「たかがネンザ、されどネンザ」

(写真:アフロ)

ラグビーワールドカップが大変盛り上がり、いよいよオリンピックパラリンピックに向けて残すところ250日を切りました。オリパラ出場選手もコンディショニングに神経を使っていることと思いますが、そんな中でももっとも気を付けなければならないのがケガです。このスポーツのケガの中でもっとも多いのが足首の捻挫です。つい昨日も、阪神からドラフト2位指名された井上広大外野手が右足首を捻挫してしまったと報道されておりました。

足首を「ネンザ」したことがない!なんていう人はほとんどいないのではないでしょうか。そしてそんなとき、「たかがネンザ」と思って、きちんと処置をしないまま放置しませんでしたか?捻挫は、実はその裏に大きなケガが隠れていたり、放置すると後遺症が残ったりする怖いものなのです。「ネンザした!」と思ったとき、どうしたらよいのでしょうか。

捻挫とは

捻挫とは、足首を内返しもしくは外返ししてケガしてしまうことを言いますが、実はこの捻挫というのは医学的な病名ではなく、単に捻(ひね)って、挫(くじ)いた、という状態を表しているに過ぎません。

そしてこの「ネンザ」という言葉を聞くと何となく軽症のような気がしますが、実は靭帯断裂や剥離骨折が起きていることが非常に多く、注意が必要です。

足首を捻挫して整形外科に行き「レントゲンで骨は異常ありません」といわれてシップと痛み止めだけ処方されて帰ったという経験のあるのは私だけではないと思います。しかし待ってください!本当にレントゲンに異常がないだけで安心してよいと思いますか?

それには大きなリスクがあります。

捻挫に隠れた大きなケガ

内返し捻挫で受傷しやすい靭帯(『jmedmook あなたも名医!知っておこうよ、スポーツ医学』(日本医事新報社,2017)出版社、著者の承諾を得て引用)
内返し捻挫で受傷しやすい靭帯(『jmedmook あなたも名医!知っておこうよ、スポーツ医学』(日本医事新報社,2017)出版社、著者の承諾を得て引用)

内返し捻挫すると前距腓(ぜんきょひ)靭帯や脛腓(けいひ)靭帯、二分(にぶん)靭帯とよばれる靭帯に引っ張る力が加わり、これらの靭帯が断裂したり、これらの靭帯が骨に付着している部分で骨を引っぱって剥離(はくり)骨折してしまうことがあります。これらの断裂部、骨折部からは出血するので皮膚が紫色になってきたり、同部が腫れてきたりします。

こういったことからも内出血があったり、腫れがあるような捻挫は特に診断に注意が必要です。

レントゲン検査では安心できない

捻挫で整形外科を受診すると、レントゲン検査をすることになるかもしれません。しかし、靭帯は骨ではないので断裂していても当然レントゲン検査ではうつりませんし、剥離骨折があっても骨のかけらが小さいとレントゲンでみえないことが非常に多いのです。ですから、レントゲン検査をして異常なしと言われても、安心はできません。

そこで、必要となるのが、超音波検査(エコー検査)やCT検査、MRI検査です。

このうちCT検査やMRI検査はどこの病院でも撮影できるわけでなく、また検査には予約が必要なことがほとんどで、当日に結果がわからないというデメリットがあります。靭帯が断裂しているのか、靭帯付着部の剥離骨折があるのかはっきりさせないと、靭帯が引っ張られないように直ちに固定して保護するべきなのか、それとも周囲の筋力を落とさないために積極的な運動療法を行った方がよいのかわかりません。けがをしてから数日して診断が確定するようだとこの一番大切な最初の治療がきちんと行えないということになりかねません。そして誤った初期の治療が行われることで、結果的に足首にゆるさが残ってしまうなどの合併症につながります。

これとは対照的に超音波検査は外来で直ちに行うことが可能で、それでいてCTのように被爆しませんし、また画質に関しても最近の超音波検査装置はMRIより2点分解能が高いものが出てきております。(つまり画質がより優れているものがあります)

さらに、超音波検査ではCTとMRIと根本的に異なる点があります。それは検査中に実際に足を動かせるということです。静止画だと連続していそうな靭帯が、足首を動かすとはじめて断端が見えるようになる、といったことはよく経験します。このような場合に誤診をさけるためにも超音波検査が非常に有効です。

「たかがネンザ」と軽くみないで

以上のように、誰しもが経験したことのある足首の捻挫ですが、なるべく早く正確に診断してもらい、その後の合併症の発生を防ぐことが非常に重要です。捻挫をしたらまずはアイシングと圧迫を、それでも内出血や腫れがでてきたら、「たかがネンザ」と軽く考えるのでなく、整形外科受診を。そして「レントゲンで骨は大丈夫です!」という言葉に満足せず、超音波検査などで靭帯の状態のチェックもお忘れなく!