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北朝鮮ICBM発射失敗か

JSF軍事/生き物ライター
Google地図より筆者作成。北朝鮮ミサイルの着弾・着水地点は筆者推定。

 11月3日朝、北朝鮮が弾道ミサイル3発を発射しました。最初の1発は中距離弾道ミサイルのロフテッド軌道に相当する飛び方でしたが、ICBM(大陸間弾道ミサイル)だと分析されています。

 1発目は午前7時40分に平壌近郊の順安から発射されています。

韓国軍による観測

  • 1発目 最大高度1920km・水平距離760km・速度マッハ15

自衛隊による観測

  • 1発目 最大高度2000km・水平距離750km

 飛行性能の数字だけを見ると、北朝鮮の「火星12」中距離弾道ミサイルをロフテッド軌道で高く打ち上げた場合に相当します。しかし韓国軍はミサイルの「分離」を確認したことでICBM(大陸間弾道ミサイル)と判断しました。

  • 火星12 1段式液体燃料ロケット+分離弾頭
  • 北朝鮮ICBM 2段式液体燃料ロケット+分離弾頭

 北朝鮮のICBM「火星14(試験のみ)」「火星15(現役)」「火星17(開発中)」は確認されている3種類とも2段式液体燃料ロケットです。おそらく韓国軍は今朝の発射で切り離されて落ちて来る巨大な第1段ロケットをレーダーで確認してICBMと判断したのでしょう。1段式の火星12ではありえないタイミングでの部品の分離だったからです。

 そして韓国軍は「北朝鮮のICBMは第1段ロケットを切り離し分離した後の第2段ロケットが正常飛行しなかった」と分析しました。

[속보] "北 장거리미사일은 ICBM…2단 분리 후 정상비행 실패추정" | 연합뉴스 ([速報]「北朝鮮の長距離ミサイルはICBM…2段分離後の正常飛行に失敗したと推定」:連合ニュース)

 おそらく北朝鮮で開発中のICBM「火星17」が飛行途中で不具合が起きて発射に失敗した模様です。(追記:11月7日の北朝鮮発表写真でICBM「火星15」の改良型と判明)

 日本では「目標がレーダーから消失した」としてJアラートの警報が誤報となってしまいましたが、北朝鮮ミサイルの予期せぬ不具合によって見失ったのが原因の可能性があります。

なお、日本列島を超えて飛翔する可能性があると探知したものについては、その後、当該情報を確認したところ、探知したものは日本列島を超えず、日本海上空にてレーダーから消失したことが確認されました。

出典:北朝鮮のミサイル等関連情報:防衛省(令和4年11月3日)

2発目と3発目の短距離弾道ミサイルはKN-25超大型放射砲か

 なお今朝の北朝鮮ミサイル発射の2発目と3発目は、韓国軍によると午前8時39分ごろに北朝鮮の平安南道・价川から発射された短距離弾道ミサイルでした。(※ただし日本自衛隊の観測と照らし合わせると、3発目の発射時刻は午前8時48分。)

  • 2発目と3発目 最大高度70km・水平距離330km・速度マッハ5

 上記は韓国軍による観測数値です。平安南道・价川から距離330kmには、北朝鮮軍が何時も射爆場に使っている無人島「卵島」があるので、短距離弾道ミサイルはおそらく2発とも無人島に目掛けて発射した可能性が高いでしょう。

 北朝鮮が過去に発射したミサイルの性能と照らし合わせると、KN-25超大型放射砲が最も近い数字になります。(短距離弾道ミサイル並みの大きさのロケット弾。)

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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