ダイヤモンド・プリンセスの感染対策は「悲惨」 乗船した専門家、「アフリカの方がマシ」

ダイヤモンド・プリンセス(写真:ロイター/アフロ)

2月20日午後2時半追記

岩田さんが20日、YouTubeに投稿した動画を削除したため、本記事からも動画を削除しました。20日の記者会見で岩田さんは、削除の理由について「船内の環境が著しく改善したという情報を得たため」と述べていました。

 新型コロナウイルス感染者が相次いで発覚している、横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に一時的に乗船し、中の様子を見てきた感染症の専門家・岩田健太郎さん(神戸大学医学研究科感染症内科教授)が、船内の様子についてYouTubeで告発し、注目を集めている。

 岩田さんは18日、DMAT(災害派遣医療チーム)の一員として乗船。YouTubeでは、「所属する組織から離れた私個人の見解」と断った上で、船内の様子を報告している。

 岩田さんによると船内は、感染症対策のルールを無視した状態で「それはもうひどいもの」。岩田さんは過去に、アフリカ・シエラレオネでのエボラ出血熱対策に当たったり、中国でSARS対策に当たったりこともあるが、船内は「アフリカや中国に比べても全然ひどい。シエラレオネの方がよほどマシだった」「アフリカにいても中国にいても怖くなかったが、ダイヤモンド・プリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思った」と述べている。

 船内には常駐の感染症専門家もおらず、感染症対策の基本的なルールも無視されていたため、岩田さん自らも感染リスクを感じたという。対策を主導している厚生労働省は、岩田さんら専門家の助言を聞き入れようとしない状態だという。

 下船後、岩田さんは新型コロナウイルスに感染した可能性があると判断し、自主的に自らを隔離している。

“ルール無視”の船内 「僕も怖かった」

 岩田さんは、ダイヤモンド・プリンセスで感染者が急拡大している様子を見て、「感染対策がうまくいっていないのではないか」と懸念。さまざまなツテをたどり、2月18日に乗船の機会を得たという。

 岩田さんによると、感染症対策を行う際は通常、ウイルスが全くいない安全なゾーン「グリーンゾーン」と、ウイルスがいるかもしれない危険なゾーン「レッドゾーン」をしっかり分け、レッドゾーンでは防護服を着け、グリーンゾーンでは防護なし、という区別を行うことで、感染から身を守る。

 だが、実際の船内は「グリーンもレッドもぐちゃぐちゃになっていて、どこが危なくてどこが危なくないのか全く区別がつかない」「どこの手すりや絨毯、床にウイルスがいるか分からない状態」。職員やクルーは都度、防護服や手袋、マスクを付けたり外したりしていたが、「防護服や手袋があっても、安全と安全じゃないところをちゃんと区別できていないと、役に立たない」と警鐘を鳴らす。

 また、熱のある乗客が自分の部屋から歩いて医務室に行ったり、搬送される患者と検疫の職員がすれ違うなど、感染症対策としては「超非常識」な運用も見たという。

 感染症対策時に、医療従事者が自らの身を守ることは「大前提」。医療従事者のリスクを放置して一般の人々の感染に立ち向かうのは「御法度」「ルール違反」だが、船内の状況は、医療従事者や職員がいつ感染してもおかしくない状態。実際、職員たちも「自分たちも感染するなと思ってますよ」と話していたという。

常駐の専門家不在、厚労省は「聞く耳持たない」

 船内はそもそも、「常駐してるプロの感染対策の専門家が一人もいない」状態。時々やってくる専門家も「ヤバいなと思ってるんだけど何も進言できないし、進言しても聞いてもらえない」という。

 乗船前は「ちゃんと専門家が入って責任を取り、リーダーシップを取って、感染対策についてのルールを決めて、やってるんだろうと思ていた」が、実際は「まったくそんなことはない」と岩田さんは落胆する。船内で感染症対策をしているのは「厚労省の官僚たち」で、岩田さんは「厚労省のトップの人に話したが、ものすごく嫌な顔されて、聞く耳持つ気がない」状態だったという。

 岩田さんは今回、厚労省の担当者に呼ばれ、臨時の検疫官という立場で乗船した。だが、乗船直前に「誰とは言えないが非常に反対している人がいる」などと言われて乗船の話が立ち消えそうになり、何とか乗船しても、その日のうちに「乗船許可を取り消す」と言われ、下船を余儀なくされたという。厚労省の担当者からは「岩田に対して、誰とは言えないが、すごいムカついた人がいる。だからもう出ていくしかない」と聞かされたという。

 下船した現在、岩田さん自身が感染の危険を感じており、自分自身を隔離し、診療も休んでいるという。

 また、日本語で発信した同じメッセージを、英語でも発信している。