ベネッセの黄昏

穏やかで豊饒な海にも、いつかは黄昏が迫る(佐島にて筆者撮影)

ベネッセHDの現況

ベネッセHDの業績が冴えない。これまでベネッセの屋台骨を支えてきた「こどもちゃれんじ」や「進研ゼミ」の会員数は、2014年4月の365万人から7月の情報流出事件発覚を経て10月には325万人に減少していたが、2015年の4月には271万人まで減少した。一年間でほぼ1/4に減少した教育事業の2015年3月期売上高は2388億円(前期比5.8%減)、営業利益は62億円(同19.4%減)であった。もしこのまま会員数の減少に歯止めが掛からないとすれば、今期更なる売り上げと営業利益の大幅な減少は、避けられないであろう。ベネッセがほぼ独占する「全国統一模試」に関する売り上げや利益はほぼ横ばいであると仮定すれば、通信教育事業の減少は決算の数字以上に深刻である可能性が大きい。通信教育事業は教材の開発・維持などの固定費が掛かるビジネスであるため、会員数の減少は売上以上に利益に関してより大きなな打撃を与えるため、このままでは赤字に転落するおそれもあるだろう。

ライバルの好調

対照的に、漏えい情報を活用したDMの送り手であったとされる、タブレット通信教育で先陣を切ったジャストシステムは「スマイルゼミ」が好調、2015年3月期の決算は、連結売上高177億円(前期比4.6%増)、営業利益45億円(同10.9%増)であったのは、何とも皮肉なことである。

今後を占うと

もともと脱DMを掲げていたプロ経営者を標榜する原田氏は、情報流出事件後に従来のDMを中心にした教育事業を牽引してきた経営陣を一掃し、リアル店舗「エリアベネッセ」などを展開する戦略を積極的に推進してきたが、残念ながらこれまでは余り数字としての成果につながっていないようである。また、遅まきながら「Challenge English」などタブレット通信教育の教材を展開しているが、現在までのところ業績に大きく業績に貢献するには至っていない。かつて成功したビジネスモデルの下で巨大化したビジネスが、新規の破壊的なビジネスの成長を阻害する、まさにイノベーションのジレンマと呼びうる状況に置かれているようだ。

もう一つの問題は、これまでビジネスを牽引してきた股肱の臣を一掃したことにより想定される、社内の不協和音である。本来なら、情報流出という危機を迎えた局面において、社内を一致団結させて困難を乗り切る方向に向かうべきところ、プロ経営者は機に乗じて自らのリーダーシップをより強くするためであろうマネジメント人事を行った。大改革を一気呵成に、という意味では一つの考え方であったかもしれないが、現在までのところそれは、必ずしもプラスの効果をもたらしていないように思われる。

さて、プロ経営者を自認する原田氏は、この局面でどのような「次の一手」を打ってくるであろうか?筆者の見立てでは、原田氏は性格的に座して逆境に耐えるタイプでは無い、おそらく局面を一気に打開するためのM&A、例えば介護事業の売却といった挙に出る可能性すらあるのではないかと推理する。が、この状況に置かれたベネッセHDにとって、その様なM&Aは極めてハイリスクな策である。

もし仮にその様な起案を受けたとしたら、オーナーである福武氏はどのような判断を下すであろうか。何れにしても、ベネッセHDの今後には目が離せない。