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ステルス巡航ミサイルとなった12式地対艦誘導弾(能力向上型)

JSF軍事/生き物ライター
令和4年版防衛白書より12式地対艦誘導弾(能力向上型)の風洞実験模型

 2022年7月22日、防衛省は令和4年版防衛白書を公開しました(日本防衛省:防衛白書)。その中のPDF一括(別冊)【58.2MB】に、開発中の12式地対艦誘導弾(能力向上型)の風洞実験模型の写真が掲載されています。

 従来型の12式地対艦誘導弾は円筒形の一般的な形状の対艦ミサイルでしたが、能力向上型は機体を大型化した上で形状を一新し、ステルス性を高めた角張った形状となっています。もはや能力向上型とは名ばかりで、完全に別種の新型ミサイルだと捉えてよいでしょう。(なおステルス形状化することは以前から報道されており、情報公開請求で概略図も判明済みでした。)

  • 機体の大型化と主翼の装着で射程が200km→1500kmへと増大
  • ステルス形状化でレーダー反射断面積を減少し迎撃突破率の向上
  • 衛星データリンクとミサイル間UTDC(Up-To-Date Command)

 速力については亜音速なので、射程を大幅に増大させると到着までにかなりの時間が掛かり、その間に目標の敵艦が移動してしまうので、敵艦の最新位置情報をアップデートして衛星データリンクを経由して飛行中のミサイルに送ります。これがUTDC(Up-To-Date Command)です。

関連:飛翔中に衛星中継で敵目標最新位置情報を受け取る12式地対艦誘導弾能力向上型(2020年12月25日)

 この他にGPSの誘導補助もあるでしょう。すると12式地対艦誘導弾(能力向上型)は対艦ミサイルとして開発されますが、対地攻撃能力の付与は容易です。

 なお亜音速の巡航ミサイル(対艦ミサイル含む)は飛行プロファイル次第で射程が大きく変わります。空気が薄い高空を飛べば射程は大幅に伸びますが敵に見付かりやすくなり、見付かり難い低空は空気が濃く射程は減少します。

 また巡航ミサイルは迂回飛行を行って遠回りしながら敵が予想していない方向から奇襲する使い方なので、最大射程をそのまま有効射程として使うことはあまり無く、例え1500kmの最大射程があっても実用的な有効射程はもっと短くなります。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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