国会議事堂前で「保育園落ちたの私だ」スタンディング 「行政の怠慢を親の自己責任にするな」の声

3月5日、国会議事堂正門前

「保育園落ちたの私だ」「待機児童をなくせ」「保育士の待遇改善せよ」。プラカードを掲げた男女が国会議事堂正門前に立った。3月4日18時半からと、5日13時半から行われたスタンディング。5日の様子を取材した。

「誰が書いた」と言った議員に腹が立った

Twitter上で「保育園落ちたの私だ」というハッシュタグで発信していた人たちから発生したアクション。プラカードのデザインもネット上で共有された。さまざまな年代、3~40人ほどが集まりプラカードを掲げた。

1歳の子を抱いた熊谷市在住の33歳女性は「国会の答弁に腹が立ったのが来たきっかけ。こういう集まりには初めて来た」と話した。「今度都内に引っ越す予定だけれど、都内では認可園に入れなかった。無認可園を考えているが、認可と無認可では2人目、3人目からの保育料金が全然違う。2人目、3人目を考えているので厳しいなと思う。国会で『誰が書いたんだ』という発言があったり、ニヤニヤしている議員もいたけれど笑いごとじゃないのに。この子が大きくなったときにどうなるんだろう」

船橋市在住の34歳女性は、「Facebookで友人が記事をシェアしているのを朝見て、いてもたってもいられなくなって」、2カ月の第2子を抱いて参加。家から通える範囲の認可園に希望を出したが入ることができなかったという。「2次の抽選でもたぶん入れないと思うので無認可を考えている。今小学校1年生の第1子も、最初は無認可園で、途中から認可園に入れた。会社に掛け合って人材確保をしてもらうなどしてもらったがこれ以上迷惑をかけられないので育休延長はありえない。社内には他にも保育園に落ちて泣いたと言ってるママがいた」

「(参加した理由については)『誰が書いた』と言った議員に腹が立った。ちょっと違うなという感じ。今日初めてこういう場所に参加したが、人数はちょっと少ないのかな。小さい子どもを連れてくるのはそもそも難しいから、もっと苦しかったり悔しい思いをしている人はたくさんいると思う」とも話していた。

「子どもがいない人がいる人に対してできることがある」

参加者の中には当事者ではない人もいた。九州から来た38歳の女性は、東京に旅行中、たまたまTwitterで知ったことをきっかけに2日間とも参加した。

「私は独身だし子どももいないけれど、姉は認可園に入れず無認可園に預けているし、会社の同僚でも困っている人がいる。1年半育休を取っても保育園が見つからなくて、しかも入れるか入れないかはギリギリまでわからない。仕事ができる人だから戻ってもらわないと私たちも困る。困るのはお母さんのせいではなくて、制度のせいです。小学校では待機児童なんてないのに」

保育の問題を通じて、子育て家庭とそうではない家庭、独身と既婚、子どものいる女性と子どものいない女性など、何かと「対立」という構図で捉えられることがあるが、「制度が整っていないことが対立の原因」とも。「今子どもがいない人が、今子どものいる人に対してかできることがあるし、将来子育てが終わった人が、そのとき子育て中の人を助けることもできる。本当はお互いがお互いをフォローできるはず」。

杉並区在住の34歳の女性は、Twitterで知って一人で参加した。

「私は子どもがいないけれど、同世代の人が困っている。深刻で異常な問題だと思うし、憤りを感じます。行政の怠慢なのに、親の責任、女性の自己責任のようにされているのはおかしいと思います」

「自分が入れてラッキーではダメだと思った」

都内在住の39歳女性は、認可園に落ちた姉(40)と、2人の子を持つ同僚(43)と一緒に参加。自身は子どもを認可園に入れることができたが、「自分が入れてラッキーで終わったらダメだと思ったから参加した。働くことややりがいをあきらめざるを得ない人がいる現実がある。保育園が決まらないことを理由に職場に戻れない人がいる現実はすごくもったいないことだと思う」

12歳と7歳の2人の子がいるという同僚女性(43)は、「2人の子どものどちらも、当時認可園に入れなかった。そのときの日本に捨てられたような気持ちは今でも忘れられない。途端に弱者になったと感じた。入ることができた認証保育園は自転車で片道30分。(子どもは社会で育てるものというが)夫と私だけで育てているような孤独な気分だった」という。「そのときのことを私は根強く恨んでる」と笑い交じりに強調した。

当事者でなくても声をあげることの重要性

参加者の声を聞いて感じたのは、待機児童の問題は子育て中の家庭だけの問題ではないし、ましてや女性だけの問題ではないということ。会社の同僚が復帰することができなければ、待っている側も困る。そしてそれは、保育園が見つからないために戻ってこれない母親の責任ではなく、制度の問題だ。会社の同僚が育休から復帰できないときに「困ったな」と感じたのであれば、一緒に「保育園を増やして」と声をあげることも必要だ。

認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏は、「政治が子育て層を簡単に無視できる、投票率以外の大きな理由」の中で、「子育て層だけは、「当事者」期間が非常に短い」ことが粘り強い社会運動につながらない理由の一つだと指摘し、「当事者でなくなっても、自分の味わった痛みを感じる人のために、動く」「当事者じゃなくても、共感した人が動く」ことの重要性を訴えた。

今回の参加者の中には、「自分の味わった痛みを感じる人のために」動いている人、「共感したことをきっかけに」動いている人が実際にいた。当事者でなくても声をあげることはできるし、声をあげるまでいかなくても関心を持つことが当事者を救うはじめの一歩となる。今回、「誰が書いたんだ」と野次を飛ばした議員に対して怒った人たちが「保育園落ちたの私だ」というハッシュタグをつくり、さらにリアルなアクションにつなげた。「私だ」と名乗ることにはもちろん意味がある。そして「私以外」も「私」を助けることができる。待機児童問題を子育て家庭だけに負わせないことで、解決への糸口をつかみたい。

ライターでフェミニストです。主に性暴力、働き方、教育などの取材・執筆をしています。著書『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)。やわらかめの記事はこちら→https://ogatama.theletter.jp/

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