9月2日に防衛省から「令和3年度 事前の事業評価」が発表されています。この中で開発中の防空システム「基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾」が紹介されています。

  • 基地防空用地対空誘導弾(改)・・・略称:基地防空用SAM改
  • 新近距離地対空誘導弾・・・略称:新近SAM
  • SAM:Surface-to-Air Missile、地対空ミサイル

 基地防空用SAM改は航空自衛隊(略称:空自)、新近SAMは陸上自衛隊(略称:陸自)の予定装備となります。

「基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾」

防衛省「基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾」より
防衛省「基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾」より

 従来型の基地防空用SAMは11式短SAMの派生型で、一台の車両に短SAM×4発を搭載する形式です。そして従来型の93式近SAMは一台の車両に近SAM×8発(4本一纏めにしたキャニスターを2本搭載)を搭載する形式です。基地防空用SAMと93式短SAMは車両は同サイズでありミサイルのサイズが異なる防空システムでした。

 そして新しい「基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾」は両者が統合され同じミサイルを搭載します。これは近SAMのサイズとなるため、基地防空用SAM改は一台の車両に近SAM×16発を搭載する型式となります。4本一纏めにしたキャニスターを4本搭載します。

  • 基地防空用SAM・・・短SAM×4発
  • 基地防空用SAM改・・・近SAM×16発
  • 93式近SAM・・・近SAM×8発
  • 新近SAM・・・近SAM×8発
  • 短SAM:短距離地対空誘導弾
  • 近SAM:近距離地対空誘導弾

 短SAMと近SAMには厳密な大きさや射程の定義はありませんが、自衛隊で採用されたミサイルの場合は以下のようになっています。

  • 11式短SAM・・・ミサイル発射重量約100kg。射程10000m(推定)
  • 93式近SAM・・・ミサイル発射重量約12kg。射程5000m(推定)

【参考】平成27年版防衛白書:資料37 誘導弾の性能諸元

陸上自衛隊より11式短SAMと93式近SAMのミサイル弾体
陸上自衛隊より11式短SAMと93式近SAMのミサイル弾体

 短SAMの大きさはイスラエルのアイアンドーム防空システムで用いられているタミル迎撃ミサイルとほぼ同じサイズです。近SAMは歩兵携行地対空ミサイル(MANPADS)を車両搭載式にしたものです。

 航空自衛隊は航空基地を守るために高価なPAC-3迎撃ミサイルをなるべく弾道ミサイル迎撃に専念させたいと考えています。そして敵の巡航ミサイルは来襲する数が非常に多く、安価な迎撃ミサイルを大量に用意する必要があります。これを従来は短SAMが担当していたのですが、短SAMですら手数が足りなくなる恐れが出て来たので、新たに近SAMを用意することになったのです。

防衛省、令和3年度及び令和4年度の概算要求より新近距離地対空誘導弾
防衛省、令和3年度及び令和4年度の概算要求より新近距離地対空誘導弾

 空自向けの「基地防空用SAM改」と陸自向けの「新近SAM」の違いは、基地防空用SAM改は発射車両とは別にレーダー車両(射撃統制装置)と指揮統制装置が用意されている大掛かりな基地防空システムであるのに対し、新近SAMは発射車両に可視光/赤外線カメラとレーザー照準装置が付いており、発射車両一台が単独で対空戦闘が可能な野戦防空システムであるという違いです。

 なお新近SAMでも、上位の防空システムの射撃統制装置と指揮統制装置に連接して使用することも可能です。

防衛省より基地防空用地対空誘導弾(改)
防衛省より基地防空用地対空誘導弾(改)

防衛省より新近距離地対空誘導弾の発射器及び可視光/赤外線カメラ・レーザー照準装置
防衛省より新近距離地対空誘導弾の発射器及び可視光/赤外線カメラ・レーザー照準装置

 93式近SAMのセンサー部分は発射機前方に固定されており捜索照準には発射機そのものを旋回させる必要がありましたが、新近SAMのセンサー部分は回転ポッド式で単独で旋回することが可能です。

【参考】93式近距離地対空誘導弾:陸上自衛隊第2師団

  • 81式短SAM・・・空自と陸自で採用。搭載車両は6輪。
  • 93式近SAM・・・陸自が採用。搭載車両は4輪。
  • 11式短SAM・・・陸自が採用。搭載車両は6輪。
  • 基地防空用SAM・・・11式短SAMの空自型。搭載車両は4輪。
  • 基地防空用SAM改・・・近SAM化。空自が採用予定。搭載車両は4輪。
  • 新近SAM・・・陸自が採用予定。搭載車両は4輪。