田代まさしさん盗撮で罰金命令 性犯罪加害者に「治療」が必要な理由と、「治療」が反対される理由

携帯電話を使っての盗撮だったと報じられている

【9月18日19時55分追記】

田代まさしさんは9月18日19時2分にブログを更新。盗撮行為や疑わるような行為をしておらず、それを警察も確認していると説明。「ただ、私の当時の行動に誤解を招くような動きがあり、それが東京都条例違反にあたるとのことでしたので、私はそれを真摯に受け入れ、裁判所の略式命令についても対応することにしました。今回の処分については、常習性がないことや盗撮行為をしていないこと、すでに社会的制裁を受けていること等を考慮していただいたものであり、このような軽めの処分になっていることをご理解いただけましたら幸いです」と説明している。

以下記事は、田代さんが罪を認めたという報道を前提に執筆しましたが、この前提部分を田代さんが否定されているため、否定されている部分について、太字で修正を入れています。

【追記終】

盗撮の容疑で書類送検されていた田代まさしさんが略式起訴され、今月1日付けで東京簡易裁判所が罰金30万円の略式命令を出していたことが明らかになった。容疑を認めたとも報じられている(参考:田代まさし氏に罰金30万円 スカート内盗撮/産經新聞)【追記:9月18日に田代さん自身のブログで否定】。今回の件は被害者がその場を立ち去り被害届が出ていないこと、通報したのは第三者であること、田代氏さんと近しい人たちが「本人はやっていないと話している」とネット上で発信していたことから、事実の有無が取り沙汰されていた。

まだ詳細は報じられていないが、略式起訴、略式命令が行われ、本人が容疑を認めたと報じられていることを基に、田代さんに性犯罪の再犯があったと考えて記事を書き進めたい【追記:9月18日に田代さん自身のブログで否定】。本稿の趣旨は、性犯罪加害者の「治療」についてである。

田代さんが人気タレントとして活躍していた2000年に初めて書類送検されてからの15年間を簡単にまとめると次のようになる。

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2000年9月 駅構内での盗撮容疑で書類送検。罰金5万円の略式命令を受け、芸能活動を一時休止

2001年12月 芸能活動復帰から5カ月後に近所の風呂を覗いた軽犯罪法違反容疑で逮捕、その際に自宅から覚せい剤が発見され再逮捕

2002年3月 自動車運転中に人身事故を起こし、業務上過失傷害と道路交通法違反容疑で書類送検

2004年9月 覚せい剤取締法違反と銃刀法違反の現行犯で逮捕。執行猶予中の再犯であったことなどから、懲役3年6カ月の実刑判決。初の懲役。その後2008年に出所

2010年9月 麻薬及び向精神薬取締法違反で現行犯逮捕。その後の取り調べで覚せい剤取締法違反で再逮捕。懲役3年6か月の実刑判決。2度目の懲役。2014年に仮釈放

2015年7月6日盗撮容疑で書類送検されたことが報じられる。【追記】その後、罰金命令を受けたものの、9月18日に田代さん自身のブログで否定。

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性犯罪に関連する容疑を太字とした。

1回目と2回目の容疑こそ性犯罪関連だったが今回まで10年以上性犯罪事件を起こしていないことから、その後の覚せい剤関連の逮捕の方が印象に残っている人も多いだろう。

田代さんは、雑誌『サイゾー』7月号のインタビュー「田代まさし出所1周年の告白『ハイヤーパワーを感じて、ありのままの自分を認められるようになった』」で、薬物依存者のリハビリ施設「ダルク」のプログラムに定期的に参加していたことを語っている。

薬物依存のリハビリに通っていることは、これまでもイベントやインタビューなどで本人が語り、また報じられてきた。一方で、性犯罪に関する再犯防止ための治療プログラムを受けたという報道は見たことがない。※刑務所内での性犯罪者処遇プログラムは2006年から実施されているが、田代さんが懲役刑を受けたのは覚せい剤取締法違反であり、同プログラムが刑務所内で行われたかは不明。

最近は再犯防止の観点から、刑務所内で行われる性犯罪者処遇プログラムだけではなく、出所後の性犯罪加害者へのカウンセリング、治療プログラムの必要が報じられることも増えてきた。田代さんに、こういったものがあることを教えた人はいたのだろうか。参考:性犯罪、治療効果はあるのか… 「女性に受け入れられて当然」ゆがんだ思考(産経新聞/7・9) 

そもそも治療プログラムの存在を知らなかった可能性もあるが、盗撮と覗きという、性犯罪の中でも法的に「軽微」と分類される類のものだから、本人や周囲がそれほど深くは考えていなかったのかもしれない。もしくは実際はカウンセリングを受けていたものの、性犯罪関連のカウンセリングということで公にしなかったのかもしれない。

性犯罪加害者と対峙する専門家の中には、「やめたいと思っていてもやめられない加害者は少なくない」「アルコール依存と同じように、性犯罪依存は治療するべき」と指摘する人もいる。しかし、出所後に再犯防止プログラムやカウンセリングにたどり着ける加害者は、残念ながらまだ多くはないだろう。さらにいえば、捕まっていない性犯罪加害者が自発的もしくは身近な人に促されてカウンセリングに行くケースも少ないだろう。

「性犯罪被害者支援に関する検討委員会」(内閣府)で委員を務める一方で、性犯罪加害者へのカウンセリングを行う性障害専門医療センター(SOMEC)を起ち上げた精神科医の福井裕輝医師は、加害者治療の必要性について、次のように言う。

「性犯罪加害者と聞いて世間の人がイメージするのは、粗暴な人とか、自分とは関係ないような異常性欲の持ち主、というものかもしれません。しかし、実際に加害者と接してみると、見た目は普通で、通常の社会生活を行っている人が多いのです。覚せい剤やアルコール依存と同じように、ふとしたきっかけから性犯罪依存となり繰り返してしまう人もいる。だからこそ認知療法や投薬による治療が必要なのです」

田代さんがこれまでに行ったとされる、盗撮や覗きのような性犯罪にはどのような特徴があるのだろうか。また、どのように治療を行うのだろうか。

「盗撮や覗きは非接触型の性犯罪です。非接触型性犯罪者で多いのは、犯罪認識の乏しさです。被害者に直接触れていないので『相手を傷つけている』という感覚が非常に少ない。こういった場合、まず『このような行為が相手を傷つけることになる』という認識を高めるプログラムから始めます。

また、近年は撮影機能のある携帯電話やスマートフォンの普及から、盗撮への心理的なハードルが下がっていることが考えられます。盗撮しやすい道具を持っているからそうしてしまう、ということ。ですから、スマートフォンのカメラ機能そのものを使えなくしてしまうというのも『治療』の一つです。カメラ機能を壊したり、シールを貼って撮影できないようにするのです」

「性犯罪加害者は征服欲が強い場合が多いのですが、その裏側には自己肯定感や自尊心の低さがあります。田代さんは芸能人としては成功していましたが、根本的には自己肯定感が欠けていたのかもしれません。こういった場合、コミュニケーション能力を高め、自己肯定感を上げるケアも必要です」

一方で、田代について福井医師は次のようにも指摘する。 

「性犯罪の場合、短期で犯行がエスカレートするという特徴があります。最初は軽い痴漢だったのが、痴漢をしても捕まらなかったから強制わいせつや強姦を……となったり、盗撮や覗きを短期間で頻繁に繰り返したり。田代さんの場合、2000年と2001年に盗撮、覗きで捕まっていますが、その後は今回まで性犯罪での逮捕はありません。その間、再犯していなかったとしたら、性犯罪加害者のケースとしては珍しいと言えるでしょう」【追記:2015年の容疑については、田代さん自身のブログで否定】

「薬物依存が話題になる芸能人は多いです。田代さんもそうですが、彼らの場合は『病院へ行こう』と勧める人がいるのでしょう。しかし性犯罪が依存だということが知られていないので、性犯罪を起こす人に『病院へ行こう』と言う人は少ない。加害者治療の必要は、さらに周知されてほしいと思っています」

被害者を守るために、加害者の治療を。ネット上では性犯罪事件が報じられるたびに「加害者を去勢しろ」というコメントが見られる。だが日本の法律上、加害者を去勢することはできない(また海外では、去勢されても再犯を起こす性犯罪加害者のケースもある)。加害者治療は「心の去勢」として意味を持つのではないか。また、加害者治療の必要性を指摘することは、「治療が必要な人だから、罰を免じろ」という意味ではない。通常の犯罪では罰を与えることが一定の抑止力になると考えられているが、性犯罪依存が疑われる加害者の場合、罰を与えるだけでは再犯が防止できない可能性が高いからこそ、再犯防止プログラムやカウンセリングが必要と言われている。

罰と同時に治療を。再犯防止の観点から、加害者治療への理解が広がることを期待したい。ただし、加害者治療の必要性については反対意見もある。その中の一つが、「被害者感情を無視している」というものだ。加害者の治療は、再犯による被害者を1人でも減らすために必要なことだが、反対意見の背景には、未だに性犯罪被害者が充分なケアを受けられずに苦しんでいる事実がある。性犯罪加害者が受けるケアの中に「コミュニケーション能力を高め、自己肯定感を上げるケア」といったものもあると聞けば、なおさらだろう。被害者の中には被害によって人とコミュニケーションを取れなくなり、自己肯定感をはぎ取られてしまった人もいるからだ。彼ら彼女らの気持ちも充分に理解されなければいけない。

性犯罪被害を受けたことを誰にも言えない被害者もいる。訴えても信じてもらえない人もいるし、さまざまな圧力によって抑えこまれることもある。訴える気持ちを持った頃には時効が発生していたという例もある。加害者が近親者や知人・友人であるために訴えることができなかった人もいる。警察に届け出ても犯人が捕まらない場合もある。被害を訴えることで「あなたも悪かったのでは」「隙があったから」「なぜ抵抗しなかったのか」などと言われる二次被害に遭うこともある。私が聞いた例では、警察に届け出た性犯罪被害者のAさんは「犬に噛まれたと思って忘れなさい」と言われ、別のBさんは「あなたのような雰囲気を持った人は、被害に遭うのは若いうちだけではない。30歳になっても40歳になっても被害に遭う」と言われたという。まるで加害者ではなく、被害者に誘う雰囲気があるから悪いともとれるような言い方だ。こういった対応はあってはならないし、警察でも研修などによって徐々に性犯罪被害者への理解が高まりつつあるとも聞くが、まだそれが完全とは言えない状況だ。自らの被害を映画『ら』に撮った水井真希監督は、被害に遭った後に警察に電話したところ、「今いる場所の最寄りの警察に電話してください」と言われ、かけ直すと「発生現場の警察に電話してください」とたらい回しにされ、挙げ句の果てに「親御さんと相談してから来てください」と電話を切られたという。やがて捕まった犯人は水井さんの事件後も犯行を重ねていた。全ての警察がこういった対応だとは思わないが、こういったケースは実際に起こっている。犯罪被害者への理解やケアが充分ではない状況で、被害者や被害者を支援する人たちが「加害者へのケア」に心から頷くことができないのは当然だろう。性犯罪については、被害者も加害者も、多くの人の目には見えていない。被害者と加害者、両方の存在を知り、一般の認知を高めていくことで、被害者は被害を訴えやすくなる。楽観的すぎるかもしれないが、加害者が自分からケアに向かうことにもつながるかもしれない。性犯罪撲滅のためには、世の中の関心が必要不可欠だ。性犯罪被害者と加害者に関する書籍はどちらも何冊か販売されている。amazonですぐに探せるものもあるので、関心を持った人はぜひ調べてみてはいかがだろうか。

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