「何でもあり解散」が高めるアベノミクス失敗のリスク

写真はイメージ 筆者撮影

「何でもあり解散」が高めるアベノミクス失敗のリスク

老獪な政治家のぼやき

私の知る老獪な元政治家は、「この政権は何でもありですから」と良く繰り返します。

今回安倍首相は、「税の問題は国民に信を問うべきテーマ。前民主党政権はそれをせずに消費増税に踏み切ったが、私は信を問う。」と野田前首相をバッサリ、そして返す刀で当時の自民党党首であり三党合意の当事者でもある谷垣幹事長、そして山口公明党代表をやんわり揶揄して解散総選挙に打って出ました。しかし各種世論調査で70%の国民が来年10月の消費増税に反対し主要政党が消費増税先送りを主張する中、敢えて予定通り上げる前提で是非を問うのであればともかく、増税先送りが大騒ぎして国民の信を問う課題であるとは思えません。

安倍信任選挙の意味

この選挙は、結果としては与野党が揃って声を上げている「アベノミクス信任選挙」、或いは「安倍政権信任選挙」なのでしょう。しかし、アベノミクス第3の矢のために重要で有る筈の多くの法案は、この解散のために衆議院で議決されているものを含め、ほぼ全てが廃案となってしまいます。拉致被害者の帰還、周辺諸国との関係改善、TPP、そしてアベノミクス、全て見通しが立たない現段階における安倍政権信任選挙は、多くの危険性をはらんでいます。

2年前の選挙を思い出してみよう

2年前を思い出してみましょう。国民は安倍政権を選択したというよりは、民主党政権を否定しました。その結果が、想定を超える自民党の大勝をもたらしました。続く参議院選挙では、国民は途に就いた安倍政権とその各種政策を支持して、国会のねじれ状態を解消しました。党内に敵が見当たらない現時点の安倍政権は、再来年夏の参議院選挙まで強力な政治基盤を持ち続けることが可能です。

更には消費増税の先送りでは、日銀の黒田総裁と身内の谷垣幹事長をピエロにした上で、腹心たる財務省とも溝を作ってしまったようです。そのような犠牲を孕み、多くの自民党議員に不満を抱かせてまで解散に踏み切った本意は、政権の延命でしかありません。ここから先、アベノミクスを始めとする安倍政権の諸政策が効果を現してくるのであれば、なぜ今、展望の開けない状況で明らかに議席を減らすことが判っていながら、解散に踏み切る必要があるのでしょうか?来年秋の自民党総裁選に勝利するためには、現時点で信任を得る必要があったのです。アベノミクスの効果が出ないため、ここから先政権の支持率が低下する、その可能性が大きいと踏んだからこそ、追いつめられ解散に踏み切ったのです。

真剣に考えて投票、そしてアベノミクス失敗のリスクに備えよう

今回の増税先送りと解散で、アベノミクスのリスクはより高まりました。財政の懸念に対してマーケットは、円と株の同時安で反応しています。金融と財政の二本の矢を打ち続け、第三の矢は解散で全て振り出しへ。挙句の果てに財政側の突っかい棒である消費増税を見送り、ナローパスはますます狭くなりました。

かつてヒトラーは、ベルリン市街戦で連合軍が地下司令部に迫る中、無益な血を流さないために降伏を勧告する側近に、「国民は私を選んだのだから、最後まで私を守る義務がある。」と、平然と言い放ちました。私たちは、今回の選挙を改めて真剣に考えて投票する必要があります。そしてアベノミクス失敗のリスクに備えたコンティンジェンシープランが、国や企業、個人など、あらゆる経済単位に必要であると思います。