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保護犬・保護猫 自分を成長させてくれる存在 俳優・坂上忍さん

太田匡彦朝日新聞記者
保護犬、保護猫への思いを語った坂上忍さん(太田匡彦撮影)

 犬13匹、猫1匹と暮らしています。そのうち6匹が保護犬、保護猫です。ペットショップで売れ残り、ひどい健康状態だったのを引き取った子もいます。困っている子たちを迎えていたら、いつの間にかこんな頭数になりました。

 保護犬のなかで印象深いのは、2017年にうちに来た「筑波サンタ」です。茨城県動物指導センターから動物愛護団体が保護した甲斐犬で、左前脚がありません。団体の方から「たいへんですよ」と言われましたが、引き取りを決断しました。

 センターに収容されるまでに過酷な体験をしたのでしょう、とにかく警戒心が強いのです。なかなかなついてくれず、家から脱走してたくさんの方に迷惑もかけました。最近ようやく、心を開いてくれるようになりました。散歩に行きたいとき、僕のほうをチラチラと見てきます。甘え下手なんですね。でもそんな様子がたまらなくかわいいです。

 一方で、昨年迎えた「平塚コウタ」は、愛情に飢えすぎていて赤ちゃんのように甘えてきます。6歳で飼い主に飼育放棄された子でした。ほかの犬たちにもベタベタするので、ちょっと嫌がられています。犬同士の距離感について、いましつけているところです。

 保護犬や保護猫は、ペットショップから来る子たちと本質的には何も変わりません。同じようにかわいい。ただ、かわいいだけではなく、飼い主を成長させてくれる存在でもあると思っています。それぞれが、いろいろなものを背負っています。飼い主の側から歩み寄り、彼らに合わせていく必要があります。どんな性格なのか、何が怖いのか、何が好きなのか――。焦らずゆっくりと探るようにしています。するとふとしたタイミングで、「家族になれた」と感じられる瞬間がきます。その時には本当に感動します。

 自分の年齢を考えると、僕個人が引き取れるのはコウタが最後です。だからいま、なるべく多くの犬や猫を救うためのシェルターを作りたいと、番組を通じて模索しています。保護犬、保護猫を迎えるという選択肢を、日本でもより身近なものにしたいと思っています。

「保護犬や保護猫との出会いをもっと広めたい」と話す坂上忍さん(太田匡彦撮影)
「保護犬や保護猫との出会いをもっと広めたい」と話す坂上忍さん(太田匡彦撮影)

(2019年5月26日付朝日新聞朝刊のフォーラム面のうち坂上忍さんの談話部分を再掲しました。すべての記事とアンケート結果はこちらからお読みいただけます)

朝日新聞記者

1976年東京都生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当した後、AERA編集部在籍中の08年に犬の殺処分問題の取材を始めた。15年、朝日新聞のペット面「ペットとともに」(朝刊に毎月掲載)およびペット情報発信サイト「sippo」の立ち上げに携わった。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)などがある。

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