飛翔中に衛星中継で敵目標最新位置情報を受け取る12式地対艦誘導弾能力向上型

防衛省:令和2年度政策評価書(事前の事業評価)「12式地対艦誘導弾能力向上型」

 12月25日に発表された防衛省の令和2年度政策評価書(事前の事業評価)に防衛装備庁が開発する「12式地対艦誘導弾能力向上型」の項目が掲載されていました。既存の12式地対艦誘導弾を元に大幅な射程延伸を行う改造計画の資料です。

衛星を経由した地上装置~誘導弾データリンクによる目標情報更新

達成すべき目標

長射程化システムインテグレーション技術の確立

・ 長距離飛しょう性能向上

伸展構造大型主翼、RCS※1低減を考慮したエッジマネージメントの適用、ジェットエンジンの作動領域拡大

・ 誘導弾データリンク

衛星を経由した地上装置~誘導弾間UTDC※2技術の確立

・ 多目的ミッションプランニング

射撃計画立案機能、射撃効果見積・確認機能の確立

※1 レーダ・クロス・セクション (レーダ反射断面積)

※2 アップ・トゥ・デート・コマンド(地上装置からミサイルに指令を送信する機能)

出典: 防衛省:令和2年度政策評価書(事前の事業評価)「12式地対艦誘導弾能力向上型」

 長射程化とステルス化などは既報の通りですが、より重要な能力である「衛星を経由した地上装置~誘導弾データリンク」が此処に初めて掲載されています。具体的な射程の数字は掲載されていませんが、このデータリンク能力の付与で大幅な長射程化が計画されていることが分かります。

令和2年度事前の事業評価「12式地対艦誘導弾能力向上型」:防衛省
令和2年度事前の事業評価「12式地対艦誘導弾能力向上型」:防衛省

 この誘導弾データリンクによる目標情報更新とは「飛翔中のミサイル」に敵目標の最新位置情報を送り続けるという意味です。長距離を飛翔する亜音速の対艦ミサイルは着弾までに時間が掛かるので(例えば1000km飛翔するのに1時間以上掛かる)、その間に敵目標が移動する艦船なので見失ってしまう可能性がある問題を解決することができます。これによりミサイル自身が見失った敵目標を探し回る必要が無く、延伸された射程能力を十全に活かすことができます。

 目標の発見・触接は航空機で行い、データの中継を衛星で経由します。敵艦船目標を直接に衛星で探知するシステムについては取得する計画は無く、書かれていません。

「12式地対艦誘導弾能力向上型」と「島嶼防衛用新対艦誘導弾」

令和2年度事前の事業評価「12式地対艦誘導弾能力向上型」:防衛省
令和2年度事前の事業評価「12式地対艦誘導弾能力向上型」:防衛省

 なおミサイルのイラストは以前から行われていた研究の「島嶼防衛用新対艦誘導弾」からの使い回しです。

平成29年度事前の事業評価「新対艦誘導弾の要素技術の研究」:防衛省
平成29年度事前の事業評価「新対艦誘導弾の要素技術の研究」:防衛省

 ただし「12式地対艦誘導弾能力向上型」は「島嶼防衛用新対艦誘導弾」そのものではなく、島嶼防衛用新対艦誘導弾で先行研究していた長射程化やステルスなどの要素技術を取り入れたものになります。長距離を飛翔するには主翼が必要となり、対レーダーのステルス形状を付与されるので、元の12式地対艦誘導弾とは形状が全く異なったものになるでしょう。もはや改造とは名ばかりの新型兵器です。

 なお島嶼防衛用新対艦誘導弾では「高機動化による残存性向上」という要素技術も研究されていますが、これは12式地対艦誘導弾能力向上型には時期尚早ということで適用はされません。自民党国防議連事務局長の佐藤正久議員が島嶼防衛用新対艦誘導弾の驚くべき概念図を公開しています。

 右側の図のように高機動化による残存性向上とは最終突入段階でバレルロール(螺旋を描きながら回転する飛行)しながら飛翔することで、敵艦の近接防空兵器の対空機関砲の照準を回避することを狙っています。これを行うには機体と翼の強度を確保し高度な誘導制御技術が必要となるでしょう。

※左側の図の「12式SSMの能力向上」と紹介されている参考写真は実際には88式SSMです。(SSMとはここでは地対艦ミサイルの意味)

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