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累計1000万部突破! 《十二国記》18年ぶり新作長編いよいよ発売

大森望SF翻訳家、書評家
小野不由美《十二国記》既刊9巻(11冊)新潮文庫

 日本ファンタジーの最高峰、《十二国記》18年ぶりの新作長編の発売がいよいよ目前に迫った。

 小野不由美が新潮文庫に書き下ろす『白銀の墟 玄の月』(しろがねのおか くろのつき)は、28年前に同じ新潮文庫で始まった高里/泰麒の物語についに決着をつける全4冊の大作。

 いっぺんに出しても読み切れないだろうという配慮からか、通常の新潮文庫とは別の独立した配本体制を敷き、10月に2冊、11月に2冊を刊行する。

 その1冊目の初版部数は、新潮文庫で今世紀最大。風の噂によると、4冊合計では200万部に迫る勢いらしい。この分を加えると、シリーズ累計の部数は、全10作合わせて1000万部を軽く突破することになる。

 最初の2冊の発売日は10月12日(土)ということで、ファンの間では「いちばん早く手に入るのかどこか?」をめぐってさまざまな情報がとびかっている。開店時刻を早めて対応する書店もいくつかあるが、現状、最速販売に名乗りを上げているのは、24時間営業の東京・山下書店 大塚店。午前0時から販売予定で、現在予約受付中とのこと。

 たとえ全4冊の半分でも、手に入れたらすぐ読みたい。会社とか行ってる場合じゃない! というのがファン心理。ツイッター上ではそのために有給休暇をとったという報告があふれ、「十二国記有休」がバズワードになっているほど。

 中には、労務に有休を申請して「読みたい本があるため」と書いたところ、「『十二国記』?」と質問され、「なんで分かったんです?」と訊き返したら、「あなたで3人目なんだよね」と言われた――という趣旨のツイートも。

 もう一個バズっているのが「12個クッキー」。「職場の人から「『12個クッキー』って小説がすごく売れてるらしいけど知ってる?」と聞かれ、知らないなあと思ってよく聞いたら十二国記のことだった」というツイートが、(前述のツイートと同じく)2万いいね以上、1万リツイート以上を記録している。

 なぜそんなに今度の新刊が待たれているのかといえば、映画『アベンジャーズ』シリーズ(というか、それをふくめたマーベル・シネマティック・ユニバース)で、『インフィニティ・ウォー』と『エンドゲーム』の間に18年の空白があったようなものだから――と別記事で形容したが、実際、複数の主人公の複数の物語がかわるがわる語られてきた《十二国記》の中で、いちばんメインとなるストーリーに多くのキャラクターが集結するという意味で、『風の海 迷宮の岸』→『黄昏の岸 曉の天』→『白銀の墟 玄の月』と続く今回の流れは、《マーベル・シネマティック・ユニバース》における『アベンジャーズ』シリーズと似たような位置にある。

 とはいえ、その物語に決着がつくのは11月9日。まだ1カ月あるので、まだ1冊も読んだことがないという人も、それまでに既刊の9巻(11冊)を読めば追いつける。

「そんなにたくさん読めない! 最初にどれを読めばいいの?」という人や、「そもそも十二国記ってどんな小説なの?」という人は、こちらの記事を参照してください。

18年ぶり新作長編『十二国記』の楽しみ方【前編・これから読む人のための徹底ガイド】

18年ぶり新作長編『十二国記』の楽しみ方【後編・全10タイトル、どこから読むか?】

SF翻訳家、書評家

おおもり・のぞみ/Nozomi Ohmori 1961年、高知市生まれ。京都大学文学部卒。翻訳家、書評家、SFアンソロジスト。責任編集の『NOVA』全10巻で第34回日本SF大賞特別賞、第45回星雲賞自由部門受賞。共著に『文学賞メッタ斬り!』シリーズ、『読むのが怖い!』シリーズなど、著書に『20世紀SF1000』『新編 SF翻訳講座』『50代からのアイドル入門』『現代SF観光局』など。訳書にコニー・ウィリス『航路』『ドゥームズデイ・ブック』、劉慈欣『三体』(共訳)など多数。「ゲンロン 大森望 SF創作講座」主任講師。

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