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国連でまさかのピコ太郎氏「PPAP」?

大西連認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長
ピコ太郎 × 外務省(SDGs)~PPAP~(写真は動画よりスクショ)

国連でまさかのピコ太郎氏「PPAP」?

7月7日、外務省の公式youtubeチャンネルに「ピコ太郎 × 外務省(SDGs)~PPAP~」がアップされました。(まだ再生回数は6000回ほどです。2017年7月8日17時)

また、ピコ太郎氏が所属するavexからもリリースが出ています。

ピコ太郎、今度は外務省からの熱烈オファー!世界に向けてPPAP!|avex management Web

なんでも、外務省からの依頼でピコ太郎氏がSDGsのプロモーションに協力するということで今回の動画制作となったとのこと。このタイミングでの動画発表、そして、そもそも「SDGs」って何?って人も多いでしょう。せっかくなので少し解説します。

SDGsとは?

SDGsとは、2015年9月の国連総会で採択された新しい国際目標です。

「貧困」や「環境」、「ジェンダー平等」や「インフラ整備」など、17のゴール、169のターゲットを盛り込んだ壮大なもので、すべての国が2030年までに目標達成を目指すとされています。

SDGsロゴ(国連広報センターHPより)
SDGsロゴ(国連広報センターHPより)

目標1(貧困) あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。

目標2(飢餓) 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。

目標3(保健) あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。

目標4(教育) すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する。

目標5(ジェンダー) ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う。

目標6(水・衛生) すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。

目標7(エネルギー) すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する。

目標8(経済成長と雇用)包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する。

目標9(インフラ、産業化、イノベーション)強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。

目標10(不平等) 各国内及び各国間の不平等を是正する。

目標11(持続可能な都市) 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。

目標12(持続可能な生産と消費)持続可能な生産消費形態を確保する。

目標13(気候変動) 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。

目標14(海洋資源) 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する。

目標15(陸上資源)陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。

目標16(平和)持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。

目標17(実施手段) 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。

この17の目標のもとに、169の項目があります。(例:目標1の「貧困」には「貧困率の半減」など)

全文はこちら

日本語

英語

すでにお気づきの方もいると思いますが、SDGsは「Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標」です。ピコ太郎氏も早口言葉みたいに言っていますね。

Sustainable(持続可能)って言うと、なんか環境保護とかそういうことかなと思う人も多いかと思います。

でも、必ずしもそれだけではなくて、たとえば、「貧困」や「飢餓」を放置しておくと、子どもが「教育」の機会を得られなくなって「格差」が広がったり、都市がスラム化して「経済」にも影響したり……など、現在のさまざまな社会課題は相互に影響していて、どちらか一方のみの視点だとどこかにひずみがきてしまう

だから、相互に達成するのが難しそうだったり、一見、矛盾しそうなそれぞれの課題解決を、ある種「win-win」にできるキーワードとして登場したのが「Sustainable(持続可能)」というものです。(若干、僕個人の解釈が混入しています)

要するに子どもや孫の世代に安心して渡せる「経済」や「環境」、「社会」に地球レベルで変えていこうぜ、っていう話。

その際に「誰一人取り残さない(no one will be left behind)」という言葉がスローガンになっています。(国連のスローガンは熱い)

日本政府のSDGsへの取り組みは?

で、このSDGsは日本も採択しているわけですから、その達成のために2016年から安倍総理を本部長とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が立ち上がり、同12月には日本政府としての「実施指針」が策定されました。

実施指針

持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための具体的施策(付表)

そして、実は、僕はこのSDGsの実施指針の策定のための「円卓会議」という政府の会議の委員に選ばれていまして、それで関わりがあります。(委員会で発言した内容はあまり「実施指針」に反映してもらえませんでしたが、僕のようなNPO・NGOのメンバーや経団連等のステークホルダー等を巻き込んで一緒に作っていくスタンスはすごくいいと思います)

なぜ、僕が選ばれたのかというと、このSDGsは必ずしもこれまでの国連の目標のように「国際協力」だけではなく、日本も国内でこの目標達成を求められるからであり、僕は日本国内の貧困や格差の問題に取り組んでいる立場からの発言をおこないました。

日本のSDGs達成状況

今月(7月6日)発表されたばかりのSDSNとBertelsmann財団による各国の取り組み状況を調査したレポートによると日本の達成状況は157か国中の11位。(すいません、このレポートは英語のみです)

なかなか悪くないスコアと思いますが、「(目標5)ジェンダー」「(目標7)エネルギー」「(目標10)不平等」「(目標12)持続可能な生産と消費」「(目標13)気候変動」「(目標14)海洋資源「(目標15)陸上資源」「(目標17)実施手段」が弱いとされています。

国別レポートをみると(同上報告書218~219ページ)、「(目標5)ジェンダー」と「(目標12)持続可能な生産と消費」が特に悪いのがわかります。(ジェンダー不平等で消費と生産のバランスがおかしいということでしょうか)

また、一見、問題ないスコアを出している「(目標1)貧困」なども、poverty rate(貧困率)は2012年時点の16.1%というデータが採用されていますがOECD平均より高いこともあり、悪いとされています。

日本政府は「PPAP」

さて、前置きが少し長くなりましたが、実は来週の2017年7月10日(月)〜20日(金)まで、ニューヨークで「HLPF(持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム)」が開催されます。

日本政府も「自発的レビュー」といって、自国の取り組みをこのHLPFにて発表します。

すでに概要が英語ででていますが、ここでの日本政府のスローガンが「PPAP=Public Private Action for Partnership」となっています。

この政府の「PPAP」は、正直、よく意味が分からないスローガンなのですが……、そして、HLPF開催直前のこの時期にピコ太郎氏のSDGsにかけた「PPAP」動画の配信。

ピコ太郎氏の「PPAP」ありきで政府のスローガンを「PPAP」にしたのか、政府のスローガンが「PPAP」に偶然なったのでピコ太郎氏に依頼をしたのか僕には定かではありませんが、ピコ太郎氏は昨年、本家の「PPAP」動画が1.2億回再生されていることもあり、この抜擢となったのでしょう……。

ピコ太郎氏、国連へ?

まだ公表されていないので関係各所に問い合わせましたが詳しくは教えてはもらえませんでしたが、日本政府のHLPFでの発表において、上記のSDGs版の「PPAP」の動画、もしくはピコ太郎氏本人の登壇で調整しているという噂もあります。

日本政府の発表は7月17日(月)13時~を予定しています。

どのような発表になるのか楽しみです。(ピコ太郎氏が国連に行った場合、ウケるのだろうかどうなのだろうか……)

なお、SDGs版のピコ太郎氏の「PPAP」動画ですが、「Apple+Pineapple=No Poverty」と言っていますが、個人的には「Apple+Pineapple=Zero Hunger」だと思います。(目標1「貧困」でなく「飢餓」かと。まあ、どうでもいいですが……)

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長

1987年東京生まれ。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿での炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から始まり、主に生活困窮された方への相談支援に携わっています。また、生活保護や社会保障削減などの問題について、現場からの声を発信したり、政策提言しています。主著に『すぐそばにある貧困」』(2015年ポプラ社)。

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