武田薬品~外国人トップの改革に会社は耐えられるか?

四境戦争時、高杉晋作率いる奇兵隊の攻勢に耐えかね陥落した小倉城 筆者撮影

<これまでの経緯>

●しがらみのない長谷川氏が改革を継承、グローバル化に向けた2つの大きな買収を実現

武田薬品は、ご存じのように、長谷川閑史現会長が社長に就任して、ミレニアムやナイコメッドといった大きな製薬企業の買収を行い、グローバルな製薬企業にまで成長したという経緯があります。

もともと長谷川会長の前の武田國男さんという武田家の方が、社長として大改革を行い、次にバトンを渡す時に、「こいつならしがらみなく改革をやり続けてくれる」ということで選んだのが、当時末席取締役であった長谷川会長であると聞きます。長谷川会長は、本当にしがらみなく、買収によるグローバル化の路線を突き進みました。

<現状>

●グローバル化完成のために非エリートのフランス人を後継者に

そして、2014年6月に、フランス人のクリストフ・ウェバーというGSKのワクチン事業部CEOをスカウトし、自らの後継者として先ずは社長兼COOに任命しました。そして予定通りに現在、ウェバー社長は今年の4月、CEOに就任しました。

現在、ウェバー氏にレポートするマネジメントチームは、日本市場のビジネスを除きほぼ完全にグローバルなメンバーになっています。また、ウェバー氏はもともと南フランスの出身、フランスにはグランゼコールというエリートを輩出する高等教育機関がありますが、そうではなくリヨン大学の薬学博士というバックグラウンドの持ち主です。長谷川会長はおそらく、そのようなバックグラウンドから上がって来た苦労を知る人間を自分の後継者に据えるとことで、自ら行った二つの大きな買収による武田薬品のグローバル化を完成することを、期待したのでしょう。ともすれば反発を買うであろう外国人の後継者指名に踏み込む、目的に向け最後までしがらみのない決断を行った訳です。

●主要薬品特許切れによる業績低迷でリストラ~ミレニアムのマネジメントは全て退社

ミレニアムを買収した時点で、ミレニアムのマネジメントは武田薬品のマネジメントチームの一員となりました。そしてそのミレニアムのチームは、ナイコメッドの買収に大きな役割を果たしました。

ところが当初、独自性の担保を前提にミレニアムを買収したのですが、武田のもうかる薬品がどんどん特許切れになっていく中で、利益を維持するためにミレニアムを含めたリストラをグローバルに行い、研究開発部門を統合したのです。この過程でミレニアムの経営陣は、一人辞め、二人辞め、そして誰もいなくなりました。

そして最終的には、内部昇格では無く外部からCEOをスカウトしました。また、CFOを始めとした多くのマネジメント・メンバーも、ほとんどが外部からのスカウトです。ヘッドハンターにとって、ここ数年の武田薬品は本当に良い顧客であったことと思います。

<これからの運命>

●高コストの日本本社の徹底リストラに関係者が耐えられるか

では、このような状況下、武田薬品は果たして今後どのような会社になっていくのでしょうか。日産では以前、ウェバー氏と同じフランス人のカルロス・ゴーンという社長が自分のチームを引き連れて来て、日産を改革しました。ただ、ゴーン氏が据えた役員は、最初は本当に枢要な部分の数人でした。やはり日産は日本の会社ですから、ゴーン氏は日本人の自治権をかなり尊重した改革を行なったのです。しかし今回のウェバー氏は、マネジメントチームの選定にあたり、そのようなことは全く気にしている様には見えません。武田薬品を完全にグローバル企業としてつくり替えることが、彼の使命だと考えてやっているように見受けられます。

グローバルで見ると、突出してコストが高いのは明らかに日本本社でしょう。グローバルの企業と比較すると異常に高く、それだけ無駄な人員をたくさん本社に抱えているのが日本企業だということになります。自社開発の新薬がどんどん出て、嘗ての様に儲かって行けばいいのですが、残念ながら、武田薬品のパイプラインに、今のところはそんなに良い新薬があるようには見えません。そうなると、ウェバー氏が短期的な経営改善として出来る事は、リストラを進めコストを削減していくことだと思います。

グローバル企業のスペックで同じ能力の人件費コストを比較すると、日本人よりも外国人の方が安いのが一般的です。更にはそこに、大部分のマネジメントが日本語を話せないため、逆の言葉の壁が立ちはだかって来ます。結果的に、日本に沢山の無駄な人間がいるので、リストラ対象の多くが日本に居る日本人社員になると思います。

最終的には、おそらく結構な比率の日本人社員はこれから起きる大きな変革に、耐えられないのではないかと思います。しかし、それでもきっと会社は残ります。そして、ウェバー氏もステップアップして、次のキャリアを求めよりチャレンジングなポストを求め転職して行き、また新しい社長を海外からスカウトして来るでしょう。

●最後は本社移転?

その新しい社長が考えることは、武田薬品の本社が果たして日本にあることが合理的なのかということです。いずれは本社を日本から移そうというような話になるかもしれません。そのときに、果たして、武田家、あるいは関係するステークホルダーたちが耐えられるのかどうか。ひと騒動があるのかもしれません。