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最終回、引き分けに持ち込んだ荒木の足 阪神ファーム

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

20歳のパパ、プロ初勝利はお預け

10日、甲子園でナイターのDeNA戦が始まる10分前に球団広報からメールが届きました。『歳内選手に第1子が誕生しましたのでお知らせいたします。きのう4月9日、福井県内の病院にて3116グラムの女のお子さんが誕生。母子ともに健康です』。ひゃあ~今季初昇格で初先発という歳内宏明投手の、その登板直前に何ともおめでたい発表!20歳のパパは、おととし9月以来となる1軍2度目の先発で喜びを表すかのような力投を見せました。

しかし、打線がご祝儀の2点を援護してくれた直後の4回逆転を許し、そのまま交代。まだ63球で、まだ1点差だったんですよね。せめてあと1イニングを投げさせる選択肢はなかったんでしょうか?いや、またすぐ次の登板で取り返せるピッチャーならいいんですよ。でもこういう立場の若手はもしかすると、すぐ抹消されてチャンスは先の先…って可能性も。それが少し残念でした。「追い込んでいたのに長打を打たれた場面があり、悔いが残ります。2点先制してもらったのに、すぐに逆転されてしまい野手の方々に申し訳ないです」とコメントした歳内投手。この悔いを晴らす日が近いことを祈ります。

試合は上本選手のタイムリーでサヨナラ勝ち!選手会長になっても相変わらず落ち着かないというか、ぎこちない(…失礼)お立ち台とオープンカーの上本選手でしたね。昼間から既に強い風が吹き、相当冷え込んでいた中で観戦されたお客様のためにも、いや~よかった。ほんと勝ってよかった。

伊藤和、いよいよ支配下復帰?

また今季から育成選手になっていた伊藤和雄投手が、支配下登録されて1軍昇格することになったようですね!12日の育成試合・大阪ガス戦での先発予定が変更されたのは、こういう理由だったのかと納得。おめでとうございます。今季ここまで公式戦、非公式戦合わせて13試合で21イニングを投げ無失点、奪三振37という快投で取り戻した2ケタの背番号。ぜひ甲子園のマウンドで見せてください。

さて、昼間の鳴尾浜で行われたファーム公式戦は9回に1点取って追いついて引き分け。1軍から福留選手が、志願の“親子出場”でした。

《ウエスタン公式戦》4月10日

阪神-オリックス 6回戦 (鳴尾浜)

オリ 000 010 000 = 1

阪神 000 000 001 = 1

[9回規定により引き分け]

◆バッテリー

【阪神】鶴-高宮-白仁田-西村-藤原 / 日高

【オリ】松葉(7回)-塚原(1回)-榊原(1回) / 原大

◆二塁打 堤

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]中右:中谷 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .205

2]左:柴田  (2-0-0 / 0-2 / 0 / 1) .276

3]指:狩野  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .208

4]一:森田  (4-1-0 / 3-0 / 0 / 0) .278

〃走:荒木  (0-0-0 / 0-0 / 1 / 0) .294

5]右:福留  (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .333

〃走:横田  (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .143

6]捕:日高  (4-2-0 / 1-0 / 0 / 0) .412

〃走:伊藤隼 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000

7]三:陽川  (2-0-0 / 2-1 / 0 / 1) .143

〃打:緒方  (1-0-1 / 0-0 / 0 / 0) .286

8]遊:北條  (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .129

〃打:阪口  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .222

9]二:西田  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .118

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率)

鶴   6回  110球 (8-7-2 / 1-1 / 1.29)

高宮  1回  10球 (0-1-0 / 0-0 / 0.00)

白仁田 1回  13球 (0-1-0 / 0-0 / 0.00)

西村 0.2回  10球 (1-0-0 / 0-0 / 0.00)

藤原 0.1回  1球 (0-0-0 / 0-0 / 1.69)

鶴が粘投、最後に追いついた打線

今季ファーム初登板の鶴は、4回まで毎回の5安打。1回は中前打の先頭・駿太を原拓の三振で日高が盗塁阻止、伏見も三振で無失点。2回はT-岡田の中前打と園部の四球などで1死二、三塁としますが後続を断ちました。3回は2死一、三塁でT-岡田を三邪飛。4回は2死から堤に左中間二塁打、続く原大をサード陽川のエラー(三塁線の当たり、素早く正面へ回って捕球しながら投げる前にポロリ…)で一、三塁としたものの最後は三ゴロ(陽川、今度は非常に慎重)で終了。

しかし5回、駿太と原拓に連打され、捕逸と四球で無死満塁となります。T-岡田と奥浪を打ち取ったあと、ルーキー・園部にタイムリー内野安打!三遊間の深いところ、ショート北條がよく追いついて一塁へ送球したけれど、惜しくも間に合いません。なおも満塁のピンチは、次の堤を空振り三振の仕留めて1点止まり。6回は一転、ぐいぐいと直球中心に投げ込み、2三振を奪って三者凡退でした。

7回の高宮、8回の白仁田は三者凡退。9回は西村が登板して1死後に代打・中村の左前打を浴びますが、武田は左飛。ここで交代です。そして藤原が小島を1球で三ゴロに打ち取って、この日は延長戦に入らない規定だったため負けはなくなりました。

阪神の打線が出した走者は、1回に狩野の中前打、2回は日高の中前打と陽川の四球、3回は柴田の四球、5回も北條の四球、7回に福留の中前打、8回が柴田の四球。これだけです。もちろん三塁は踏ませてもらえず、二塁に走者を置いたのも2回のみです。

9回裏、先頭の森田が力いっぱい振ったバットでピッチャー返し!打球はセンターへ抜けていきました。代走・荒木は3度のけん制球を投げられながら、鮮やかに盗塁成功!横田は空振り三振に倒れたあと日高が右前打を放って1死一、三塁(代走・伊藤隼)。続く・代打の緒方は2球目を打って投ゴロ…。しかし高くバウンドする間に荒木が生還!追いつきました。2死二塁で代打・阪口は二ゴロ。同点のまま試合終了です。

「気持ちは常に先発のつもりで」

鶴投手は試合後「久々だったので飛ばしていこうと思いました。どこまで投げるというのはなかったし、試合を作るつもりで。球数はちょっと不安もあったけど、後半も腕の振りはよかったと思う」と話しています。グラウンド整備後の6回は、急にまた真っすぐでガンガンいっていましたね。「ちょっと前半はツーシームで球数を投げてしまった。真っすぐあってのツーシーム、スライダーなので、そのへんの反省を生かして。日高さんとも話をして。きょうは勝負どころでコーナーにしっかり、ミスなく投げられたのでよかった。日高さんのおかげです」

先発、中継ぎ、先発といろいろ変わって大変なのでは?「全然!大丈夫です。関係なく、気持ちは常に先発でやっていますから」。このあたりで玉置投手が通りかかり、聞き耳を立て「ふんふん、気持ちは先発で」と繰り返します。さらに二神投手や小宮山選手まで加わり、鶴投手は苦笑い。我慢できずに「何なんですか~これ」と突っ込んで爆笑、解散となりました。話を続けます。

粘っていたのに、5回2死から内野安打で失点したことは「2死を取って当然“ゼロ”は意識にあったので、冷静にいこうとしましたが…。飛んだところが間(三遊間)だったので。でもまあ前の球で勝負したのがボールになったから、ですね」と反省の弁。6回110球を投げ「球数は収穫ですね。不安はあったので投げられてよかった。6回も入りはよかったし、疲れもなかったので」と言います。今後は?「今、取り組めている状態なので、もっともっと真っすぐのコントロールや投球の幅で持ち味を生かしていきたい。1軍戦力になるまで追求していきます!」。いい締めでした。

久保投手コーチは「真っすぐが結構しっかり投げられたからよかった。最後まで落ちなかったしね。久々に先発して、ダメかな?というのが出なくてホッとしています」と笑顔。そして「何度もやらせたいけどね。そのポジションを落ち着いてやれたらいいんだけど。岩田にしても好投が2~3試合続いてから、よし行くぞ!としたいところ」と、ファームでしっかり固めてから1軍に送り出したいという思いも語っています。「行ってすぐ帰ってくると、今度は“調整”し始めてしまうから。下でガッチリやって、上がったら1軍でポジション取ってくるぐらいにしたい」

今回の鶴投手については「そういう意味で次が大事。あと3試合くらい今のが見たいね。岩本も、岩田も」とのこと。また白仁田投手、西村投手の中継ぎ登板は「1軍からの要請があって予定していたピッチャーが投げられなくなったり、間隔が空いたりしてしまうので」だそうです。それで9日は試合後のシート打撃に4人も登板していたわけですね。

9回の代走で、荒木はさすがの仕事

続いて、9回に同点のホームを踏んだ荒木選手。あの二盗と、投ゴロでの生還で引き分けに持ち込めたようなもの。しかし本人は「そういうことにしといてください」と、いたって冷静でした。いや、ほんとに!と言っても「ありがとうございます」と笑うだけ。

緒方選手は「ランナーが荒木さんだったので転がすのを意識しましたがピッチャーゴロ。荒木さんの足に助けてもらいました」と感謝の言葉。それから「何はともあれ打点がついて、よかったです。どんなに強い打球を打っても、ランナーが還れなかったら意味がないので」と振り返りました。

先月23日以来の試合出場だった伊藤隼選手。先月16日の教育リーグ・中日戦(ナゴヤ)で右手に死球を受け、一時は代打や代走で出ていたものの、しっかり治した方がいいとのことでリハビリに専念。フリー打撃はまだですが、屋外でのティー打撃は再開しています。もうすぐ戦列復帰となりそうですね。荒木選も腰の張りでしばらく試合から離れていましたが、もう完全復活というところでしょう。

11日から甲子園では巨人を迎えての3連戦がスタート。鳴尾浜は11日が練習日、12日は大阪ガスとの交流(育成)試合が行われます。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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