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3ヶ月の“留学”で得たものを生かし、宮崎で投げまくる!トラヴィス投手《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
とても自然な笑顔でカメラを見られるようになりましたね。これも“留学”の成果?

若手選手たちが2週間余り宮崎に滞在して野球漬けの毎日を送る、秋季教育リーグ『みやざきフェニックス・リーグ2015』。ここで一気に成長する選手、活躍して翌年の1軍切符を引き寄せる選手などがいて、まさに実りの秋を過ごすわけです。と言いながらクライマックス・シリーズ出場選手の調整の場となりことも多々ありますけどね。

ことしは5日に開幕して、雨の心配もなく無事に試合が消化されています。阪神タイガースは6日に1軍の選手が何人か参戦しました。きょうも見事に1軍メンバーが先発のようで、南郷スタジアムの西武戦は 1(二)上本、2(指)大和、3(三)今成、4(一)新井良、5(中)江越、6(左)俊介、7(捕)江越、8(遊)坂、9(右)中谷、(投)松田 という先発オーダーで行われています。

10月の宮崎。早くこの青空を見に行きたいものです!
10月の宮崎。早くこの青空を見に行きたいものです!

なお、1軍メンバーは今夜の中日-広島戦の結果に関係なく試合後に帰阪予定。また、きょうは岩崎投手、岡崎投手、植田選手が宮崎入りするようです。

私は第2クールと最終の第5クールしか行けないため、それ以外は試合の詳細をお伝えできなくてすみません。なお、ことしも19日以外の休日に組まれている練習試合は、うまい具合に見られると思いますのでご報告します。相変わらず更新に時間はかかりますが…気長にお待ちくださいませ。

実りの秋を誓うトラヴィス

きょうは福井から戻ってきたばかりで宮崎へ行った、トラヴィス投手の話をご紹介します。9日が誕生日ということは、宮崎で22歳になるんですね。ケガなくフェニックス・リーグに参加して迎えられるバースデーも嬉しいことでしょう。では、まず5日と6日の試合について、スコアとバッテリーのみ書いておきます。

《フェニックス・リーグ》10月5日

阪神- DeNA (SOKKEN)

DeNA 100 020 000 = 3

阪神 000 001 000 = 1

◆バッテリー

【阪神】横山(5回)-二神(1回)-筒井(1回)-守屋(1回)-田面(1回) / 清水

【DeNA】三嶋(7回)-萬谷(1回)-平田(1回) / 嶺井-亀井

《フェニックス・リーグ》10月6日

斗山- 阪神 (清武第2)

阪神 212 601 000 =12

斗山 000 000 103 = 4

◆バッテリー

【阪神】岩貞(5回)-榎田(2回)-藤原(1回)-トラヴィス(1回) / 梅野-小豆畑

◆本塁打 今成、坂、伊藤隼

トラヴィス投手はきのう6日の韓国・斗山ベアーズ戦で登板しました。結果は9回1イニングで3安打3失点。ただし本人によれば「ツーアウトを取ってから、ショートのエラー、センター前ヒット、サードのエラー、デッドボール、レフト前ヒット、ファーストゴロ、ゲームセットです」とのこと。2死後のエラーとヒットで失点は3ですが、自責点0なんですね。

「きょうの試合も、始めての経験がありました。それを生かして、次は頑張ります!」とトラヴィス投手。初めての経験が何だったのか、現地へ行ったらまた聞いておきます。

北陸~近畿~九州と大移動

福井へ行く前、6月24日のソフトバンク3軍戦で先発したトラヴィス投手。
福井へ行く前、6月24日のソフトバンク3軍戦で先発したトラヴィス投手。

ことしの新たな取り組みとして、ルートインBCリーグの福井ミラクルエレファンツに前半は田面投手、後半はトラヴィス投手を派遣した阪神タイガース。もと1軍ヘッドコーチの吉竹春樹監督率いる福井は前期優勝、後期は僅差で2位だったものの、地区チャンピオンシップ(プレーオフ)を制して西地区のチャンピオンになりました。それだけでなく、BCリーグチャンピオンシップにも登板するなど貴重な体験をしてきたトラヴィス投手です。

後期優勝の富山GRNサンダーバーズと対戦した地区チャンピオンシップは2勝1敗。「中継ぎで3戦目に投げました。ワンポイント的な登板です。これがまたぶっつけ本番だったし、バランスが悪くて…。内容はよくなかったけど、でも自分にとって勉強になった試合でした」と言います。これが西地区チャンピオンとなった9月22日のこと。さらに、雨で延びた影響もあって、休みなく23日から始まったリーグチャンピオンシップの2戦目、9月24日に中1日で先発しました。東地区を制した新潟アルビレックスBCとの対戦で、そちらへの移動も含めての中1日登板です。

8月14日、金沢市民球場での福井・トラヴィス投手。もう少し痩せてきたかな?
8月14日、金沢市民球場での福井・トラヴィス投手。もう少し痩せてきたかな?

そのリーグチャンピオンシップは9月23日の第1戦で負け、翌24日の第2戦もトラヴィス投手が先発して5回2失点とゲームは作りながら3対1で敗れています。結局3戦目も落としてしまい、新潟が3勝0敗でルートインBCリーグの今季チャンピオンに決定しました。

ちょっと話は逸れますが、新潟アルビレックスBCの監督は、もと近鉄のピッチャーとして活躍された赤堀元之さん!新潟は今『日本独立リーグ グランドチャンピオンシップ』で、四国アイランドリーグplusの覇者・愛媛マンダリンパイレーツと対戦中です。愛媛はもとオリックスの弓岡敬二郎監督で、この2人はオリックスで同時期に監督やコーチをされていました。ひと回り違いの戌年対決ですね。まず愛媛が連勝していて、10日から第2ラウンドが始まるそうです。

帰ってきてから、9月29日のオリックス練習試合で登板したところ。細いっ
帰ってきてから、9月29日のオリックス練習試合で登板したところ。細いっ

かなり脱線して、すみません。9月25日のリーグチャンピオンシップ3戦目に敗れ、その日は新潟で1泊した福井のメンバー。26日朝に出発し、バスで6時間かけて午後、福井につきました。トラヴィス投手はそのまま自身の部屋に戻って引っ越し支度です。もう荷作りはしていたの?「いえ何も。全然」。その日に帰るのに?「…はい」

同級生のチームメイトが手伝ってくれて荷物を運送会社に預け、トラヴィス投手は福井を後にしました。鳴尾浜の寮へ帰ってきたのは21時半だったとか。1日で新潟~福井~西宮という移動だったわけですね。しかも間に“引っ越し作業”を挟んで。その翌日、9月27日は鳴尾浜でみんなと練習をし、ようやく28日がお休み。そして29日には神戸サブで行われたオリックスとの練習試合で登板しています。

10月2日に今度は鳴尾浜でのオリックス練習試合で投げ、翌日また荷物を出して4日には宮崎入り。地区チャンピオンシップから怒涛の2週間だったんですねえ。お疲れ様でした。

野球経験プラス人生経験も

6月末に田面投手と入れ替わりで福井へ引っ越して行ったトラヴィス投手。行きっぱなしじゃなく、田面投手は定期的にメディカルチェックで帰ってきていましたね。ウエスタン公式戦で登板したこともあったし。「はい。僕も1回帰ってきたんですけど、2回目と3回目は雨で向こうの試合日程がずれてしまって。結局1回だけでした」。8月に金沢で会った時も移動や食事について話を聞き、大変だなあと思ったのですが「野球経験はもちろん、すごい人生経験もさせてもらった」と約3ヶ月の“留学”を振り返ります。

高い身長に長い手足、これが大きな武器になるはず。
高い身長に長い手足、これが大きな武器になるはず。

「収穫はたくさんあります。何より今まではずっとケガで悩んでいたので、バランスが悪いとかピッチングフォームで悩んだことはなかったんですよ。だから“こういう悩みっていいものなのかも”と思いました。とにかく投げ続けたことが初めてで、そこでわかることがたくさんあった。自分にとってケガなく1年を過ごすのが初。得るもの、投げてわかるものは大きいですね」

試合においては「ノーアウト一、二塁とかのピンチでマウンドに上がることもありました。後半はそういうのが多かったですね。そこでおさえたことも結構あったし」と言います。そういう点でも自信になったのでしょうね。フェニックス・リーグでは「しっかり投げること。そのための準備が大事だと思います。結果も大事ですけど、まずはどんどん投げていきたい。1人1人のバッターを大事に勝負していくこと。それと、長所を伸ばせるように頑張ります!」との抱負でした。

長所とは?「指にかかった真っすぐです。かかったり、かからなかったりしているので、同じフォームで同じボールを投げられるようにしたい」。そのためにも数多く登板して、数多く投げると意気込みます。体重は3キロ減って、でも身長は2センチ伸びたというトラヴィス投手。帰ってきてからは少しづつ戻っているそうですが、宮崎で美味しい地鶏を食べてど~んと増やしてきてくださいね。まだ背が伸びそう(笑)。もちろんケガなく、元気に過ごすのが一番。

目を閉じかけたところを撮っちゃった…と言ったら、次はこんな顔をしてくれました。
目を閉じかけたところを撮っちゃった…と言ったら、次はこんな顔をしてくれました。

福井での時間がトラヴィス投手に与えたものは、これから表れてくるのでしょう。「とてもハードな3ヶ月間でした。自分の財産にもなった。この経験を生かせるようにしたい。生かして試合でどんどん投げて、支配下選手登録を勝ち取れるように」。温和な性格の彼から、“勝ち取る”という言葉が出てきました。まもなく22歳になるトラヴィス投手の、前向きな変化のひとつです。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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