中外製薬~外資連邦経営の中で進める企業改革

<これまでの経緯と現状>

●今後の存立基盤を求めるために自らロシュグループの傘下に入る

武田薬品工業とは対照的にグローバル化に取り組んでいる企業ということで、中外製薬株式会社の例を紹介したいと思います。

中外製薬は、もともと日本の優良な中堅製薬会社でしたが、2000年代に製薬業界が急速にグローバル化していく中で、自分たちのこれからの存立基盤をどこにどう求めていくのか、という選択に直面しました。

おそらく、グローバルの製薬企業から、いろいろと買収などの打診があり、敵対的買収の脅威なども感じた結果だと思いますが、中外製薬は、1800年代末につくられたスイスの製薬会社であるロシュグループの一員になることにしました。具体的には、60パーセントの株をTOBによりロシュが保有し、残りの40パーセントは市場に残すことで日本での上場を維持しつつ、ロシュの連邦経営の中に入っていきました。

●緊張感の中で連邦経営の一員に

ロシュは、それまでにもジェネンティック等他の製薬企業をグローバルの連邦経営の中に取り込んでおり非常に包摂力の高い企業であることが、いわば逆選択の大きな理由になったことと思います。

ただ一方で成果を出していかないと、100パーセント株を保有され経営権を完全に失い、改革を上から押し付けられてしまう、あるいは、完全にグローバルな統治に組み込まれてしまうことになりかねません。そういった意味で、中外製薬は非常に緊張感のある状況で、グローバルなロシュという連邦の中で経営を行っています。

●現状は奏功

それが非常に功を奏しているのか、中外製薬の経営は今のところ順調です。良い薬を創薬し、それがロシュグループのグローバルな販売ルートで素早く全世界に売られていく、或いは海外で開発された薬を素早く国内に展開して行くことが、中外製薬の良い決算に跳ね返って来ています。ロシュの一員として常にプレッシャーを受け続けることによる緊張感が非常に効果的に作用して、今のところはうまくいっているのだと思います。

武田薬品がミレニアムやナイコメッドなどの海外製薬企業を買収し、一気に自らを変えていくというようなグローバル化を選んだのに対し、自らアイデンティティーを持ち続け自分たちの主導権を維持したまま連邦経営の中に飛び込み、その牽制効果を利用して改革を進めていくという選択肢を選んだ結果が、今のところ功を奏していると思います。

<今後に向けて>

●今後は海外進出や世代交代がカギ

ただ、時間の経過に伴い中外製薬もロシュグループの中で、これからもっと海外に出ていくことが求められて来るでしょう。あるいは、これまで数々の重要な決断を引っ張り、ロシュグループの中外を率いてきた永山治CEOも、そろそろ年齢的には次の世代に譲るようなところにきています。世代交代を経て新しいリーダーが、そのような連邦経営の中で、いかに自らのアイデンティティーを維持し、業績を拡大し、結果、独立した存在として中外製薬の繁栄を未来に持続していくことができるのか。

これからのグローバル化のあり方の一つの事例として、今後とも中外製薬の展開を注目をしていきたいと思います。