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ロックダウンの前に鉄道料金値上げを!

太田康広慶應義塾大学ビジネス・スクール教授
(写真:アフロ)

ロックダウンはできるか?

東京都での人流5割削減などを盛り込んだ8月12日のコロナ対策分科会の提言を踏まえ、政府は行動制限の強化を図るとのことである()。

全国知事会は13日に緊急声明を発表し、感染拡大を自治体でコントロールするのは困難だとして、ロックダウン(都市封鎖)のような思い切った対策を検討するように要求した()。

きちんとした統計調査ではないので参考程度だが、Yahoo!ニュースで「日本で、ロックダウン(都市封鎖)をするべき?」という調査では79.5%がロックダウンするべきと答えている()。

しかし、ロックダウンは憲法上できないという説もある()。いや、現行憲法上でもロックダウンできるという意見もあるが、意見が割れているのは間違いない。本来、こういう議論は平時にやっておくべきで、有事になし崩し的に解釈を拡げていくことには慎重になったほうがよいだろう。

それにロックダウンでは、必要な外出と不要な外出を外形的に一律に決めてしまうために、きめ細かい対処ができない。

しかし、必要な外出かどうかを自主判断にしていてはバランスがとれない。緊急事態宣言下でも、親子で話し合って「不要・不急」と判断して帰省しなかったら肉親が亡くなったという話もある。一方、IOCのバッハ会長の銀座散策は、「不要・不急」かどうか自主判断とのことである。

移動コストを上げてやる

2021年8月10日時点で、厚生労働省が報道などをもとに集計した結果では、2人以上の感染者が出た事例の累計数は9735件、うち最多は「企業等」の2053件で、7月上旬まで最多だった「高齢者福祉施設」の1788件、「飲食店」1734件、「学校・教育施設等」1360件を超えているとのことである()。政府の基本的対処方針に明記されている「出勤者数の7割削減」という目標はどの程度達成されているのだろうか。

短期的に実効性を持たせるなら人の物理的移動のコストを上げてやるのがよい。具体的には、鉄道料金を現在の何倍かに上げてしまえば、不要・不急の移動から自粛されていくはず。リモート・ワークももっと普及するに違いない。

比較的リスクの低い子どもたちの教育には対面が必須ということであれば、学割定期は除外すればいい。また、エッセンシャル・ワーカーの人の移動は鉄道料金が高くなっても行なわれるはずである。

鉄道は典型的な独占事業体なので、鉄道各社の利益最大化行動に任せると鉄道料金が高止まりし、鉄道サービスの過少供給になる。そこで、総括原価方式で適正利益を計算し、運賃に規制を掛けている。コロナ禍で乗客数が減っているので運賃を設定したときとは条件が異なるが、鉄道料金を値上げすれば、そうでない場合より、鉄道各社の利益は増えるのではないか。その分をプールし、エッセンシャル・ワーカーの通勤コストが増えた分を補填する原資にできないか。

オリンピックのとき、首都高の通行量を抑制するため、首都高の通行料金が一時的に1000円上げられた。感染症対策として一時的に鉄道料金を値上げすることは十分に可能であろう。

慶應義塾大学ビジネス・スクール教授

1968年生まれ、慶應義塾大学経済学部卒業、東京大学より修士(経済学)、ニューヨーク州立大学経営学博士。カナダ・ヨーク大学ジョゼフ・E・アトキンソン教養・専門研究学部管理研究学科アシスタント・プロフェッサーを経て、2011年より現職。行政刷新会議事業仕分け仕分け人、行政改革推進会議歳出改革ワーキンググループ構成員(行政事業レビュー外部評価者)等を歴任。2012年から2014年まで会計検査院特別研究官。2012年から2018年までヨーロッパ会計学会アジア地区代表。日本経済会計学会常任理事。

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