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北朝鮮が新型ICBM「火星17」の発射成功を発表

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・労働新聞より新型ICBM「火星17」

 11月19日、北朝鮮は前日18日に発射した弾道ミサイルが新型ICBM「火星17」であり、金正恩による現地視察があったことを発表しています。北朝鮮の公式発表による火星17の性能数値は以下の通りです。

平壌国際空港で発射された新型大陸間弾道ミサイル「火星砲-17」型は最大頂点高度6,040.9kmまで上昇し、距離999.2kmを4,135秒間飛行して、朝鮮東海公海上の予定水域に正確に弾着した。

「核には核で、正面対決には正面対決で 朝鮮労働党の絶対不変の対敵意志厳粛に宣言 敬愛する金正恩同志が朝鮮民主主義人民共和国戦略武力の新型大陸間弾道ミサイル試験発射を現地指導された」:労働新聞(2022年11月19日)

 ほぼ韓国軍と自衛隊が観測した数値と一致しています。なお発表文にはMIRVなどの特殊な弾頭を意味する記述は無く、普通に火星17の実戦配備に向けた発射試験だったことになります。

北朝鮮・労働新聞より新型ICBM「火星17」
北朝鮮・労働新聞より新型ICBM「火星17」

北朝鮮・労働新聞より新型ICBM「火星17」
北朝鮮・労働新聞より新型ICBM「火星17」

北朝鮮・労働新聞より新型ICBM「火星17」の噴射炎デフレクター装置
北朝鮮・労働新聞より新型ICBM「火星17」の噴射炎デフレクター装置

 火星17は今回11月19日の発表写真でも、3月25日の発表写真と同じ特徴が確認できます。発射機は台座と切り離さずそのまま発射していることや、第1段ロケットの主噴射ノズルは4個であることなどです。

 なお韓国軍は2022年3月24日の北朝鮮ICBMの正体を火星15の軽量弾頭搭載版と判断しており、3月25日に発表された写真は以前の別の日の2月27日か3月5日に発射した火星17の予備実験(性能を抑えた実験)での写真を流用したと見ています。3月16日の火星17発射失敗(おそらく全力飛行試験を企図していた)を誤魔化すためです。

 するとつまり、今回11月18日発射の火星17こそがこの新型ICBMの本当の初めての全力飛行試験成功ということになります。

2022年北朝鮮ICBM発射・推定8回(全力飛行試験2回)

  • 02月27日朝 予備実験 火星17
  • 03月05日朝 予備実験 火星17
  • 03月16日朝 発射失敗 火星17
  • 03月24日夕 発射成功 火星15(推定) ※発表写真は火星17
  • 05月04日昼 予備実験 火星17
  • 05月25日朝 予備実験 火星17
  • 11月03日朝 予備実験 火星17(推定) ※発表写真は火星15
  • 11月18日朝 発射成功 火星17

※「推定」は韓国軍によるもの。他の予備実験についても北朝鮮から詳しい発表は無く、推測の部分が多い。

※2022年これまで北朝鮮ICBMは発射8基。うち全力飛行試験成功2基、予備実験5基、発射失敗1基。

通算:北朝鮮ICBM全力飛行試験5回成功

  • 2022年11月18日 高度6040km 距離1000km 69分 火星17
  • 2022年03月24日 高度6200km 距離1080km 71分 火星15(軽弾頭)
  • 2017年11月29日 高度4475km 距離950km  53分 火星15
  • 2017年07月28日 高度3725km 距離938km  39分 火星14
  • 2017年07月04日 高度2802km 距離998km  47分 火星14

※最大高度6040km・水平距離1000kmのロフテッド軌道(山なりに高角度で発射する弾道)を通常軌道(最小エネルギー軌道)に直して計算すると、最大射程は1万5000kmを超える性能で、アメリカ本土の東海岸を優に射程内に収める。

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2022年11月18日:家族同伴で新型ミサイル視察

 なお金正恩氏は今回の視察で女性連れでした。金正恩氏の夫人と、初お披露目の娘さんのようです。新型ミサイル視察の場に家族を同伴という、意外な登場となりました。

北朝鮮・朝鮮中央通信より新型ICBM「火星17」と視察する金正恩と娘
北朝鮮・朝鮮中央通信より新型ICBM「火星17」と視察する金正恩と娘

北朝鮮・朝鮮中央通信より新型ICBM「火星17」と視察する金正恩と夫人と娘
北朝鮮・朝鮮中央通信より新型ICBM「火星17」と視察する金正恩と夫人と娘

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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