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法廷でも「モテ自慢」 リアルナンパアカデミー・カリスマ塾長の不敵な自信

小川たまかライター
(写真:アフロ)

 11人の逮捕者を出した、リアルナンパアカデミー(通称RNA)による連続集団レイプ事件。RNAの代表であり、多くの塾生からカリスマと崇められる存在だった「塾長」渡部泰介に対する、弁護人による被告人質問が11月11日、東京地裁で行われた。

 約3時間にわたる被告人質問で、渡部は一貫して起訴内容を否認。「同意のある性交」を主張した。被害者はもちろん、すでに実刑判決を受けている共犯メンバーの供述とも一致しない渡部の発言からは、並々ならぬ「自信」が見て取れた。公判の様子を一部レポートする。

裁判長が静止「一方的にまくし立ててもわからない」

 この日、渡部は白シャツにジーンズ姿で現れた。これまでの公判で身につけていたこともあったマスクと黒縁メガネはしておらず、痩せた頬が目立った。

 渡部は下記3件で起訴されている。罪状はいずれも準強制性交等罪。ナンパした女性にゲームやダーツをして酒を飲ませ、抗拒不能の状態で姦淫に及んだとされている。

(1)2017年11月、東京での事件…共犯者はO(懲役7年の実刑判決)

(2)2018年3月、東京での事件…共犯者はN(懲役5年の実刑判決)、Y(懲役3年執行猶予4年)

(3)2018年3月、大阪での事件…共犯の逮捕者は2名

 弁護人からの質問が始まってすぐ、裁判長がストップをかけた。

「あなたが一方的にまくし立ててもわからない。弁護人の質問に一問一答で答えてください」

 それまでの数分間、渡部は質問に早口で答えていた。止められる直前の発言は、(1)の事件で、新宿の路上で被害者女性に声をかけた際の詳細について。

 渡部は、共犯者のOが声をかけても女性がOKを出さず、自分が入るとすぐに女性がついてきたと述べ、「(自分が)Oのマイナスを補って余りある」働きをしたと自画自賛。さらにナンパ後は、自分が会話を盛り上げ「Oは会話に軽く参加する程度」だったと述べた。

モテていたことを強調する発言を連発

 つまり、自分は女性から好感を持たれていて、Oはそうでなかったことを強調した。裁判長がストップをかけた理由は、渡部がこのような「自己弁護」を滔々と述べることにもあったかもしれない。個人的な印象としては、「Oのマイナスを補って余りある」という表現は特に尊大に感じた。

 裁判長が注意した後は言葉を区切って話すようにはなったものの、他のメンバーの批判や自画自賛、自分は女性ウケの悪い他メンバーのフォローにまわっていたとする主張は変わらなかった。

「(OにLINEで『ゴミ、クソ、仕事しろ』と送ったのは)Oが片付けを手伝わなかったから」

「(飲みの場で自分が相手をしなかったことなどで女性の機嫌を損ねたが)私が『ごめんな、楽しく飲もう』と言ったら女はすぐに家移動を了承した」

「女からの逆ギラ。私にとっては女から求められるのは珍しいことではなく」

「(LINEでメンバーに『存在価値ないだろ』と送ったのは)この場において何の役にも立たない男だという意味」

 などが渡部の発言だ。「ギラ」とはセックスする雰囲気に持っていくこと。RNAではこのような仲間内での隠語が複数使われていた。

 一方で、自分が狙っていた女性と他メンバーが親しく会話を始めた際は、「(他メンバーが)勝手に女Cにギラついていたので、厳しく注意した」「(他メンバーと被害者の)接点を少なくしたかったので、トークもボディタッチも一切禁止した」と悪びれずに話す一幕もあった。

被害者を「女A」「女B」……

 公判中、渡部は終始、3件の被害者を「女A、女B、女C」と呼んだ。裁判に臨んだ他のメンバーは「Aさん」「Bさん」と「さん付け」だったことと比べると、かなり乱暴な印象を受けた。渡部は罪状を否認していることから、女性たちを「被害者」と印象づけたくない意図があるのかもしれない。しかし、この意図は功を奏するのだろうか。

 この他にも、被害者たちと事件後LINEのやり取りをほとんどしなかったことについて「一度性行為した女とは二度と会わない方針があったから」。「指スマ」というゲームについて「男が数字を言うとき男は指を上げない暗黙のルールがあるのに(共犯者は)それを知らなかった」といった発言があった。

 女性蔑視であり、女性を騙してゲームに負けさせる手の内の暴露なのだが、むしろ堂々と誇らしげに証言していたのが印象的だった。

 渡部の発言内容は、RNAという男だけのホモソーシャルな世界では誇れることなのかもしれない。しかしそれが法廷でどう見えるのか、自覚があるのだろうか。

 渡部は一貫して、女性が性行為に同意していたことを主張し、性交までの流れを詳細にまくし立てた。証言が詳細で堂々としているため、渡部の発言だけを聞くと信用してしまいそうになる。

 しかしたとえば、(1)の事件について渡部はOは会話できず自分が会話を盛り上げたと主張していたが、この事件の被害者は、これまでの公判で「Oはしゃべるタイプ。場を盛り上げて面白い人だと思った。渡部は記憶にない。ほとんど喋っていない。よく携帯をいじるなと思ったのを覚えている」と証言している。

 また(2)の事件では、女性が酔った素振りを見せず性行為に積極的だったことを事細かに主張したが、実際には被害者の意識がない状態が動画に残されていたことが明らかになっている。

グループLINEで「報告」と「指示」

 これまでのRNA事件公判でも明らかになってきたことだが、渡部や塾生はナンパ時や飲み会の途中でも相当な頻度でLINEを送り合っていた。

 たとえば(1)の事件で、女性とダーツゲームをしていた際に渡部がRNAのグループLINEに送っていたメッセージは、被告人質問中に明らかになっただけでも次の通り。

0:49  (共犯者の名前)ダーツ2連(※2連敗の意味)

1:04  (共犯者の名前)ダーツ3敗目

1:14  オレまで負けた

1:27  (※被害者女性がダーツしている画像)

1:31  また(共犯者の名前)負けた

 被害女性が「よく携帯をいじる」という印象を持ったのも無理ない。

 また、(3)の事件では女性との「性行為」の際にも数分おきにメンバーにLINEで「指示」を出していたことから「萎えてしまった」という発言もあった。

 女性との性交回数をゲームのように競い合い、グループLINEには、そのゲームの終わりを示す意味で「終戦記念日」と名付けていたメンバーたち。彼らが楽しんでいたのは、女性とのやり取りや「性行為」ではなく、ホモソーシャルの中での情報共有だったように思える。

 そしてグループの頂点にいた渡部は、女性だけではなく塾生も支配しようとしていた。傲慢な「指示」からそれは明らかだ。

 次回の検察による質問は12月に行われる。渡部はどのように答えるのだろうか。

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ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)、共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)など

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