終焉? 伝道師らによる『エアガイツ』幕引き騒動について

 TwitterなどのSNS上で議論や論争をしたりする性分ではないので、あくまで「ニュース」としてこうした形でまとめさせてもらうことにした。

 昨日今日とネット上でちょっとした話題になっているワードに『エアガイツ』がある。

『エアガイツ』については過去に記事にさせていただいているのでこちらを参照していただきたい。1998年にリリースされた3D対戦格闘ゲームだが、プレイヤーたちの熱意によって今年の1月には「エアガイツ世界大戦」と称して大久保の「NAKEDLOFT」で大規模な大会が開催されたりもした(僕も協力させていただいた)。

 それがいま再び騒動になっている。きっかけは12月6日、今週日曜日のことだ。

 発端は「高田馬場ゲーセン ミカド」で行われていた恒例大会「スーパーストリートファイターカーニバル」。この大会は二ヶ月間に渡ってほぼ毎日あらゆるゲームで対戦し、そのポイントを競い合うものだ。その最終戦「チャンピオンカーニバル」の『エアガイツ』の対戦でことは起きた。

 プレイヤーは『エアガイツ』シーンを牽引してきた立役者のひとりであり「エアガイツ世界大戦」の覇者である「エアガイツ仮面」。対するは「ミカド」では多くの対戦格闘ゲームで実力を発揮するプレイヤー、たけやん。

 その試合はアーカイブがアップされているので各々見て頂きたいのだが(あえてリンクしないので各々で探して欲しい)素人目に見てもその内容はエアガイツ仮面の圧勝である。

 ここで重要なのはエアガイツ仮面の攻撃方法だ。これはこのゲームの根幹を揺るがすとされるバグ技でこれによってたけやんは為す術なく敗退してしまう。

 それ自体をとやかく言う気はさらさらない。後述するがこれに対して僕はなんら否定的ではない。

 問題はこれを受けて『エアガイツ』シーンを牽引してきた重要人物である、あ~る・滝がTwitter上で「ミカド」で定期的に行ってきた対戦会を来年1月で終了と宣言してしまったことだ。

 彼は長い間、毎日毎日、まるで水を飲んだり、息をするかのように自宅でひとり『エアガイツ』をやり続けてきた人物だった。

 転機はあの3月11日だ。ひとり自宅でもくもくと『エアガイツ』をやり続ける彼の日常を震災が襲った。被災地ではなくともあの地震でなにも考えなかった人間はいないだろう。皆が皆、大なり小なり自分のこととして震災を捉え、考え、悩み、葛藤した。彼もまたそうだった。このままひとり『エアガイツ』をプレイしてるばかりでいいのかと。

 そして彼は決断する。

「最後に『エアガイツ』を広める努力をしてみよう。それでダメだった『エアガイツ』を辞めよう」

 ひとり自宅で基板と戯れ続けた男が立ち上がった瞬間である。

出典:「高田馬場に現れた新ヒーロー、道場破りの覇者「エアガイツ仮面」の目的とは?」より

「ミカド」の多くのプレイヤーたちはあ~る・滝がひとり『エアガイツ』の布教にかけた情熱を知っており、彼に対してはある種の敬意の念を抱いている。そんな彼による突然の対戦会終了宣言は波紋を呼んだ。

 彼が対戦会を終了する理由を要約すると「いままで『エアガイツ』はある程度やりこめばどのキャラでも勝つことができる」という持論が覆されてしまったことで「参加者に対して嘘をついてしまう」というようなものだ。

 それ以外に様々な理由があるのだとは思う。「エアガイツ世界大戦」を盛り上がりのピークとしてここ最近はさほどインカム(売上)も振るわず「ミカド」でも定期稼働はない状態で大会や対戦会のみでの稼働となっていた現状やマンネリ化など考えられる要素は少なくない。

 だがここに至る経緯に僕はいくつかの食い違いのようなものを感じてならない。

 なぜならエアガイツ仮面によるバグ技はいま発見されたものでもなんでもない。とあるまとめサイトでは「稼働17年目にしてゲームを崩壊させる致命的なバグ発見!」などと見出しづけされているがこれは誤報だ。少なくともエアガイツ仮面は「エアガイツ世界大戦」の際にこのバグ技を実践している。それを受けてあ~る・滝は「まさかこの場であれをやるとは…」と場内にいた僕に告白している。

 つまり「エアガイツ世界大戦」以前からエアガイツ仮面やあ~る・滝(その他一部のプレイヤーたち)はこのバグを知っていたと推測できる。

 僕はあの時点であ~る・滝は『エアガイツ』に対する思いや布教に対して一区切りついてしまったような気がしてならない。そのうえでの先の一件が決定打となったのではないだろうか。

 これに対して僕はなんとも言えない切なさ、やるせなさを覚えた(それはTwitterにも書いた)。

『エアガイツ』の件がとても切ない。僕やイケダが言ってきた「やりこみ続けるからこそ見える新たな領域」が結果的に悲しい事実を浮き彫りにしてしまったということなのか。切ない。こうした形で終わらせなければいけない現実がとにかく切ない。

出典:Twitterより(2015/12/08 21:45)

 切ないというよりやるせないんだ。

出典:Twitterより((2015/12/08 22:05)

 これは僕なりのあ~る・滝に対するメッセージであり、決して『エアガイツ』が終わってしまったというものではない(これについては一部で誤解を招いたようだ。言葉足らずだったことを反省する)。

 僕が言いたいのは「世界王者であるエアガイツ仮面自身が『エアガイツ』を崩壊させた」という論調も「エアガイツ仮面批判論」もすべて違うのだ、ということだ。

 これはたけやんの名誉のために言っておきたいのだが彼は対戦格闘ゲームのうまいプレイヤーである。だが『エアガイツ』に触れて間もなく、当日使っていた「佐助」というキャラに関しても事前にあ~る・滝からレクチャーを受けていたほどだった。

 ゆえに映像を見直すとバグを使ったガチハメで相手は為す術もないように見えてしまうが、実際は反撃の余地がないわけでない(事実、エアガイツ仮面はこの件に関して「自分が同じことをやられても勝つ自信がある」とコメントしている)。

 つまり『エアガイツ』は終わってはいないのだ。システムを揺るがすバグが発見されたのはなにも『エアガイツ』だけではない。多くの対戦格闘ゲームでそうした事実は発覚している。だがそれを乗り越える方法を模索し、新たなる遊び方を発見してくのが古い基板を楽しむ「2015年流」の立ち振舞ではないだろうか。

 僕の目にはエアガイツ仮面はバグより先にあるかもしれない新たなステージを見つけるためにいまのプレイスタイルを封印してないように映るし、敗北したたけやんもそれがわかっているからエアガイツ仮面にはなんの不信感もなく振舞っているように見える。

 ただそれに対してあ~る・滝が取った答えは別のものだっただけのことだ。誰が悪いだとかそういう問題じゃない。

 僕はここからが新たなるスタートなんじゃないかと思うのだ。

 このバグの一件でゲームそのものを否定する発言も見受けられたが、むしろここまでしゃぶりつくされる『エアガイツ』というゲームはすごいと言わざるを得ないのではないだろうか。

 少なくとも僕自身、二度もYahoo! ニュースのお題にするとは思わなかったくらいなのだから。