電車内での「強制わいせつ」が年間340件起こっている日本(わかっているだけで)

写真はイメージです(撮影:長尾真志)

先日、個人的なブログに「女子高生という子どもが、電車内という社会で、痴漢という性被害に遭うことについて」という記事を書いた。そのすぐ後、ダイヤモンドオンライン内で「電車内痴漢で被害者まで責められるのはなぜ?週刊誌も問題提起した「認識の差」に潜む論理」という記事を書いた。ブログの方は個人ブログとしては反響が意外なほど大きく、またダイヤモンドオンラインの記事にも一定の反響があったので、その反響と考えたことについてまとめたい。

まず、ブログと記事で書いたことを、簡単に要約する。

・私自身が体験した電車内での痴漢被害の詳細

・学生時代からこれまでに見聞きした痴漢被害

・警察庁がまとめた「電車内の痴漢撲滅に向けた取組みに関する報告書」(2011年)の一部引用

・上記によれば、2009年における電車内での強制わいせつの認知件数は340件。迷惑防止条例違反のうち、痴漢行為の検挙件数は3880件(どちらも全国)。しかし、同調査で行われたアンケートでは被害に遭った人のうち警察に届けた人は10分の1程度という結果もあり、認知・検挙件数が実態を示しているとは言いがたい

・電車内痴漢の場合、「強制わいせつ」にあたる行為は、下着の中に手を入れたり、露出した性器を女性の手に擦り付けることなど。服の上から触る行為は迷惑防止条例違反の「痴漢行為」となることが多い

また、記事を通して訴えたいのは次のような点だった。

・性被害は、被害者への配慮のため、その被害実態が周知されることが少ない。もちろん配慮は必要だが、犯罪撲滅への意識を高めるためには、被害実態をある程度周知することも必要ではないか

・性犯罪は再犯率が高い。再犯を防ぐために、加害者への矯正プログラムが必要

・子どもが被害に遭うこともあるため、子どもを痴漢被害からどう守るかを考えていかなければならない

■記事への反応1 「学生時代、精液かけられたこと、目の前で自慰始められたことを思い出した」

女子高生という子どもが、電車内という社会で、痴漢という性被害に遭うことについて」の中では、詳細な被害体験のエピソードを書いたが、これに対して多かったのは、「自分も被害に遭った」「学生時代は日常的に被害に遭っていた」などのコメントだった。

もともとブログ記事を書いた理由は、被害に遭うことが多い女性と、被害に遭うことが少ない男性とでは「電車内痴漢」について、その数と実態に認識の差があるのではないかと思ったからだった。ダイヤモンドオンラインの記事では、ブログへの下記のような反応の一部を引用した。どれもツイッターで寄せられた意見だ。

「ほんと、痴漢って服の上だけじゃないからな。この手のことはしょっちゅうある」

「学生時代、精液かけられたこと、目の前で自慰始められたことを思い出した」

「私が一番痴漢に遭っていたのは小学生のとき、電車通学していたときだった」

出典:電車内痴漢で被害者まで責められるのはなぜ? 週刊誌も問題提起した「認識の差」に潜む論理

また、男性でも痴漢被害に遭ったことがあるというコメントもあった。中には、小学生のときに被害に遭ったという男性もいた。さらに、筆者の元に直接メッセージを送ってくれる人もいた。幼い頃から被害に遭うことが多く、現在友人知人に声をかけて100人ほどの会をつくり、被害実態や対策方法を共有しているという20代の女性。10代の娘が電車内で繰り返し痴漢被害(強制わいせつにあたる行為)に遭ったという男性からは「加害者のことは絶対に許せない。犯罪被害を伝えていくことが性犯罪の抑止につながるのではないかと期待する」という内容のメッセージを受け取った。中には次のようなものもあった。

二十年ほど前、受験生だった時に英語の塾に通っていたのですが、そこで講義が始まる前、一部の受験生達が、「俺はこんな痴漢をした事がある」という自慢大会をしている場に遭遇した事があります。僕は怖くなってその場から逃げましたが、そういう実態があるという事も知ってもらいたくコメントさせていただきました。

■記事への反応2 「被害者の防犯意識が低いことも問題」

上で引用したような共感や、「被害実態を知ることができて良かった」という反応が最も多かったと感じたが、記事を書く前に想像していた通り、やはり被害者にも問題があるという意見もあった。

性犯罪被害について報じられるときに、つきもののようになっているのが、こういった被害者を責めるコメントだ。被害者を責めることはあってはならないことはこれまでも繰り返し言われてきたことだが、ここでもその理由について述べたい。私が被害者を責めてはならないと思う理由は次の通りだ。

1、被害者が一番自分自身を責めている。自分を責めることは自傷行為につながる

性被害に遭ったとき、被害者は被害に遭ってしまった自分を責め、「自分が悪かったのではないか」という意識に陥りやすい。それに追い打ちをかけるようなことをしてはならない。

レイプ被害「あなたは悪くないと被害者に伝えてほしい」サバイバーが語る回復への道」(弁護士ドットコム)の中では、米国で犯罪被害に遭った女性が被害当日に性犯罪被害者サポートセンターから訪問を受け「今夜起こったことは、あなたのせいじゃない」と声を掛けられたこと、その言葉が大きな助けになったことが語られている。

自分を責めてしまうこと。それは突き詰めれば「生まれてこなければ良かった」につながってしまう。身近な人が被害に遭ったときに「どうして逃げなかったの?」と聞くことや、性犯罪を報じるニュースに「被害者にも油断があった」とコメントをすること。それがいかに酷なことなのかを知ってほしい。

2、被害に遭うのは「派手な格好をしているから」ではない

被害者を責めるときに、ときとして「派手な格好をしているからだ」と言われることがある。しかし、「電車内の痴漢撲滅に向けた取組みに関する報告書」内の、痴漢被疑者(219人)に対する意識調査では、「なぜその被害者だったのか」について、「服装が派手だったから」と答えたのはわずか1.8%。多いものから順に「偶然近くにいたから」(50.7%)「好みのタイプだったから」(33.8%)「訴え出そうにないと思ったから」(9.1%)「好みの服装だったから」(7.8%)となっている。

注意を促したいのであれば、むしろ「どんな格好をしていても被害に遭うから気を付けなさい」と言うべきだ。

3、被害者を責めることで、被害者の口をふさぐべきではない

犯罪被害の実態を共有することが防犯への意識を高めると考える。

性犯罪は、その被害内容から被害者が声をあげづらく、その被害実態が周知されづらい。声をあげることで被害者を責める声が出るのであればなおさらだ。

■記事への反応3 「痴漢冤罪について調べろ」

被害者を責めるコメントがつくことはある程度想定していたが、「痴漢冤罪についても調べろ」「視覚障害者男性/外見では分からない障害疾患を抱える男性を意図的に女性専用車両から追い出す女性乗客の存在を無視して、一方的に痴漢被害の深刻さを語られてもふーんとしか感じられません」といった反応にはびっくりした。

痴漢冤罪記事のURLを貼り、「この事件を調べてください」「調べるのであれば、どのように記事にするつもりか答えてください」と何度も繰り返す人もいた。痴漢冤罪はあってはならないことだと思うし、周囲の男性が「通勤電車では手を下におろさない」と言っているのを聞くと気の毒だと思う。私のブログへの反応でも、「女性から痴漢被害を聞いたこともあるが、私自身は痴漢に間違えられたことがあり、友人の中には何度も間違えられたことのある男性がいる」という男性からのコメントもあった。痴漢冤罪は恐ろしいことだと思う。また、女性専用車両の使い方を間違える女性も問題だと感じる。

ただ、痴漢被害を訴えることは、それらの問題をないがしろにすることではないし、痴漢被害が減ることで、痴漢冤罪も減るのではないかと思うのだが(痴漢冤罪には、犯人取り違えと痴漢でっちあげの2パターンがあるが、痴漢犯罪が減ることで少なくとも前者は減らせる)。

ダイヤモンドオンラインの記事で、私は次のように書いた。

痴漢行為を行わないほとんどの男性にとって、痴漢被疑者であるかのように扱われたり、空いている女性専用車両の隣の車両ですし詰めになることが不快であることはわかる。ただ、その不快感は女性ではなく、痴漢行為を行う犯罪者に向けられるべきだ。

出典:電車内痴漢で被害者まで責められるのはなぜ? 週刊誌も問題提起した「認識の差」に潜む論理

被害に遭うことが少ない男性と、実際に被害に遭う女性では認識の差があることは仕方ない。被害にあったことや被害内容は言いづらいものだが、その情報を共有すれば、男女間で痴漢防止対策への議論が活発になるのではないか。ツイッター上では、「男対女ではなく、人間対痴漢の問題」という内容のつぶやきがあったが、本当に同意する。

出典:電車内痴漢で被害者まで責められるのはなぜ? 週刊誌も問題提起した「認識の差」に潜む論理

伝えることの難しさだったり自分の未熟さだったりを痛感するのだが、何度も繰り返し記事を書き、伝えていくことを続けたいと思っている。

■今後の課題について

1、加害者への矯正プログラムと被害者のケア

ダイヤモンドオンラインの記事にも書いたように、一度捕まっても再犯する加害者が多いことから、加害者への矯正プログラムは必要だと考える。記事で取材した、田房永子さんの「『痴漢は犯罪です』というポスターに『痴漢行為は治る可能性があります』と書き、加害者に矯正プログラムの存在を教えてあげるほうが、痴漢撲滅への近道なのではないだろうか」という意見に同意する。

ただ同時に、「自分たちは何のケアも受けていないのに、加害者に対してだけカウンセリングを行うなんて」とショックを受けてしまう被害者もいるという。被害者が必要とするときに、どこに相談すればいいのか。情報の周知がさらに必要だ。

2、子どもの被害実態の把握

記事への反応の中で多かったのは「制服を着ていた学生時代が、一番被害に遭いやすかった」というものだ。上記でも引用したように、小学生・中学生時代に被害に遭ったという人も複数いた。

上記で引用した「電車内の痴漢撲滅に向けた取組みに関する報告書」の調査では、痴漢の被害実態について、東京・名古屋・大阪の3大都市圏に居住し、通勤・通学のため電車を利用している16歳以上(40代まで)の男女に調査を行っており、全体の13.7%が「過去1年間以内に痴漢被害に遭ったことがある」と答えている。しかし、今後は通学のために電車を利用する小学生、中学生を含む学生への痴漢被害を把握することも必要なのではないか。考えたくないことだが、学生に限って調査をすれば、さらに被害者の割合は増えるのではないか。

もちろん大人に対する性犯罪被害もあってはならないことだが、「騒がないから」「大人しくしているから」という理由で子どもを狙う犯罪者がいるのだとしたら見過ごすことはできない。子どもへのアンケートに配慮が必要だというのであれば、20歳以上の成人に、「何歳の頃に最も痴漢に遭いやすかったか」を聞き、その被害実態を明らかにするべきだ。

3、子どもの防犯意識を高めるために

まずは被害実態を把握することが必要だが、子どもが性犯罪被害に遭わないために、どのようなことを子どもたちに教え、伝えていけばいいのか考えていかなければいけないと思う。性犯罪のみに重点を置いたものではないが、民間の警備会社が無償で小学校などに対して防犯教室を行うプログラムもある。

以前子どもに対する性犯罪被害防止教育を取材した印象では、子どもをどのように性犯罪から守るかは、各家庭によって意識の差がかなりある。性教育を家庭内で行うことに抵抗のある人もいるだろう。どのように親たちが子どもを性犯罪から守ればいいのか。親たちに対しての講習なども、今後広がっていくべきだ。