訪米中の韓国の文在寅大統領は5月21日午後(日本時間5月22日午前)、米韓ミサイル指針の撤廃を発表しました。これで韓国軍の弾道ミサイル射程800km制限が消滅したことになります。

 米韓ミサイル指針はアメリカが韓国にミサイル技術を提供する代わりに保有ミサイルの性能を制限するもので、1979年に初めて結ばれて以降に4回改訂されていました。なおこれは主に弾道ミサイルと宇宙開発用の固体燃料ロケット技術を制限するもので、巡航ミサイルや無人機には射程の制限は最初からありませんでした。

米韓ミサイル指針における制限の変遷

  • 1979年・・・弾道ミサイル射程180km・弾頭重量500kg
  • 2001年・・・弾道ミサイル射程300km・弾頭重量500kg
  • 2012年・・・弾道ミサイル射程800km・弾頭重量500kg/射程500km・弾頭重量1000kg/射程300km・弾頭重量2000kg
  • 2017年・・・弾道ミサイル射程800km、弾頭重量無制限
  • 2020年・・・宇宙ロケット(固体燃料)の推力制限解除
  • 2021年・・・指針の撤廃、弾道ミサイル射程無制限

※巡航ミサイルと無人機には射程(航続距離)の制限は無かったのですが、弾頭重量(搭載重量)は500kg制限があり、大型無人機グローバルホーク導入時に搭載重量2500kgへ緩和し、現在は無制限。

 弾道ミサイル射程800km制限は「韓国南部から北朝鮮全土を射程に収める」「韓国からは北京にも東京にも届かない」という意味合いがありましたが、これが無制限になります。

Google地図より筆者作成、半径1200kmの円
Google地図より筆者作成、半径1200kmの円

 韓国から射程1000km以上あれば北京と東京を射程圏内。

韓国の弾道ミサイル

  • NHK-1・・・射程180km、弾頭重量500kg(白熊)
  • NHK-2・・・射程180km、弾頭重量500kg(玄武)
  • 玄武2A・・・射程300km、弾頭重量500kg
  • 玄武2B・・・射程500km、弾頭重量1000kg
  • 玄武2C・・・射程800km、弾頭重量500kg
  • 玄武4・・・射程800km、弾頭重量2000kg

※NHKはNike Hercules Koreaの略で、アメリカ製の大型地対空ミサイル「ナイキ・ハーキュリーズ」を改造し弾道ミサイルに転用した2段式ミサイル。NHK-1白熊は未配備。NHK-2玄武は第1段ブースターの形状を変更し、NHK-1で4本一纏めのクラスター式だったブースターを1本化。

※玄武2はロシア製イスカンデル弾道ミサイルに形状が酷似した1段式ミサイル。玄武2Cは弾頭分離式に改良。

※玄武3は巡航ミサイル用に割り振られた番号。

※玄武4については弾頭重量2500kg以上という報道もある。写真などは非公開のため形状は不明。