痴漢は性暴力に入りますか?

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バナナはおやつに入りますか?みたいな言い方をして申し訳ありません。

決してふざけているわけではありません。

私もたびたび記事を書いている「ウートピ」というニュースサイト。

このサイトには「ウートピ世論」という、サイトを見た人がアンケートに答えるコーナーがあります。

このコーナーで先日「実は過去に性暴力を受けたことがある?」というアンケートが行われました。

4月15日の時点で、集まった票数は2822票。ウートピは「女性をちょっと生きやすくするオンナ目線のニュースサイト」がコンセプトですが、女性の貧困や働き方などと同時に、性犯罪被害者の声など性被害について取り上げた記事が多数あります。サイトの性質上、性犯罪被害に関心の高い人が多く見ていると考えられ、アンケートで出た数字はあえてここでは取り上げません。

気になったのは、アンケートに答えた人たちのコメントです。

以下、引用します。

「ないに入れたけど痴漢なら山程ある」

「痴漢にあったことある程度だからないにした。同意を得ない性行為は暴力」

「無いに入れてしまったけど、痴漢やそれまがいのことならあったので『あり』ですね」

「無いに入れてしまったけど、痴漢行為も性暴力なら」

出典:実は過去に性暴力を受けたことがある?(ウートピ)

中には「この質問は、性暴力が具体的に何を指すのか示して、もう一度やってほしいです」というコメントも。

「性暴力」について検索すると、確かに強姦や、DVの中で性行為を強要するようなものの例が出てきます。「性暴力」という言葉は性的被害の中でも強姦や暴力を伴う性的被害を表す言葉と受け取られている節があるようです。ただ、個人的には、心理的虐待やモラルハラスメントも「暴力」として認識され始めている現代において、痴漢は性暴力だと思います。また、性暴力被害者支援サイト「ぱーぷるラボ」の用語解説には、「性暴力とは 明確な定義はなさそうですが、性犯罪よりも意味が広く、“意に反する性的な言動すべて”が該当するという考え方が主流です。性暴力の中に、性犯罪、性的虐待、セクシュアルハラスメント、デートレイプ、マリタルレイプ、痴漢、露出狂、盗撮、ポルノなどが含まれます」という一文があります。

また、服の上から触る痴漢行為は迷惑防止条例違反の「痴漢行為」となることが多く、電車内で下着の中に手を入れたり、陰部を露出して押し付けるような行為は「強制わいせつ」にあたります。どちらも性犯罪です。※詳細は、「電車内での「強制わいせつ」が年間340件起こっている日本(わかっているだけで)」へ

服の上から触る痴漢行為は「軽い行為」と思われがちですが、権利を不当に侵害されている行為であることに間違いありません。性犯罪被害者は被害を訴えづらい現状があることが知られています。被害者が「人に知られたくない」と思ってしまうことや、二次被害を恐れることが理由ですが、痴漢に関していえば、それが不当な行為であることを主張できない人も多いのではないかと、このアンケート結果を見て感じました。寄せられたコメントには次のようなものもあります。

「犯人分かってたけど、面接に行く途中で急いでいたから、そのまま電車をでてしまった。今思えば、遅刻してもいいから通報すればよかった」

私は自分が高校生だった頃、通学電車の中で「性器の中に指を入れられる」という行為を受けたことが1度ではなくありました。でも当時、警察に届けたことはなかったし、親に言ったこともありません。最近になって仕事で性犯罪について調べるようになり、自分の受けた行為が「強制わいせつ」にあたると知ってショックを受けました。高校時代は頻繁に痴漢に遭ったし、友人の多くもその被害に遭っていました。恥ずかしいことだから大人に言いたくないという気持ちもありましたが、被害に遭う回数が増えるうちに、だんだんと「これは大したことではない」という意識が働いたのだと思います。「痴漢ぐらい、大したことではない」と。でも実際には「強制わいせつ」にあたるものもあったし、そもそも服の上から触る行為であっても許されないことです。私は自分自身の経験から、性犯罪の被害者は「被害内容を大したことではなかったと思い込もうとする」傾向があると思います。性犯罪を「いたずら」と呼ぶべきではないとよく言われますし、私もそう思いますが、被害者自身の中にも「いたずら」だったと思い込むことで被害を小さく捉えようとする心理は恐らくあります。

アンケートに寄せられたコメントのように、被害者の中には痴漢を性暴力だと認識していいのかどうなのか、迷いを感じる人もいます。被害を受けた人に、それは性犯罪であり、性暴力だったと伝えるのは酷なことかもしれませんが、私はまず被害者から被害を正しく認識していくべきだと思います。「なかったことと自己暗示をかけてる」というコメントもありました。性犯罪被害者に取材した中では、同じように性犯罪被害を受けた女性から「大したことではない。忘れた方がいい」と言われた人もいました。被害者を思っての言葉かもしれませんが、疑問を感じずにはいられません。

上で引用したコメントには「今思えば、遅刻してもいいから通報すればよかった」とありますが、被害者が被害を認識しなければ、加害者を捕まえられません。駅にはよく、「痴漢は犯罪です」というポスターが貼られています。あれは加害者に向けての言葉だと思っていましたが、もしかしたら「痴漢は犯罪なので、被害に遭ったら届け出てください」「被害を目にしたら届け出てください」という、被害者や第三者へのメッセージも込められているのかもしれません。私は高校生の頃に、自分の遭った被害を届け出なかったことを後悔しています。小学生でも電車内で痴漢の被害に遭うことがあるという日本の現状を目の当たりにし、自分の知っている子どもが性犯罪に遭うことを想像すると気が狂いそうになるからです(実際には気が狂いそうになるので想像しません)。

日本人は謙虚な国民性だと言われますが、痴漢被害に遭った被害者たちが「強姦ほどの被害ではないので、痴漢ぐらいで性暴力と言ったら申し訳ない」と思っているのだとしたら、それはいったい何のための遠慮なのかと思います。そこは謙虚になって譲り合うところではありません。

日本の刑法において「強姦」とは、「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする」とされています。以前から、この「強姦」の定義は非常に狭義だと指摘されています。たとえば、肛門性交などのかたちで男性が被害に遭った場合や口腔性交(オーラルセックス)の強要は「強姦」ではないと考えられています。男性への性行為強要も、生きるために必要な食べ物を口にする口への姦淫も、「女性器への挿入」と比べて程度が軽いとなぜ言えるのでしょうか。

言葉の定義には社会の考え方が表れます。痴漢は性犯罪であり、性暴力です。認識を変えることで社会を変えていきましょう。

※ちなみに、これまで執筆した記事の中で繰り返し書いていますが、子どもが性犯罪被害に遭ったときに「不当なことをされた」と大人に言えるための教育を徹底することが急務だと考えています。

(関連)

「私が訴えなかったせいで犯人はのうのうと暮らしていた」水井真希監督が自らの性犯罪被害を映画化した理由

電車内での「強制わいせつ」が年間340件起こっている日本(わかっているだけで)

(参考)

3割の女性が「性暴力を受けたことがある」 経験者の声でわかった深刻な被害の実態(ウートピ)

痴漢、レイプ、デートDV…「それって被害者のせいになるの?」 女子高校生らが議論した性暴力の“背景”と“解決策”(産経ニュース)

「性暴力禁止法の制定を」国会議員に必要性を訴え(福祉新聞)