財務次官セクハラ「第三者委員会の設置を」 性暴力の被害当事者団体が声明

「週刊新潮」4月26日号より

 セクハラ行為を報道された財務省の福田淳一事務次官。4月18日には辞任を表明したが、19日朝、財務省は調査を続ける方針を明らかにしている

 財務省の調査については、すでに批判が多い。なぜ第三者機関を設けず、財務省が調査を続けるのか。

■新聞労連「財務省に調査を任せて良いのか」

 日本新聞労働組合連合(新聞労連)は18日に声明文を掲出し、次のように厳しく指摘している。

セクハラの二次被害を生み出さないためにも、被害者を矢面に立たせないための配慮は調査の最優先事項だ。財務省が、同省と顧問契約を結ぶ弁護士事務所に被害者本人が名乗りでるよう求めていることは容認できない。

出典:「セクハラは人権侵害」財務省は認識せよ

「「女性活躍」を掲げる安倍晋三政権は、疑惑を持たれた人物が官僚のトップである財務省に調査を任せて良いのか。省庁を統轄する首相官邸がリーダーシップを発揮して、福田次官に厳格な事情聴取を行うことがなぜできないのか」

出典:同

 また、財務省の記者クラブ「財政研究会」も同日、「被害女性のプライバシーや取材記者としての立場がどのように守られるのかが明確でない」などの抗議文を提出したことが報じられている。

 オンライン署名サイト「Change.org」上で開始された署名「財務省は、セクハラ告発の女性に名乗り出ることを求める調査方法を撤回してください!!」には、これまでに3万5000人以上が署名。近く財務省に提出される予定という。

■「身内」への調査は厳正に行われたのか

 これらの声明や抗議、署名は、「調査をするな」と言っているわけではない。なぜ調査の主体が財務省なのかを強く疑問視している。告発を組織のトップが否定し、「訴訟も検討する」と言っているような状況で、その組織が委託した外部の弁護士に、被害者が情報提供を行えると本気で考えているのだろうか。

 福田事務次官に聞き取りを行ったのは、当面の間、次官代行を務める矢野康治官房長。矢野官房長は18日の財務金融委員会で、「(雑誌の取材に対して被害を語った女性記者が)財務省ではなく、弁護士さんに名乗り出て、名前を伏せて仰るということが、そんなに苦痛なことなのか、という思い」と語った。

 もし仮に、財務省が委託した弁護士が「中立の第三者」だと言うのなら、福田事務次官の聞き取りは、なぜ矢野官房長ではなく弁護士が行わないのか。また、矢野官房長から福田事務次官への聞き取りは、どの程度厳正に行われたのか。

 財務省が4月16日に発表した文書には「上記の聴取は福田事務次官の部下である矢野官房長等が行ったものであることを踏まえ、客観性を担保する観点から、外部の弁護士に委託して、引き続き福田事務次官への調査を続ける」とある。客観性が担保されないことを理解しているのであるならなおさら、なぜ矢野官房長の聞き取りのみの段階で発表を行ったのか。

 たとえば同文書では、

4月6日の会食について「同席した民間企業の女性が赤面してしまうような卑猥な発言を連発」とされている点については、当該女性とともに同席していたその上司から、「そのような事実はなかったし、当該女性も同様の見解である」との連絡をいただいている。

出典:福田事務次官に関する報道に係る調査について

 との福田事務次官のコメントがそのまま掲載されている。要は、疑われている福田事務次官自身が「事実はなかったと、女性の上司が言っていた」と言っているのだが、これについて財務省は、福田事務次官の言葉の通りを信じるという意味なのだろうか。福田事務次官から「上司」、「上司」から「女性」への力関係が働いている可能性は考えているのだろうか。この女性にも、情報提供するよう交渉しているのだろうか。

■「疑義」を言い立てる組織が中立なのか

 矢野官房長の「そんなに苦痛なことなのか」という発言は、「匿名の状況で女性記者が被害を繰り返し語ることがそれほど苦痛なのか」といったニュアンスが強いと受け取れるが、女性記者からすれば、「本当に中立的な調査が行われるのか」という懸念も大きいのではないか。

 矢野官房長は同委員会で「(質問した議員は)加害者、被害者と言っているが、本件は加害が行われたということに疑義が生じている」と、女性記者を疑う姿勢を明確にしてしまっているのだから、当たり前のことだと感じる。

 中立性を担保するために、なぜ財務省の外部委託する弁護士ではなく、第三者機関が調査を行わないのか。

■性暴力被害当事者団体「第三者委員会の設置を強く望む」

 性暴力の被害当事者などが参加する団体、一般社団法人Springは4月19日に「組織内のセクシュアル・ハラスメント対策への要望書」を発表した。※筆者は同団体スタッフ。

 この中で、「被害者保護」「第三者委員会の設置」「セクシュアル・ハラスメントを含む性的暴力防止研修」の3点を要望している。

(略)

今回の財務省の対応のように、加害者側組織と契約する専門家に被害事実を届け出させることは、内部の不正を告発する手法としては不適切です。このような場合には、中立の立場で調査する第三者委員会の設置を強く望みます。

そして、被害者のプライバシーが保護され不利益が発生しない環境を整えてください。

出典:組織内のセクシュアル・ハラスメント対策への要望書

 同代表の山本潤は財務省について、「セクシュアル・ハラスメントについて、財務省という組織として理解できていない」と指摘する。

 セクハラは基本的に、職務や地位を利用して行われる。セクハラを行った者が被害者を黙らすのはたやすく、被害者は声を上げづらい構造がある。また、告発者が、デマや断片的な情報、推測によって「ハニートラップではないのか」「大げさに言っている」といった疑いをかけられることは、これまでも繰り返し行われてきた。このような指摘を公に行うこと自体が「二次被害」にあたることを、財務省は考慮に入れるべきだ。

 また、テレビ朝日の会見については、「情報を第三者に渡したのが不適切というが、女性記者は上司が対応しなかったので週刊新潮に持ち込まざるを得なかった。報道機関として適切な対応ができなかったことを反省する必要がある」。報道する側にも大きな問題が残っていることに言及した。