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甲子園球場で初開催のファーム交流試合 阪神vs巨人 第1ラウンド

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
6回10奪三振で4勝目を挙げた関口メンディー投手…ではなくて秋山投手です。

きのう31日の阪神甲子園球場は、1軍が留守中にもかかわらず朝から賑わっていました。2011年に一度、1試合だけ組まれて雨天中止となった、甲子園でのファーム交流試合が行われたのです。球場の警備員さんに伺うと、いつものウエスタン・リーグ公式戦ではありえない時間、朝6時から既にお客様が並ばれていたとか!どんどん増える入場待ちの列に、通常より30分早く11時開門となりました。それでチームの練習時間と重なったため、選手のお出迎えができなかったようですね。

試合開始前のスタンドは何とも言えないざわつきで、特に普段はない“オレンジ色”が目につきましたね。1回表から巨人の応援歌が聞こえ、小虎ファンの皆様はちょっと圧倒された感が…。こちらも選手のテーマ曲は流れるんですけど、音量が低いように感じたのは“ざわつき”のせいでしょうか。そうそう!これまでの甲子園開催ゲームにはなかった、スタメン紹介が1軍と同じように大型ビジョンで選手の映像が流れたのは新鮮でした。本人たちは見ていない時間帯ですけど。

甲子園開催試合で史上3位の観衆

発表された観衆は4478人。このところ3000人を超えたことがなかった甲子園での試合ですが、ことしは5月3日のソフトバンク戦で2009年以来の3026人のお客様を迎えています。そして、この日はやはり2009年9月23日(田中秀太選手の引退試合)の7054人、同じく5月5日の広島戦(岩田投手が先発)の5754人に次ぐ多さとなりました。5000人を超えたらバックネット裏だけでなく、一塁内野席も開放する段取りだったそうですよ。

試合は、秋山投手が気迫に満ちた直球勝負で6回10奪三振の力投!先に失点したものの、打線が“相手守備をかく乱するヒット”も含む5連打で大逆転。とどめは好リードを見せた小宮山選手が1年ぶりのホームランを放っています。なお故障明けの福原投手が久保田投手が登場した時の「おお~!」という、あのどよめきは一番の盛り上がりでしたね。

《ウエスタン公式戦》

ファーム交流試合5月31日

阪神-巨人 1回戦 (甲子園)

巨人 020 000 000 = 2

阪神 000 500 01X = 6

◆バッテリー

【阪神】○秋山(4勝3敗)-福原-久保田-玉置 / 小宮山

【巨人】田中(2回1/3)-●公文(1回1/3)-雨宮(3回1/3)-越智(1回) / 井野-鬼屋敷(4回途中~)

◆本塁打 小宮山1号ソロ(越智)

◆二塁打 辻、大累

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]中:柴田  (4-2-0 / 1-0 / 0 / 0) .266

〃打中:田上 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .000

2]二:北條  (4-2-0 / 0-1 / 0 / 0) .226

3]遊:西田  (5-2-2 / 0-0 / 0 / 0) .240

4]右:伊藤隼 (3-1-1 / 0-2 / 0 / 0) .259

5]一:森田  (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .250

6]三:陽川  (3-2-1 / 0-1 / 0 / 0) .225

7]左:中谷  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .186

8]指:一二三 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .167

〃打指:横田 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .167

9]捕:小宮山 (4-2-2 / 0-0 / 0 / 0) .133

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

秋山  6回 100球 (5-10-1 / 2-2 / 2.26) 145

福原  1回 14球 (0- 1-0 / 0-0 / 0.00) 145

久保田 1回 11球 (1- 0-0 / 0-0 / 0.00) 146

玉置  1回 10球 (0- 0-0 / 0-0 / 2.70) 145

ラッキーでもポテンでもヒットはヒット!

秋山は2回、坂口の中前打と辻の右翼線二塁打で1死二、三塁として井野は三振で2死となりますが9番の大累に左翼線ギリギリに二塁打され2人を還しました。打線は3回までノーヒットながら4四死球やエラー、一二三の振り逃げなどで塁上を賑わせたものの得点なし。特に3回は1死満塁までいったんですけど、そこで先発・田中から左の公文に代わり、森田が三振に倒れるなど後続を断たれました。

しかし4回、先頭の中谷が右前打し、一二三の三ゴロで1死二塁となって小宮山の右前タイムリー!中谷も好走塁です。柴田が左前打、北條はセカンド、ファースト、ライトの間に落ちるポテンヒット(公式記録は右前打)で1死満塁。続く西田も右翼線へフライを打ち上げ、今度はセカンドとライトが追ってセカンドが捕った…と思ったら倒れた際にファウルゾーンでボールがポロリ。捕球はフェアゾーンだったため続行、2人が生還(記録は右翼線安打)して、次の伊藤隼も中前タイムリー!

まだ続きます。森田は三振で2死となり、ここで公文が降板。代わった雨宮から陽川が左前タイムリー!この回打者一巡で、5連打を含む7安打でを集中させた打線は一挙5得点と逆転に成功しました。8回には小宮山がレフトへソロホームランを放ち、6対2としています。

秋山は3回以降1安打のみで、三振は毎回の10となった6回で交代。3回、5回、6回は三者凡退です。そして7回は福原が下位打線ながら内野ゴロ2つと見逃し三振の三者凡退。8回の久保田は先頭の和田恋に中前打されたものの、遊飛と一ゴロ併殺打で3人で片づけました。この併殺打はファースト森田が素早く捕り、流れるような送球で封殺、そして一塁で捕球と素晴らしい動き!風岡内野守備走塁コーチも試合後に「あれは良かった。ナイスプレー!やったらできるんや」と絶賛でした。

福原、久保田と贅沢なリレーを締めたのは玉置。4番大田を左飛、代打・北之園は中飛、最後は代打・高橋洸を遊ゴロに打ち取って試合終了。決め球はすべてストレートでした。残念ながら?8回に小宮山がホームランで1点追加したのでセーブはつきませんね。

試合後の平田監督はまず「甲子園での巨人戦、ジャイアンツの方も風がある甲子園でやらせたいというので実現したんだよ。新鮮やな」という感想。秋山投手については「気合入っていたねえ!三振多かった。最初から飛ばしていて、へばるかなと思ったけど逆転してから上がったね。カーブも使ったりとかしてた。お客さんが4万人も入って(笑)、巨人戦だし、ベンチにいて気持ち伝わるもん」と話しています。

また打線には「4回に集中打が出たね。北條や西田(の打球)がいいところへ落ちたのは、しっかり振ってるからや。隼太も続いて、陽川の5点目が大きかったで。コミちゃんのホームランなんかねえ!」と、ナイスゲームに明るい口調。まだスタンドに残るお客様に手を振りながら「ありがとうね。あしたも来てよ。あしたは榎田が投げる。予告先発や」と大サービスの平田監督でした。

秋山、今季初の2ケタ奪三振

もう1枚、秋山投手。いい笑顔ですね。次は背景が満員のお客様で埋まる1軍戦で!
もう1枚、秋山投手。いい笑顔ですね。次は背景が満員のお客様で埋まる1軍戦で!

秋山投手の2ケタ奪三振は2012年に2度、昨年は1度(7月31日の完封勝利)あり、すべてオリックス戦。しかも神戸サブか北神戸でした。イニングも8回か9回なので、6回10三振は初めてのこと。なおチームとしては、ことし3月25日の中日戦(ナゴヤ)で藤浪投手が7回を投げて10奪三振というのがあり、それ以来ですね。

「三振10個でしょう?三振が多いと…しんどいです」と苦笑いしながらも、試合後の秋山投手は充実感が伝わってくるような笑顔でした。気合十分のピッチングだったね。「腕が強く振れる投げ方にはなってきたと思います。怖がらずに左肩を開くというか、隠さないピッチング。今まではそれが怖くて投げる球がない感じになってしまっていたけど、今は腕を振れる投げ方になってきたかなと。ただ、真っすぐで押せてはいますが、フォークが全然。全部引っかけてしまって(打者の)反応もないので…」

そのフォークの必要性を「真っすぐ走った分、カウントは取りやすかった。あれだけ真っすぐを投げられたら、フォークがあればもっと。カットボールなどの横の変化だけじゃなく、縦があれば」と語ります。三振の数にこだわりはないけれど、フォークがあればもっと楽に打ち取れたということでしょう。

6イニングでの交代は、福原投手や久保田投手が登板予定だったからのようです。「5回が終わった時に、次が最後と言われました。100球で体力的には気にしていなかったけど終わってみたら、暑かったし三振の分で結構しんどかったみたいで」と秋山投手。自分が感じるより疲労はあったんですね、きっと。「150球くらい平気で投げられるようになりたい。ランディみたいに」。1軍再昇格に向けて「この前の打たれ方にしても、1軍で同じことを繰り返しているので…“大事に”というのを課題にして投げていきたい」と締めくくりました。

マルチヒットの4選手

4回にダメ押しのタイムリーを放ち、平田監督に称賛された陽川選手は「当たったのは(バットの)先っぽ」と自己申告。次の7回に出た中前打は?「先っぽです(笑)」。いいですね。繰り返しはギャグの基本、さすが関西人。それはさておき、4回2死一、三塁で迎えた打席は雨宮投手に代わったところ。変則フォームでしたが「最初はゆったり、リリースでピュッと来るけど、そんなに打ちにくくはなかったです」とのこと。

でも、その雨宮投手からヒットを打ったのは陽川選手だけで、しかも2本ですよ。「投げる時に沈んで、真っすぐが下から出てくる感じでしたね。打ったのはスライダーです」。プロの実戦に臨んで約4か月、いろんなピッチャーと対戦して「最初に比べたら、しっかりバットを振れて対応できるようになったと思う。はじめは真っすぐで差し込まれて右方向にいっていたけど、最近は徐々に引っ張れるようになりました」と話しています。

北條選手は4回のラッキーヒットに加え、8回は越智投手からきれいな左前打。「越智さん、知ってますよ。小学校か中学校の時に家でテレビ見てましたもん。真っすぐ速いし、フォークえげつないし、すごい人やなあ!って思ってた」そうです。同じく越智投手から“らしい”バットコントロールでレフト前へ運んだ西田選手は「それより4回。スタンドのお客さんに『ボール球振るな~』とか野次られたので、絶対打ったる!と思ってた」と、逆転の2点タイムリーを振り返りました。

いい当たりの左前打2本を左右両投手から放った柴田選手。両方ともファーストストライクを打ったものです。「雁の巣であんまりいい感じじゃなかったし、きょうは情報の少ないピッチャーだったので、早いカウントから仕掛けていかないと自分のタイミングで打てないと思ったから。4回はあとがつないでくれてよかった」。それにしてもラッキーヒット2つで「ランナーは難しいですよねえ。北條も西田も、おんなじようなの打って(笑)。エラーするやろなと思ったけど、捕っても戻れるようにハーフウエーで見ていました」

11年目で初?甲子園のホームラン

うまく笑顔が撮れなくて残念。好リードとホームランなど2安打の小宮山選手。
うまく笑顔が撮れなくて残念。好リードとホームランなど2安打の小宮山選手。

最後は同じくマルチヒットの小宮山選手で、まずは「久しぶりやなあ~」とホームランの感想。昨年5月11日のソフトバンク戦以来ですね。2008年に中日の朝倉投手から打った初ホームランから9本目、1軍の第1号(2012年9月26日にヤクルトの赤川投手から)も合わせると10本目、これが小宮山選手にとって甲子園初アーチとなりました。取材中は気づいていなかったんですが、おそらく甲子園では初めてではないかと。

これまでの9本は1軍が神宮球場で、ファームはナゴヤ球場、雁の巣球場、サンマリンスタジアム宮崎が1本ずつで、鳴尾浜では2本、そしてマツダスタジアムが3本。マツダでは2010年にプロ初の1試合2本、翌2011年は河内投手からこれまたプロ初の満塁ホームランを放っています。9本中5本が広島戦なので、相性いいんでしょうね。

今季1号139キロの真っ直ぐを打ったもので「真っすぐ1本でいきました。もう少し早かったらファウルになっていたかも。感触は…よくわからないです」と小宮山選手。4回にも一、二塁間を抜く右前打があり「1打席目が最悪だったので(2回1死一、三塁で投ゴロ併殺打)何とかしたかった」と言います。守っては25日に好投した淡路に続いて秋山投手をリード。時おり混ぜたカーブが効果的でしたね。「真っすぐが一番いいボールなので、向こうも印象が強かったんでしょうね。相手ベンチから『真っすぐいけ、どんどんいけ』って声が聞こえた。うまく“抜け”ました」。グッジョブです。

きょう1日も甲子園での巨人戦。先発は平田監督の予告通り、榎田投手です。巨人は小山投手だと思うんですけど、31日に予定されていたセドン投手が田中投手に変わったので、ちょっとわからなくなりました。すみません。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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