中国広州で「WeChat」を利用した身分証明書の試験運用開始

 日本でも話題になっている中国でのモバイルペイメントの急速な普及。筆者も毎年上海を訪問する度に、その浸透度に驚かされる。デパートは勿論、移動式の屋台のような店舗でもQRコードが貼られていて、それをスマホでスキャンすると決済が完了する。老若男女を問わず利用されている。この普及に一役買っているのが中国のIT大手テンセントが展開するメッセージングアプリ「WeChat」だ。WeChatの登録ユーザ数は9億8000万人で、中国人のスマホ利用者94%が利用していると言われている。この膨大なインストールベースが中国でのモバイルペイメント普及に弾みを付けた。

 そして、この「WeChat」に新たな機能が追加される。それは「身分証明証」だ。中国、広州市政府は2017年12月25日、中国で初となる「WeChat身分証明カード」の第1弾を発行した。新華社通信の報道によれば、この「WeChat身分証明書」を利用すると、利用者は顔認証技術によって身分を証明できるようになるという。

 「WeChat身分証明カード」は公安省に認められているため、広州では、行政サービス、ホテルのチェックイン、銀行サービス、運送サービスなど、身分証明書の提示が必要な様々な場所で利用出来る。

 2018年1月から、このパイロットプログラムは中国全土に推進されるとみられている。

■二種類の身分証明書

 「WeChat身分証明カード」には、「軽量版」と「アップグレード版」の二種類が提供されている。「軽量版」はインターネットカフェ等での身分提示といった日常生活での身分証明に使用されるもの。「アップグレード版」は法人登記等、ビジネスシーンなどでのより厳格な身分証明が必要とされる時に使用するもの。

 「軽量版」の場合には、利用者はまずスマホで「個人情報」と「自分の顔のスキャンデータ」をアップロードする。「アップグレード版」を利用するには、認証用のアプリを別途インストールする必要がある。

■AIによる顔認識技術で本人か判断

 「WeChat身分証明カード」では本人かどうかの判断をAIによる顔認識技術を利用する。広州市南沙区公安局のYan氏によれば、人物の確認を人間が行った場合には15%の確率でミスをする可能性があるという。一方、AIによる人物確認の場合には誤認率は1%になり人物確認の信頼性が向上するという。

 また、身分証明書の電子化は紙の身分証明書と比較して偽造が困難になる点や、他者にWeChatIDを乗っ取られた場合には身分証カードのデータを全て削除する機能等も実装しているため、セキュリティが向上するとした。

■監視社会の強化懸念も

 非常に便利に思えるサービスだが、中国のネット上のコメントでは監視体制が強化されるコメントが散見された。そういった懸念は有るにせよ、モバイルペイメントの浸透に次いで、「身分証明書のデジタル化」も進むとなれば、中国のデジタル化がまた一歩前進することは間違いない。そういった「デジタル化した社会」が当たり前になった中国で鍛えられた中国のIT企業が世界に進出し、米国に対抗出来る一大勢力になることもそう遠い未来では無いだろう。