新一年生は事故の危険性を理解できるのか。子どものリスク認知と自己評価。

(写真:アフロ)

 新しい年が始まり、新小学一年生となる子どもをお持ちの保護者の皆さんは、入学の準備でお忙しいことと思います。小学校入学の準備の一つとして、一人で安全に登下校できるように、通学路を覚えたり、正しい道路の歩き方を練習している子も多いのではないでしょうか。

 2016年の調査では、人口10万人当たりの歩行中の交通事故死傷者数が最も多い年齢は7歳児と報告されています。学校生活が始まり、保護者から離れて登下校しなければならないといった状況が、新一年生の交通事故の可能性(リスク)を高めていると考えられます。そこで、子どもが交通事故の被害に遭わないように、正しい道路の歩き方を、今から繰り返しご家庭で訓練しておくことが必要になります。

◆ぼく・わたしは大丈夫の落とし穴

 交通事故に遭わないために、ドライバーや歩行者などの交通参加者は、交通事故のリスクや自分の運転・歩行に関する能力を適切に評価することが求められます。「自分は交通事故に絶対に遭わない」「自分は正しい道路の横断ができている」といったように、事故のリスクや自分の能力を過大に評価すると、道路を横断する際の確認が疎かになったり、危険に対して適切に反応できなくなる恐れがあります。

 この点から、交通事故のリスクや自分の歩き方を適切に評価できるように、子どもにも教えることが大切になります。

◆調査結果:小学新一年生のリスク認知と自己評価

 事故の危険性などを評価することを「リスク認知」や「リスク知覚」と呼びます。前にも述べたように、交通事故に遭わないためには適切なリスク認知が重要となりますが、新一年生は事故のリスクを適切に評価できるのでしょうか。また、自分の行動を客観的に見ることはできるのでしょうか。

 小学生を対象に行った調査では、図1に示すように、他の学年に比べて、新一年生では、自分は事故に遭わないと認識する児童が多いことがわかりました。また、青信号時に道路を横断すれば、または横断歩道を渡れば事故に遭わないと回答する児童は、新一年生で最も多いことも示されています。この結果は、新一年生はまだ事故のリスクといった抽象的な概念を理解し難いことや、交通社会の中で様々な経験を積んでいないことにより生じたものと考えられます。

注)(一社)日本損害保険協会自賠責運用益拠出事業(2020)による助成で得られたデータ

図1. 児童の交通事故のリスク認知

 また、同じく新一年生に「自分は正しい道路の歩き方を知っていると思うか」を聞いたのち、交通安全教育の場で道路横断時の確認行動を調べたところ、図2に示すように、「知っている」と回答した児童は周囲を確認する回数は多かったものの、確認する時間は「知らない」と回答した児童と大きな差が見られないといった結果が得られました。

注)日本交通心理学会第83回大会発表論文集の一部のデータをもとに作成

図2. 新一年生の道路の歩き方の評価と確認行動

◆新一年生に対する安全教育

 交通事故のリスクを低く評価し、自分は正しい道路の歩き方を知っていると認識している新一年生に対して、どのように安全教育を展開すれば良いのかが問題になります。一つの考え方として重要なのは、具体的かつきめ細かに教えることです。

 この具体的できめ細かな教育により、新一年生の多くが自分も事故に遭うリスクがあると認識し、適切な確認方法を習得できるようになることがわかっています。「道路を歩くときは交通事故に気をつけて」といった交通事故のリスクに関する抽象的な言葉ではなく、適切な行動を習得できるように、具体的できめ細かな教育を実践していただけると良いと思います。

具体的かつきめ細かな教育の方法については、以下の記事をご参考にしてください。

<道路の歩き方の教え方の参考例>

https://news.yahoo.co.jp/byline/ohtaniakira/20200324-00167485/

◆おわりに

 小学校入学まであと一ヵ月となりました。新一年生になる子どもが交通事故に遭わないように、事故のリスクや自分の横断行動について適切に認識できるように、今から教育を積み重ねていく必要があります。

 これに加えて、交通事故のリスクや自分の行動を適切に評価することは、ときには大人でも難しい課題です。未熟な交通参加者である新一年生が、事故に遭わないように、子どもへの教育とともに、周囲の大人による立哨や見守り活動の充実が重要になります。