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『ルーズヴェルト・ゲーム』で、もと小虎の社会人チームが注目される効果も期待

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
2日のJABAベーブルース杯大会で和歌山箕島球友会の穴田選手。ケガの直前です…。

現在放送中のドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』は、ご覧になっていますか?存亡の危機に立たされた会社と、その会社が抱える野球部とを描いたもの。もと小虎たちで、ことしは社会人野球チームに行った選手が多いこともあって興味深く見ています。余談ですが、工藤公康さんのご子息・工藤阿須加さんがいい表情していますよねえ。24日に西武ドームで始球式を行うとか!ドラマの役である天才投手・沖原和也としてでしょうか。

ドラマと同じように、社会人野球は今ちょうど都市対抗野球の地区予選が行われているところです。もと小虎たちの所属チームは、まず近畿地区第2次予選で、18日に穴田真規選手の和歌山箕島球友会が三菱重工神戸と対戦(明石トーカロ球場)しました。もと阪神、日本ハムの若竹竜士投手が今年入社していますけど、この日は登板せず。阪神ファームとの交流試合でおなじみの守安投手が完投し、4対0で三菱重工神戸が勝っています。

他に橋本良平選手が所属するパナソニックが22日に登場します。藤井宏政選手が副キャプテンを務めるカナフレックスは滋賀1次予選の準決勝で敗退し、来年に望みをかけることになりました。近畿以外では、林啓介選手の西濃運輸が22日からの東海地区2次予選(岡崎市)に、また野原将志選手がいる三菱重工長崎は31日から九州地区2次予選(沖縄県)に出場。近畿は第5代表まで、東海は第7代表、九州は第3代表までが本戦に出場です。

上本先輩に続いて完全復帰を

さて17日、18日と鳴尾浜でファームの試合に出場した上本選手は、もう1軍に合流できそうな勢いですね。右手親指骨折から半月、驚異の回復力です。そう伝えると、阪神に在籍した時からお世話になっていたという穴田選手は「やっぱり、すごいですね~あの人は。いきなりヒット打ったんですか?スゲーわ!」と驚くやら、感激するやら。かくいう穴田選手も、実は同じ頃にケガをしてリハビリの毎日でした。

2日の試合で守備の際に右足を痛め、負傷退場する穴田選手。軽く済んで何よりでした。
2日の試合で守備の際に右足を痛め、負傷退場する穴田選手。軽く済んで何よりでした。

今月2日から岐阜県長良川球場で始まった社会人野球のJABAベーブルース杯大会に出場した和歌山箕島球友会。ここで優勝すれば、秋に開催される日本選手権の出場が確定するとあり、穴田選手も張り切っていました。ところが初日の東芝戦の守備で「ショートゴロを捕りに行った時、ちょっと滑って開脚してしまったら、左太ももでゴリゴリって変な音が…」

診察の結果は軽い肉離れだったようですが、2週間の安静が必要とのこと。その頃には都市対抗野球の近畿地区第2次予選が始まるため「1次突破で、さあ行くぞ!ってとこでケガ。テンション下がっちゃいましたよ」とガックリだった穴田選手。なお 東芝戦は6対10で負け。2日目の西濃運輸戦では林啓介投手が先発。4回まで1安打無失点のピッチングだったそうですが、5回に2点を失っています。和歌山箕島球友会は穴田選手がベンチから大きな声援を送ったものの2対10で7回コールド負け。西濃運輸は林投手が7回2失点完投です。3日目はJFE西日本に1対5で負け、決勝には進めませんでした。

「チームが勝つなら何でもいい!」

それから2週間、安静加療に努めた穴田選手は、都市対抗近畿地区第2次予選1回戦が行われる2日前の16日から練習に復帰。まだ痛みがあり、バッティングは問題ないけど守備は無理かな、という状況だったそうです。でも出ちゃいましたよ。穴田選手いわく「最後の方にちょろっと」。8回表に守備から出場し、打球を2つ処理。8回裏の攻撃では先頭が右前打を放ち、次の穴田選手は「カウント2-2、変化球4つ続いたあとの真っすぐ」で空振り三振。「監督はまだ出さないつもりだったんですけど、僕がいけると言いました。そしたら、お前はのちのち使っていく選手やから代打だけでもと」。ありがたい言葉ですね。

というわけで試合前のノックにも参加しましたが、ピンチヒッターだけのつもりだったみたいですよ。この日は簡単な打球だったものの、また開脚したりしたらエライことになったかもしれません。いや~よかった。

すごい目力ですが、実は三振した自分に腹を立てながら戻ってくるところ。
すごい目力ですが、実は三振した自分に腹を立てながら戻ってくるところ。

和歌山箕島球友会は、同じく1次予選を勝ち抜きながら2次初戦で負けてしまった3チーム(トータル阪神、大和高田クラブ、NSBベースボールクラブ)と敗者復活戦に回り、今度は第4代表を目指していくことになります。次は27日に舞洲ベースボールスタジアムで大和高田クラブと対戦。足の具合は心配ですが、穴田選手は「次負けたら終わりなんで」と、先発出場を誓いました。

「今、一番楽しいのは、やっぱり野球の試合をしているときですね。阪神にいたおかげで、すべて、特に守備がよくなったと思います。今の目標は、個人のことはどうでもいい。企業チームに勝ちたいですね。チームが勝てるように僕も活躍したいです。ほんとチームが勝つなら、なんでもいいです!」

あらゆる人に感謝を込めて…

和歌山に行ってから1日しか休んでいないと、前に穴田選手が言っていました。和歌山箕島球友会の選手が働くのはスーパーマーケットのマツゲンです。「仕事が休みでも野球があるし、野球が休みの時には、日ごろ僕たちが早く上がるため代わりに頑張っていただいている人たちのために、自分たちが少しでも手伝おうって先輩から言われています。だから休みはありません」。これは西川監督からも伺った話です。試合があって忙しい土日に休まなくてはならない、そんな時でも職場の皆さんは「頑張れ」と気持ちよく送り出してくださると聞きました。その感謝の気持ちを表わそうとのこと。雨で試合が流れたら職場に行き「きょうは僕がやるから、たまには早く上がってください」と声をかけるそうです。

3月までは揚げ物担当で唐揚げの腕前を上げた穴田選手。「4月から正社員で、同じお惣菜のところにいるんですけど、揚げ物から“おかずセット作り”に変わりました。油で熱くないのはいいんですけど、慣れないから大変です。でも筑前煮とか、すきやきとか作っています。先輩たちに教わりながら。家でも、たまに作りますよ」。へえ~いつでもおムコさんにいけますね。「はいっ!(笑)」

それから穴田選手は「プロから社会人になって、ほんとお金を稼ぐのは大変だって思った。阪神の時は親がお金を預かっていて、月5万円で生活していたんです。それでも何も使わなくてよかった。でも今は家賃がいくら、ガソリン代はいくらって計算しますもん」と言っていました。野球用具の提供も、社会人はありません。「道具だって今は自分で用意しないといけない。でも、僕の場合は本当に阪神の方々がすごくよくしてくれて。寮を出る時にいっぱいくれたんです。そのあとも森田さんからは大量に届きましたし、上本さんは会社にバットケースごと10本送ってくれて」。それはオトコマエですねえ!上本選手。

「しかも、いろんな種類が入っていて、その中で『使いやすいのを言えよ、送るから』って…。もう泣きそうです。上本さんには、お財布もいただいたんです。お金をしっかりためろよって。大事に使っています」。感謝の思いを口にする穴田選手は、一番の恩返しが何かをちゃんと知っているはずです。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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