ミクシィの「チケキャン問題」とDeNAの「WELQ問題」は驚くほど似ている

チケットキャンプのトップページより

 「チケットキャンプ」の終了が決まった。ミクシィ傘下のフンザが運営するチケット転売マーケットプレイスだが、商標法違反などの疑いで警察の捜査を受けたことなどから再開は難しいと判断。2018年5月末に終了するという。

 ちょうど昨年末、別の会社の別サービスで、似た事態が起きていた。ディー・エヌ・エー(DeNA)のキュレーションサイト問題だ。医療情報サイト「WELQ」をはじめとした10のキュレーションサイトに、他のサイトからの無断転載や不正確な情報があったとし、DeNAは全サイトを閉鎖した。

 筆者はこの2つの出来事が驚くほど似ていると感じた。3つの共通点を挙げて解説する。

共通点1・「ゲームの次」への焦り

 DeNA、ミクシィとも、収益の柱はゲーム事業だ。それぞれ問題が起きたのは、ゲーム事業の成長性が鈍るなど、曲がり角にさしかかっていたタイミングだ。

 DeNAは、06年にスタートしたガラケー向けゲームポータル「モバゲータウン」(現在のMobage)で一世を風びしたが、スマートフォンへの移行が遅れるなどし、ゲーム事業の売上高は12年をピークに伸び悩んでいた。

DeNAの14年3月期以降の通期売上高・営業利益の推移(DeNAのIRページより)
DeNAの14年3月期以降の通期売上高・営業利益の推移(DeNAのIRページより)

 次の成長の柱に育てようと14年に買収したのが、キュレーションサイト事業だ。まとめサイト「iemo」と「MERY」を計50億円で買収。守安功CEOは「18年度末にはキュレーション事業で時価総額2500億円相当を目指す」と急成長を期待していた。

 ミクシィは、SNS「mixi」ブームが過ぎた後の13年に出したスマートフォンゲーム「モンスターストライク」が大ヒット。15年3月期の売上高は13年の10倍近くに上り、15年3月期も前年の倍の売上高を計上した。だが、モンストはそれ以降伸び悩んでいる。

 ミクシィがチケットキャンプ運営元のフンザを115億円で買収したのは15年。モンストの急成長が一段落しつつある中、SNS「mixi」などゲーム以外の「メディア事業」が落ち込んだり伸び悩んでいる時期であり、「次の成長の柱」と期待していたのだろう。それ以降の決算資料を見ると、メディア事業では「伸びているのはチケットキャンプだけ」という状態が続いていた。

ミクシィの13年3月期以降の通期売上高・営業利益の推移(ミクシィのIRページより)
ミクシィの13年3月期以降の通期売上高・営業利益の推移(ミクシィのIRページより)
ミクシィのメディア事業ではチケットキャンプだけが成長していた(ミクシィの決算資料より)
ミクシィのメディア事業ではチケットキャンプだけが成長していた(ミクシィの決算資料より)

共通点2・SEOが問題に

 サービス閉鎖につながったきっかけが「SEO」だったことも、両サイト共通している。

 SEOとは、自社サイトがGoogleなどの検索エンジンに、記事がヒットしやすくするための工夫だ。「記事タイトルに、検索されやすいキーワードを複数入れる」「記事をある程度長くする」――など、さまざまなテクニックがある。検索エンジンにたくさんヒットすれば、それだけ読まれる機会が増え、サイトの閲覧数・広告収入の増加につながるため、SEOを重視しているネットメディア企業は多い。

 DeNAもそうだった。「WELQ」は、コンテンツの正確性や著作権をおざなりにしてSEOに突っ走り、「検索されやすい記事」を低コストに大量生産しようとした。その結果、不正確な記事や、他サイトの無断転載が続出。これらの問題がネット上で多数指摘されて批判され、“炎上”したことが、サービス終了の背景にある。

 調査委員会の報告によると、記事の著作権侵害率は「1.9~5.6%」と1割未満だった。また、不正確な情報の掲載は、倫理面では批判されるべきだが、違法性を認定されたわけではない。それでもサービス終了を決めたのは、まとめサイトに対する社会的批判が高まる中で、事業を継続することは「リスクが高い」とDeNAが判断したのだろう。

 チケットキャンプ終了もSEO施策が問題になった。

 ミクシィが公表した第三者委員会の調査報告書によると、チケットキャンプのサイト内にあった、ジャニーズ事務所所属タレントの情報を掲載する「ジャニーズ通信」と、宝塚歌劇団の情報を掲載していた「宝塚歌劇倶楽部」が、ジャニーズ事務所・宝塚歌劇団の商標権を侵害している疑いがあるとして、商標法・不正競争防止法違反の疑いで、警察当局による強制捜査を受けたことが、閉鎖の背景にある。

「ジャニーズ通信」(既に休止している)
「ジャニーズ通信」(既に休止している)
「宝塚歌劇倶楽部」(既にサイトは休止している)
「宝塚歌劇倶楽部」(既にサイトは休止している)

 これらのサイトは、検索エンジンからチケットキャンプへのアクセスを増やすためのSEO対策として2013年に開始。チケットに関連するメディアを運営し、記事を掲載することで、チケットキャンプ全体の検索数の上昇を狙ったのだ。チケットキャンプの事業本体ではなく、SEOのためのメディア運営の問題が、サービス終了のきっかけになったと言える。

 調査報告書によると、WELQ問題を受けてフンザは、「ジャニーズ通信」「宝塚歌劇倶楽部」の記事にも無断転載がないか確認し、画像の削除などを行ったという。ただ、サイト名の商標に問題があるとは認識しなかったという。

 今回、チケット売買プラットフォーム事業そのものの違法性が問われたわけではないが、チケットキャンプが「高額転売の温床」とみなされ、批判を受けていたことは事実だ。報告書では「コンサートチケットなどのネット上での高額転売が社会的に強く非難されており、サービスの運営を継続するにあたっては、その道義的・社会的に非難されるリスクが高まっている」と指摘。ミクシィは、サービス継続のリスクとメリットを天秤にかけた結果、終了を選択したようだ。

共通点3・やり直しのチャンス、あったのに

 WELQもチケットキャンプも、問題を認識してやり直せるチャンスはあったが、その機会をふいにしてしまっている。

 WELQはサービス終了の2カ月前、いくつかの記事について「不適切な内容が含まれている」と指摘されてネットで炎上した(「死にたい」検索トップの「welq」の記事、DeNAが広告削除 「不適切」指摘受け)が、指摘を受けた記事から広告を削除しただけで、抜本的な対策は行わなかった。その後、問題のある記事がどんどん発見され、ネット上で“大炎上”したことが、サービス終了につながった。

 チケットキャンプは16年12月、「嵐」のツアーチケットの取引手数料を無料にするキャンペーンの告知にジャニーズのロゴや名称を無断で使い、ジャニーズ事務所の抗議を受けていた。チケットキャンプ側はこの時、「ジャニーズ事務所の商標の使用は確認不足だった」とし、ジャニーズのロゴや名称を使った告知を削除していたが、キャンペーン自体は継続していた(「嵐」ツアーのキャンペーン、抗議受けてもなぜ継続? チケットキャンプに聞く)。

 ミクシィの調査報告書によると、チケットキャンプは、ジャニーズ事務所や宝塚歌劇団関連企業から「複数の通知書等を受け取っていた」という。ただその内容は、チケットが高額転売されていることに対するクレームがほとんどで、「ジャニーズ通信」「宝塚歌劇倶楽部」という名称の使用中止を求める直接的な記載は見当たらなかったとしている。

 報告書では「フンザの幹部は、ジャニーズ通信や宝塚歌劇倶楽部の商標使用の問題点を認識し、是正する契機はあった」と指摘。「にも関わらず、商標の使用を是正しなかった(または是正すべき問題があることを認識しなかった)ことにより、結果として強制捜査を受けることになった」としている。

サービス終了の功罪

 DeNAのキュレーションサイトは、女性向けメディア「MERY」以外はすべて休止したままだ。WELQをきっかけにGoogleは、医療・健康情報のWebページの評価方法をアップデート。Googleが「信頼性が高い」と判断した情報が上位に表示されやすくなったと発表している(Google、医療・健康の検索結果を見直し 「より信頼性高いサイト」上位に)。

 医療関連ワードで検索してみると確かに、医療機関などの記事がヒットしやすくなり、「まとめサイト」がヒットする機会は減ったように感じる。ただ、信ぴょう性不明なメディアや情報もいまだ多数残っているほか、医療機関などによる「信頼性の高い」サイトは専門用語などで難解なことが多く、知りたい情報にたどり着ける状態とはとても言えない。

 「チケットキャンプ」は来年5月にサービスを終了する予定だ。同サイトは以前から「チケットの不当な高額転売の温床」と批判されており、サービス閉鎖は業界の悲願達成――とも言えるかもしれない。

 ただ、行けなくなってしまった公演チケットを転売する公式の仕組みはまだ整備しきれておらず、「チケットが手に入らなかった公演にどうしても行きたい」人のニーズに応える仕組みもほとんどない。チケット転売サイト最大手だったチケットキャンプの閉鎖により、「チケットを取ったが、行けなくなった人」「どうしてもチケットが欲しい人」が、宙ぶらりんになってしまう。

 WELQもチケットキャンプも、さまざまな批判を浴びた。その一方で、「検索でヒットしやすく、読みやすい医療情報」や「行けなくなった公演チケットを売買できる場所」など、両サービスが提供していた価値を求めるニーズは確実にある。そのニーズに対して、倫理面・法律面などの課題をクリアした上で、うまく応えるサービスが登場する2018年であるといいなと思う。