9月15日正午過ぎ、北朝鮮が短距離弾道ミサイル2発を発射しました。日本海の日本のEEZ(排他的経済水域)内に着弾し、海上保安庁からの船舶に対する警報は12時38分に第一報が出されています。

 韓国軍合同参謀本部の分析によると、北朝鮮の中部にある平安南道・陽徳郡の付近から午後12時34分と午後12時39分に発射され、水平距離800km・最大高度60kmを飛翔し日本海に着弾したとのことです。

Google地図より筆者が半径800kmの円を引いた推定図
Google地図より筆者が半径800kmの円を引いた推定図

 最大高度が弾道ミサイルとしてはかなり低く、下降後に機首を持ち上げる「プルアップ機動」も確認されたことから、おそらくイスカンデル型を大型化した改良型と推定されます。限定的な滑空飛行が可能な機動式弾道ミサイルです。

北朝鮮発表写真よりATACMS型、イスカンデル型、2021年3月25日発射の新型
北朝鮮発表写真よりATACMS型、イスカンデル型、2021年3月25日発射の新型

 イスカンデル拡大改良型は今年の3月25日に初めて試験発射されて、この時は水平距離600km(当日は韓国軍は450kmと誤観測)・最大高度60kmを飛翔しています。しかし今回の9月15日の試験は水平距離800kmも飛んでおり、弾頭重量を大幅に軽くして飛距離を伸ばす試験を行った可能性があります。あるいは3月25日の試験がわざと最大性能で撃たずに抑えていたのかもしれません。

 そして最大高度60kmはSM-3迎撃ミサイルの大気圏外迎撃体では対処不可能な低い高度です。最大高度60kmに抑えたまま射程800kmまで伸ばしてきたことは技術的に注目すべきで、新型迎撃ミサイルの開発を急ぐ必要があるかもしれません。

 飛距離800kmは38度線ぎりぎりまで前進すれば大阪まで届く距離です。実際の運用では貴重な弾道ミサイルを見付かりやすい最前線に置くことは有り得ないのでやや後方に置くとしても、福岡や広島など西日本の大半が射程圏内になります。

Google地図より筆者が半径800kmの円を引いたもの
Google地図より筆者が半径800kmの円を引いたもの

 なお東京まで狙うなら最短で1100km、実用的には1300kmほどの射程が必要になります。もしイスカンデル拡大改良型が弾頭重量を軽くすることで射程800kmまで飛距離を伸ばしているのだとすると、これ以上の射程延伸は簡単な改良では望めません。

 しかし北朝鮮は将来的に滑空が可能な機動式弾道ミサイルよりもさらに滑空が得意な極超音速滑空ミサイルの開発計画を、今年1月9日発表の党大会報告で「극초음속활공비행전투부(極超音速滑空飛行戦闘部)」という表現で公式に言及しています。

 このまま北朝鮮の開発計画が進めば、10年20年先には東京まで「低い高度を維持したまま」届く極超音速兵器を手にするかもしれません。

 その際はアメリカが開発中の極超音速兵器対応型の新型迎撃ミサイルを導入する必要が生じることになるでしょう。

 「敵基地攻撃能力」で対処するのはもはや不可能です。北朝鮮が今回発射したイスカンデル拡大改良型は固体ロケット燃料なので、発射準備時間が僅か数分しかありません。猶予時間が短過ぎるので攻撃によって発射を阻止するのは現実的ではないのです。