ソニーがレコード国内生産を再開。ビデオゲーム・レコードの現在とこれから

■過去の名盤たちと近年続々と海外からリリースされるゲーム・ミュージックのLPたち

すでに報じられているようにソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は、本日(2017年6月29日)国内でのレコードの生産を再開することを発表した(「ソニー、レコード国内生産を29年ぶり再開 人気再燃受け」)。これはじつに29年ぶりのことだそうだ。

海外ではここ数年レコード盤の人気が高く、そうした動きを受けて国内でもタワーレコードはアナログ専門レーベルの設立(「タワーレコードのアナログ専門レーベルが誕生!!」)、HMVはレコード専門店をオープンするなど(2016年10月1日(土)「HMV record shop 新宿ALTA」オープン)小売業者も積極的に動き始めている。一時期は新/中古レコードショップが相次いで閉店するなど冷え切った状況だった日本のレコード市場だが、3年前からは国内のレコード生産量も右肩上がりとなっている。

しかし現在、国内でレコードのプレス業務を行っている業者は一社のみ(東洋化成)の一点集中の状況で、国内における年間プレス数には限界があり、その意味でも国内はまだまだこれからの市場と言えよう。ソニー参入の裏にはそんな背景があるのだと思われる。

だが、そのなかで「ビデオゲーム」の音楽――つまり「ゲーム・ミュージック」というジャンルは、他ジャンルに比べてその道のりはなかなか険しいのではないだろうか。なぜならこの数年の間に国内でレコード化されたLP(12インチ・アナログレコード)は2枚のみであり、オークションを除けば中古市場すら存在しないのが現状だからだ(事実、どこの中古レコード店の棚にも「ビデオゲーム/テレビゲーム」のジャンル区分すら存在しない。さらにその2枚というLPのレーベル運営をしているのはこれを書いている僕自身だったりするわけで…)。

レコードの生産再開のニュースでなぜ突然ゲームについて書くのかと問われれば、このYahoo! ニュースのなかでの担当ジャンルがゲームだからなのだが、それはさておき知っておいていただきたいのは、じつはこのゲーム・ミュージックのLP、海外において近年はリリース・ラッシュなのである。

日本のゲーム・ミュージックを積極的にリリースしているヨーロッパのレーベル「DATA DISK」、タイトーのサウンドチーム「ZUNTATA」のアルバムを立て続けに発売したニューヨークの「SHIP TO SHORE」、コナミの『悪魔城ドラキュラ』シリーズのLPをリリースするテキサスの「MONDO TEES」など複数のレーベルがいまゲーム・ミュージックのレコード市場に参戦し、盛り上がりを見せている。

だが、先に触れたように国内は海外に比べてまだレコード市場が確立されておらず、まだまだこれからといった印象だ。「レコード・プレイヤーを持っていない」という理由で手を出せずにいるお客さんも多いだろう。そんな現在のレコード市場全般における「ゲーム・ミュージック」というジャンルの地位は残念ながらあまりにも低い(実際に初回プレス分即完売だったにも関わらずレコード小売業者の流通審査からリジェクトされてしまった事実もあったりする)。

ただ、大手メーカーであるTechnicsなどがレコード・プレイヤーの販売に積極的になっており、さらにここにきてソニーがレコードの国内生産を再開するという今回の発表。これによって国内でレコード・プレスを行うことが可能な業者は2社となり、価格面や納期に競争が発生するのであれば(いままで一社のみのため交渉余地がなかったので)発注側としては嬉しい限りだ。当面はソニー傘下のアーティストのプレスのみのようだが、今後、他のレーベルにも門戸が開くことを期待したい。そして一枚での多くのゲーム・ミュージックの再販、新譜が世に出ることを望む。

かつては細野晴臣プロデュースによる日本初のゲーム・ミュージック・アルバム『ビデオ・ゲーム・ミュージック』やアルファレコードの専門レーベル「G.M.O.レコード」など画期的かつ抱負なタイトルが存在したゲーム・ミュージックのレコード市場。CDのパッケージ売りが頭打ちのなか、今回のソニーの国内レコード再生産なる動きが少しでもジャンル全体の再認知/再評価に繋がっていくことを願うばかりだ。

なお追記だが、このたび日本でもブレイブウェーブプロダクションより往年のアクションゲーム『忍者龍剣伝』シリーズ4作を合わせたCD発売に際し、4枚組のLP版ボックス・セットが発売される。こうした動きの連なりが今後の「波」のひとつになって行くことを応援したい。