“鳴尾浜キャンプ”です。1軍のオープン戦も3月3日からで、いま鳴尾浜にいる選手も出場のチャンスあり。まだまだサバイバルは続きますよ。

さて、安芸キャンプから宜野座キャンプへ昇格したルーキーの高山選手、板山選手、そして原口選手の話を2回に分けて書かせていただいたので、ちょっと遅れてしまいましたが (しかも鳴尾浜でもう練習を再開しているのに…すみません)、きょうは24日に監督やコーチ、新人投手などに聞いた『2016安芸キャンプ総括』をお送りします。

打ち上げの挨拶は俊介選手

24日の安芸市営球場は、前日の小雨模様と打って変わって青空が眩しい、最高のお天気でした。風はかなり強かったものの安芸らしい日差しに、選手たちの顔もキラキラ。午前中の練習が終わる頃、サブグラウンドやブルペンから投手陣がメイングラウンドへ移動し始めます。野手のバッティングが終わるとネットやケージを片づけ、全員が外野の芝生に集合しました。ちょうど正午に「連帯歩調!」の合図で、全員が掛け声を合わせながらランニングをして終了。いつもの光景です。

そのあと監督、コーチ、選手、チームスタッフ、そして横山安芸市長をはじめキャンプの運営や管理をしてくださった安芸市役所、安芸市の方々、学生アルバイトの皆さんも一緒に大きな輪を作り、真ん中に立った俊介選手が代表で締めの挨拶をしました。完全ではありませんが、抜粋して内容をご紹介しましょう。

正午過ぎに全員が輪になって、中央の俊介選手が挨拶。そして一本締めで打ち上げです。
正午過ぎに全員が輪になって、中央の俊介選手が挨拶。そして一本締めで打ち上げです。

「1ヵ月間、ありがとうございました。これからまだ先は長いですが、選手1人1人が勝ちにこだわって頑張っていきたいと思います。練習をしっかりやって、1軍でプレーし優勝に貢献できるように頑張ります。ファンの皆さん!寒い中、雨の中、応援ありがとうございました!これからも応援よろしくお願いします!」

続けて俊介選手の発声で一本締め。無事に打ち上げとなりました。1人ずつ握手を交わしながら輪が解けていきます。そこからは一気に引き上げていくコーチや選手たちをつかまえて話を聞く…はずが例年よりさらに動きが早くて大変。なお掛布監督は、全員集合の前に時間を作ってくださいました!22日の試合後に少しキャンプを振り返る談話もあったので、それも合わせてご覧ください。

掛布監督キャンプ総括

22日には「キャンプもあと2日。ケガなくやれたのは非常によかった。朝、早めにやるのもよかったかもしれない。練習前に準備の時間を取れたってのは。これは29日くらいまで継続してやってもらおうかなと思ってる。3月は試合が入ってくるからね。あとは個人でやるレベルになるけど、2月中はキャンプの延長線上にあると思う。トレーナーからそういう話があって、いいんじゃないのと言った」という話がありました。

「安芸キャンプは満点」

そして最終日の24日、打ち上げ直前に聞いたキャンプ総括でも「ケガ人が出なかったってことが何よりですね。選手の自主性を意識してやらせたので、1人1人が自分の野球を追い込んでやってくれた。打つことやトレーニングにしても選手が納得して1日を終わらせてくれた。その積み重ねですね」と掛布監督。

ケガで安芸にきた伊藤隼選手(左)も、スタッフの皆さんとタッチ。
ケガで安芸にきた伊藤隼選手(左)も、スタッフの皆さんとタッチ。
掛布監督(左から2人目)が宮脇ファームディレクターと握手したところ。
掛布監督(左から2人目)が宮脇ファームディレクターと握手したところ。

確かに、沖縄でケガをしてしまったメンバーを除き、故障明けだった選手も本隊に合流して、後半は日々の練習スケジュール表から『別メニュー○○』という文字が無くなったのは嬉しいこと。それに新たな故障者が1人も出ず、みんな元気に完走できたのも本当によかったと思います。誰よりもトレーナーの皆さんが喜んでいらっしゃるでしょう。

このキャンプは満点?と聞かれた監督。「満点ですね。これも選手が答えを出してくれると思う。これからの彼らの勝負で。その答えに合わせて、いろいろ考えることもあるだろうし。ここにいる選手に期待していますよ」。その選手たちには「これから本当の戦いが始まる。チームの中で激しい争いをして、負けた人は1軍に上がれない。自分を厳しく追い込むくらいのつもりで1年間やってくれ」と話したそうです。「その準備はできたんじゃないかな」

監督のプレッシャーはこれから

監督として過ごした初めてのキャンプはどうだったかという問いに、まず「食事会が多かったなあ」と我々を笑わせたあと「毎日が充実していましたね。動いて、ある程度は細かいところも見てあげたいなと、去年までは行かなかったブルペンにも行ったり。またファンの皆さんへの対応とか。僕自身も充実していた。非常にこう、短く感じました」と振り返る監督は満足げな笑顔でした。

頑張ってくれた高校生のアルバイトさんたち。選手との握手に感激?
頑張ってくれた高校生のアルバイトさんたち。選手との握手に感激?
一番手前の森越選手は、東マネージャーの手を取って深々とお辞儀。
一番手前の森越選手は、東マネージャーの手を取って深々とお辞儀。

また“監督のプレッシャー”についての質問には、こんなふうに答えています。「まだある意味、育成という形のチームを預かるわけで、1軍の予備軍としていかなきゃいけないけど、まだ入れ替えもあるし。1軍メンバーが絞り込まれて、ファームのメンバーが決まった時に考えるんじゃないかな。今はまだ野手が11人くらいしかいないしね。ある程度の線引きができると準備をして、1軍のチームのバランスを崩さずに戦うことができるかが一番大事」

福留選手とへイグ選手が沖縄から戻って、安芸組の“鳴尾浜キャンプ”に合流しています。「福留は自分で自分を追い込める。そういう選手と2、3日でも一緒にいられるのは勉強になる。刺激を与えてほしいね。何度かファームで調整しているのを見たし、彼は天才と言われながらもバットを振り込んで自分のスタイルを作ってきた選手。だからここまで野球ができる。そんな福留のやる準備を肌で感じてほしい」と期待を込めた言葉です。

お目当ての選手を見つけて!

詰めかけたファンの皆さんから多くの声援をいただき「僕も嬉しいし、選手にいい影響を与えてくれたこと、お礼を言いたいですね。いい雰囲気を作ってくれて、選手もファンの目を意識して練習できる。結構タイガースファンの目は厳しいですよ」と感謝の言葉。そして監督から、こんな要望も出ました。「チームのファンになるのも嬉しいけど、1人のプレーヤーとしてファンになってくれる、そういう楽しみ方もありますね」

この中に“推しメン”を見つけた方もいらっしゃるはず♪
この中に“推しメン”を見つけた方もいらっしゃるはず♪

具体的には「タイガースというチームや、たとえば『31』に注目して来てくださって、そこでお目当ての選手を見つけて応援してくれたら嬉しい」とのこと。掛布監督も現役時代にそういう経験が?「いや~僕はずっと1軍だったから」。そう答えて、いたずらっぽく笑います。「個人のファンを、選手はもっともっと増やさないといけないと思う」。きっかけは掛布監督の『31』でもいいんですね。そこから「この選手がいいなあ」となれば。でも監督の「お目当て」という表現に嬉しくなりました。いまどきの「推しメン」ではなく。

最後に、安芸キャンプ初日も聞かれた“安芸”の感想を「景色が変わっていなくて懐かしいし、新鮮でもある。変わらない新鮮さというのを感じますね。いつも宮脇ディレクターに『いい景色だなあ』って帰りますよ。球場はきれいになったけど、風も変わっていない。帰ってきたという感じは強いです」と、改めて述べ会見は終了しました。掛布監督には忙しい中、毎日たっぷりと時間を取って取材に応じていただき、本当に感謝です。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!

コーチ陣、西田&植田のコメント

最初に書いた通り、この日はコーチも選手も帰りは一気で…ほんの少ししか話を聞けていません。新しいコーチである高橋投手コーチにも伺いたかったのですが、タイミングを外しました。すみません。

コーチ陣も互いに笑顔で打ち上げの握手です。皆さん、お疲れ様でした!
コーチ陣も互いに笑顔で打ち上げの握手です。皆さん、お疲れ様でした!

まず久保投手コーチは「故障者がみんな復帰したし、みんなが伸びたし。これから(争いが)激化するでしょう。それを期待しています。これは始まり。今からです」と、ここから始まるサバイバルを強調。オープン戦に推薦する投手は?「何人か出ていますね。要望されれば、いい形で戦ってきてほしい」。そして久保コーチは「新たなケガ人が出なかったこと。それが何よりよかったですね。それが戦力!」と大きくうなずいて車に乗り込みました。

今岡打撃コーチは「またこれからです。準備できたと選手がそう思っていたら、いいですね。選手が日の目をみること、それが僕らの仕事なので」と、やはりキャンプが終わってからの戦いにもう向かっています。平野守備走塁コーチは「1軍が優勝争いするために僕らが何をできるか、考えながら引き続きやっていきたい。3人が(沖縄に)行ったけど、1軍で活躍できる選手を1人でも多く出せるようにやっていきます。いま預かっているメンバーを1人でも推薦できるように」と、熱い言葉。

チームが引き揚げてからも後片付けは続きます。こちらこそ、有難うございました!
チームが引き揚げてからも後片付けは続きます。こちらこそ、有難うございました!

選手に至っては、もう話しかける隙もないくらいで。何とか西田選手と植田選手には車のドアが閉まる寸前に聞きました。本当に一言です。西田選手は「やろうとしたことの、きっかけはつかめたと思います」。スイッチヒッター挑戦中の植田選手は、左打ちに関して「最後はちょっと自分で感覚がつかめたような気がします」と言ったその時、西田選手が「つかんだら放すなよ!」と突っ込み、すかさず「放さないっす!」と返した植田選手。絶妙の掛け合いでした。

ルーキーピッチャーズの初キャンプ回顧

キャンプ中の1軍昇格もあるかと思われた青柳投手ですが、今回は投手の入れ替えなしで帰阪となりました。「頑張ってこいよ」と送り出した同期2人について「正直うらやましいところはあるけど、今はキャンプが終わったところで1軍メンバーが決まったわけじゃないので」と言います。その通り、本当の勝負はこれからですね。「このキャンプで課題が見つかった。そこを直していきたい。焦る気持ちはないです」

実戦にも2度登板した青柳投手。早くオープン戦で投げたいですね。
実戦にも2度登板した青柳投手。早くオープン戦で投げたいですね。

キャンプを振り返って「最初は慣れなかったけど、何とか乗り切れたと思います。プロの場にも慣れました。制球に苦しむところはあったものの、実戦で外野まで飛ばされなかったのはいいことだと思います」とのこと。久保コーチは今後も先発でと示唆していましたが「まだ言われていないので、言われたところで準備して投げたい」と話しています。

最終日、ブルペンでのピッチングで締めくくった竹安投手。
最終日、ブルペンでのピッチングで締めくくった竹安投手。

竹安投手は「最初の方は緊張したり、物おじしたりで疲れがありました」と正直な感想。そりゃ気疲れしますよね。「一番はケガなくできたのがよかったです。ウエートも強度を上げてできた。変化球はまだ投げていませんが、ブルペンにも入って順調にきています」。今後に向けて「まずは変化球を投げたい。それと投内連係にも入りたいです。体作りもしっかりやっていけたら」との抱負でした。

望月投手も最終日にピッチング。鶴岡選手相手に40球を投げました。
望月投手も最終日にピッチング。鶴岡選手相手に40球を投げました。

締めはチーム末っ子の望月投手。「最初は別メニューだったので全部やれたってわけではないんですけど、久保コーチにフォームのことも教わったし、トレーニングルームの設備もよくて、今後につながるキャンプになったかなと思います。プロ野球生活、いいスタートが切れました」。鳴尾浜に戻ったあとも「フォームを固めて、しっかり練習していきたい。24日間やってきたことを継続していけば体とか技術に出てくるから」と気合いは十分です。

受けた鶴岡選手が「ナイスボール!」。その後の「口内炎!」って何ですか?鶴岡さん。
受けた鶴岡選手が「ナイスボール!」。その後の「口内炎!」って何ですか?鶴岡さん。

24日間と言っていましたが、過去に合宿とかでどれくらいの日数を経験した?「最長で5日くらい。合宿ですけど」。じゃあもう未知の世界だったわけですね。先輩方に可愛がってもらって何よりです。「すごく優しいです!皆さん。野球をやりやすい環境でした」。鶴岡選手がブルペンで「もっちー、いいよー」と声をかけてくれたり?「嬉しいです」。私も“もっちー”と呼ばせていただいています。“あっちゃん”はイマイチだったようなので。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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