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安芸キャンプ3日目、ドラ1・高山が挨拶代わりの20発!《2/3 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
3日の練習後に節分の豆まき(鬼の役は記者)。掛布監督の、この笑顔が福を呼びます。

きのう3日の阪神タイガース・安芸キャンプは、スケジュールの中に『自主練習』という項目が初めて登場した日です。通常は投手、野手とも本隊のメニューが終わると『個別練習』(投手は肩のトレーニングかウエート、野手は特打か特守か特ウエート)の時間です。掛布監督はこの部分を自己申告制にしました。選手は前日、自分が何がしたいかを表のようなものに記入するシステムだそうです。

原口選手や一二三選手、植田選手は特打やウエートを2日間の個別でやったけれど「守備がまだだったので」と特守を選択。それぞれ捕手、内野手、外野手に分かれてノックを受けました。他に捕手は清水選手と小豆畑選手、内野は森越選手(と途中から平野コーチも?)、外野は狩野選手もサブグラウンドで守備練習。確か狩野選手はメイングラウンドの特打にもいたような?ティーバッティングだけだったんでしょうか?

初のフリー打撃で場外に5本!

その特打は、坂選手、柴田選手、西田選手とルーキーの高山選手、板山選手という顔ぶれでした。板山選手は全体練習のバッティング回りはもちろん、前日には個別練習の特打も経験済みですが、高山選手はとにかく屋外で打つのも初とあって、取材陣のみならず準備を始める様子を見たスタンドのお客様も、カメラを構えて早くからスタンバイ完了!監督、コーチ、視察に来られていたOBの方々もバッティングケージを取り囲んで、その時を待ちます。

高山選手の特打を見ようと首脳陣やOBの安藤統男さん、真弓明信さんらが集合。
高山選手の特打を見ようと首脳陣やOBの安藤統男さん、真弓明信さんらが集合。

ティーバッティング中には練習用の黒い上着を着ていた高山選手。でも暑くなってきたのか、途中で脱いできました。そういえば、これまでシートバッティング見学などは黒いウエアだったので、背中の『9』を改めてじっくり見た気がします。なかなか似合いますね。やがて順番が回ってきてケージに入った高山選手が打ち始めると…!

いやーもうビックリしました。ポンポンと跳ね上がる打球が外野ネットを揺らし、バックスクリーンにゴンッ!と当たり、スタンドでも「ほお~」と感嘆の声が漏れます。私もケージの中の高山選手を撮ろうとライトの外周へ移動したのです。するとバットの音がしたあとヒュルヒュルと飛んでくる打球の音も聞こえて、そのままネットやバックスクリーンに当たる。結構な迫力でした。

ケージでは前の組がバッティング中。高山選手は静かに待機します。
ケージでは前の組がバッティング中。高山選手は静かに待機します。

内野、外野と駆け回るカメラマンさんが、すれ違いざまに「すごいよ!」「また越えた!」と興奮気味。そう、場外弾です。集計結果は既にニュース等でご存じだと思いますが、書かせてください。59スイングで安打性の当たりが48本。そのうちサク越えは20本で、3連発が2度。バックスリーンやライトフェンスを越えた場外弾は計5本という内容です。ちなみに打ち終わった時に起きたグラウンドとスタンドの拍手は、外野にいても聞こえました。

「打球より形、感触より感覚を」

ではまず本人、高山俊選手のコメントをご紹介しましょう。屋外でのフリーバッティングは3ヶ月ぶり?「そうですね。(右手を骨折したのが)10月なので、3ヶ月ぶりくらいです」。あそこまで飛んだ感触は?「掛布さんに室内でいろいろ打ち方を教わったので、きょうは打球より形ですね。いいのがいったからというよりは打ち方、打球がよくなくてもいい打ち方を、という考え方でやりました」

上着を脱いで再登場した時、シャッター音に包まれる背番号『9』
上着を脱いで再登場した時、シャッター音に包まれる背番号『9』

まだ本隊に合流はしていない高山選手ですが「たとえ、きょうサク越えが1本もなかったとしても、怪我の怖さを自分で知ることができた時間。これをいい時間にするのは自分次第だと思ったので、いい方向にとらえていきたい」と話しています。特打を選んだのは、早く屋外でのフリーバッティングを見てほしいという思いも?「見せたいというよりは、いい感じできているので…というくらいの気持ちでした」。弾道の先も見たかったからかと聞かれ「それはあります」と即答。

それにしても場外5発なんて、なかなかないこと。「それより形ですね。いい打球が出てホッとしていますが、それより形にこだわっていきたい。感触というより、いい“感覚”でした」。大学でも練習では飛ばしていた?「どうですかね。パワーはついたと思います。腕のパワーだけじゃなくて教えてもらった体の使い方ができたかなと。まだ全部じゃないけど、伝え方がわかってきたかなと思います」

さあいよいよ出番です!バッティングケージに入る高山選手。
さあいよいよ出番です!バッティングケージに入る高山選手。

改めて「きょうは“打たせてもらうボール”だった。それでも何球か打ち損じがあったので。ピッチャーは打たせないように投げてくる。ここで満足していたらダメ。確率、形、パワー、もっともっとという感じはありました」と、あくまで通過点を強調。またスローイングについては「きのうキャッチボールをしましたが、あれくらいは投げられますね。怪我してバッティングを何ヶ月できていないけど、ボールも同じだけ投げていない。そこも徐々に」とのこと。

掛布監督が「野球に飢えているんじゃないかな」と表現していました。「それはそうですね。全然やれなかったので。だから、きょう外で自分がどれだけかを確かめられたのはよかったと思います」。確かめた結果がよかったと、手放しで喜んでいるわけではないクールな高山選手ですが、チームにとってもファンの皆さんにとってもインパクトは十分!実戦が楽しみでなりません。

強さと柔らかさを持った高山

次に、自主練習の特打でバッティングピッチャーを務めた筒井打撃コーチです。高山選手の20発に「サービスしすぎたかなあ」と笑いながら「やっぱりメチャクチャいいものは感じますよね」と、メチャクチャの部分に力を込めました。「それ以上は、まだ本隊に合流していないので今のところはないですが、スイングスピードも速いしバランスもいい。合流してから見たいと思います。打球の質もいいものを感じた。強さと柔らかさも持っていますね。今はいいものしか見えないから、今後どう変化していくかでしょう」

ちなみに、この日の風はご覧のように右から左へ吹いていました。そこそこ強く。
ちなみに、この日の風はご覧のように右から左へ吹いていました。そこそこ強く。

筒井コーチは板山選手にも言及。「下半身の動きがしっかりしていると思う。低くて強い打球が打てる。伸びる打球を。楽しみですね。高山は運ぶタイプ、板山は弾丸ライナーでそのままスタンドに放り込むタイプかな。板山は今の段階で合格点。あれだけ振れたらいい。体が強いし、取り組む姿勢もいい。どんどん鍛えてアピールですね。低くて強い、という特徴を消さないように取り組ませています」

「俺の想像を上回っていた!」

掛布監督は開口一番で「言った通りだろ?鳴尾浜で見て、ただのバッターじゃないよ、20本や30本は打てる能力があるよ、と。ちょっと俺の想像を上回っていたけどね(笑)」と上機嫌。「本人も嬉しいというか、野球に飢えていたと思う。別メニューだったしね。自主練習は『外で打ちたい』と書いていて、それがきょうの10分間」と続けています。

「やっぱりインコースだと、ボールを飛ばしたいという気持ちがあるのか右足の使い方が雑になっていたけどね。力んでいたかな。だから右足が雑になった。うまく使えたらホームランの数がどうかはわからないけど、打ち損じは減ると思う」。左中間に強い打球が飛ぶのもすごい。「フォローが大きいね。打球方向に放り出せる」。私も外野でカメラを構えていて、大きなフォロースルーを目の当たりにしました。

それによって「自分の力がバットに伝えられる。後ろがコンパクトで前が大きいから」と掛布監督。巨人の高橋由伸監督のようなタイプかと聞かれ「由伸は完成されていたけどね。第3、第4クールくらいになれば、もっといい形で打てると思う。由伸みたいになる可能性は秘めていますよ。20本じゃなく30本打てる。打球が落ちてこないよね。スピンがかけられる。由伸もスピンをかけて飛ばすタイプだし」と説明。

あれだけのものを壊すわけにいかない

今後の展望としては「できれば肩やヒジの状態が上がって、ある程度投げられれば、結果はわからないけど実戦に出られるようになれば上(1軍)で試した方がいい。下では結果を求めず、実戦に出られるかどうか判断できれば、そのとき金本監督に電話しようと思います」とのことでした。

掛布監督の横で西田選手も、ケージ内の高山選手を見ています。
掛布監督の横で西田選手も、ケージ内の高山選手を見ています。
大きなフォロースルー。そして打球を追って顔が動く、うしろの皆さん。
大きなフォロースルー。そして打球を追って顔が動く、うしろの皆さん。
ライトフェンスの外側、通路上のネットに乗ってから落ちてきた打球。
ライトフェンスの外側、通路上のネットに乗ってから落ちてきた打球。

20日の練習試合(西武B班・安芸)をメドにと掛布監督は以前から話しています。「その日がずれ込んでもいいよと高山に言ってる。焦らせるつもりもないけど、メドが立たないと調整できないでしょ?また疲れが出たり右手に張りがあったりするかもしれないし、無理はさせない。本人が大丈夫であれば20日から実戦で使いたいね」

そうしたらすぐ沖縄へ?「となると(キャンプの残りが)1週間でしょ?本隊が帰ってきてからでも遅くない。いま電話するつもりはないけど、実戦ができたら報告したい」。勇み足は禁物ってことです。

「あしたキャッチボールさせて、その状態で判断します。あれだけのもの、壊れるのが怖いよ。久々に見たね、新人のバッティングで(あの打球)。久しく見ていないんじゃないの、ああいう新人。走る練習でも馬力がある。スピードはトップクラス?入るよ。速さもある。室内で打っていてこれくらいはあると思ったが、それより守っている姿、午前中の走る姿とかを見て安心した部分が強いですね。肩やヒジができれば大丈夫と」

次の自主練習日は8日

最後に掛布監督は「意味のあった一日だと思いますよ。自主練習で。担当コーチのOKも出ましたからね」と高山選手の特打を振り返り、そのあと「板山もすごくいい。右ひざの使い方は板山の方がいいよ。あとは植田、柴田、坂、狩野もすごくいい状態」と話しています。次の『自主練習』は8日、練習試合の3日前ですね、選手たちはどんな希望を出すのでしょう。

なおドラフト3位の竹安大知投手が、きのう3日にプルペンで捕手を立たせて30球を投げました。竹安投手のコメントや、既に本格的なピッチングをしている青柳晃洋投手、そして力感の増した2年目・守屋功輝投手の話などは、また改めて書かせていただきます。お待ちください。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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