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大手金融機関を装う、フィッシング詐欺が急増。9月は前月比4倍の事犯発生。

大元隆志CISOアドバイザー
インターネットバンキングに係る不正送金事犯が9月から急増している。出典:警察庁

 警察庁は、大手金融機関を装ったフィッシング詐欺が急増していると、注意を呼びかけた。警察庁の発表によれば、インターネットバンキングに係る不正送金被害については2016年以降、発生件数・被害額ともに減少傾向が続いていたが、2019年9月に発生件数436件、被害額は約4億2,600万円を記録。この数値は2012年以降最多で有り、被害額は2番目に多い水準となっている。

 被害の多くはフィッシングによるものとみられており、警察庁はメールやSMSに記載されたリンクからアクセスしたサイトにID・パスワード等を入力しないよう呼びかけている。

■多くの大手金融機関が標的に

多くの金融機関を装おったフィッシングメール等が確認されており、金融機関が注意を呼びかけている。主要な金融機関のフィッシングメール対策を紹介するので、自身が利用している金融機関の注意書き、対策を読み、被害に合わないように防止することを推奨する。

 ・みずほ銀行

  https://www.mizuhobank.co.jp/crime/email.html

 ・三菱UFJ銀行

  https://direct.bk.mufg.jp/info_news/smsinfo_1023/index.html

 ・MUFGカード

  https://www.cr.mufg.jp/member/notice/fishing/index.html

 ・三井住友銀行

  https://www.smbc.co.jp/security/attention/index23.html

 ・ゆうちょ銀行

  https://www.jp-bank.japanpost.jp/news/2019/news_id001359.html

 ・りそなグループ

  https://www.resona-gr.co.jp/others/notice_01.html

 ・新生銀行

  https://www.shinseibank.com/info/news160331_secure01.html

 ・あおぞら銀行

  https://www.aozorabank.co.jp/kojin/products/ib/security/ibsecurity/

■高度に洗練された偽サイトや偽メール

 数年前までのフィッシングメールのイメージは、カタコトの日本語や、デタラメな英語で送信されてくることが多く、特に知識の無い人でも、明らかに「怪しい」と感じることが出来た。しかし、最近のフィッシングメールやフィッシングサイトは、一目見ただけでは、「怪しい」と気付くことすら難しい。

 例えば、新生銀行を装うフィッシングサイトの例を以下に示す。これは、セキュリテイ・カードの情報を盗み出すために準備されたフィッシングサイトだが、バナーやレイアウト、配色等は偽物と本物で酷似しており、頻繁に利用している人で無いと、「怪しい」と感じることすら難しいだろう。そもそも、入力インターフェースが変化していたとしても「あれ?変わったのかな?」程度で、特に疑問に感じることなく、セキュリテイ・カードの情報を入力してしまう人も少なくないだろう。

 

新生銀行のフィッシングサイト例。よほど記憶力の良い人でないと、本物と偽物を外観だけで判断するのは難しい:引用:新生銀行
新生銀行のフィッシングサイト例。よほど記憶力の良い人でないと、本物と偽物を外観だけで判断するのは難しい:引用:新生銀行

 これは、三井住友銀行を装った、フィッシングメール例だ。これを見ただけで、フィッシングメールと判別出来る人は、殆ど居ないのでは無いだろうか。 

 

三井住友銀行を装った不審な電子メールの例。引用:三井住友銀行
三井住友銀行を装った不審な電子メールの例。引用:三井住友銀行

 このように、見た目だけでは、簡単に偽物か本物なのか判別することは難しくなっている。

■スマホ利用時は特に注意が必要

 スマートフォンはPCと比較して、情報量が少ないため、フィッシングメールのフィッシングサイト誘導成功率は高くなると言われている。

 以下に例を示す。左はiPhoneでAmazonを語るフィッシングメールを開いた図。右はPCのGmailで同じメールを開いた図。iPhoneの方では差出人が「Amazon」と表示されているが、PCの方ではメールアドレスが全て表示されており、正規のAmazonのドメインで無いことがわかる。このように、スマホではメールの差出人や、URLを確認する方法がPCと比べて乏しく、攻撃者の罠にひっかかりやすいと言われている。

同じフィッシングメールをiPhoneとPCで開いたキャプチャ。iPhoneの方では差出人名が省略されてしまっている。
同じフィッシングメールをiPhoneとPCで開いたキャプチャ。iPhoneの方では差出人名が省略されてしまっている。

■被害に合わないために心がけたいこと

 以下のような手段を心がけることで、被害に合う確率を少なくすることが出来るだろう。

 ・利用している金融機関のHPを訪問し、フィッシングメール等に対する対策に関する記載が無いか確認する

 ・スマートフォンのアプリを利用して、取引を行う

 ・事前に正しいウェブサイトのURLをブックマークに登録する

 ・メールやSMSに記載されたURLはクリックせずに、事前登録したブックマークからアクセスする

 ・各銀行のウェブサイトにて、インターネットバンキングのパスワード等をメールで求めるのか、求めないのか等の指針を確認する

 ・WebサイトのURLを確認する

CISOアドバイザー

通信事業者用スパムメール対策、VoIP脆弱性診断等の経験を経て、現在は企業セキュリティの現状課題分析から対策ソリューションの検討、セキュリティトレーニング等企業経営におけるセキュリティ業務を幅広く支援。 ITやセキュリティの知識が無い人にセキュリティのリスクを解りやすく伝えます。 受賞歴:アカマイ社 ゼロトラストセキュリティアワード、マカフィー社 CASBパートナーオブ・ザ・イヤー等。所有資格:CISM、CISA、CDPSE、AWS SA Pro、CCSK、個人情報保護監査人、シニアモバイルシステムコンサルタント。書籍:『ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦』など著書多数。

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