グアム配備イージスアショアで中国の新型ミサイルに対抗

参考写真:アメリカ軍よりハワイ配備イージスアショア実験施設

 7月21日にアメリカ軍のインド太平洋軍司令官フィリップ・デービッドソン海軍大将は、2026年までにイージスアショアをグアムに配備するべく2021会計年度から予算を投じるべきだとの考えを表明しました。グアムには既に弾道ミサイル防衛システムとしてTHAADが配備されていますが、これと置き換える計画です。

Protecting Guam from Chinese Missiles is Top Priority for INDO-PACOM’s Davidson - USNI

 なお1月28日にはジョン・ルード国防次官(当時)が下院軍事委員会でグアム配備のTHAADをイージスアショアと置き換えるべきかどうか検討中と説明していました。House Rules - MDAA

 つまりアメリカ軍のグアム配備イージスアショア計画は、日本が6月22日にイージスアショア計画を中止するよりも以前から検討されていた案であり、日本配備イージスアショアの動向とは無関係にそのまま進められる方針のようです。

イージスアショアとTHAADの違い

 グアム配備の弾道ミサイル防衛システムとしてTHAADが既にあるのにイージスアショアと置き換える理由は何か、それは対北朝鮮ではなく対中国を掲げている点が大きいと考えられます。北朝鮮がグアムを攻撃する手段は弾道ミサイルのみですが、中国は弾道ミサイルと巡航ミサイルの両方で攻撃することが可能です。

 しかし対弾道ミサイル用のTHAADは最低迎撃高度40km以上なので、海面付近を這うような低高度で飛んで来る従来型の巡航ミサイルは迎撃できません。これがイージスアショアならば、対弾道ミサイル用のSM-3迎撃ミサイルだけでなく巡航ミサイルにも対応可能なSM-6迎撃ミサイルを扱えます。パトリオットのPAC-3迎撃ミサイルでも巡航ミサイル対応は可能ですが、イージスアショアのSM-6ならば射程がPAC-3よりもかなり長い上に早期警戒機とのデータリンクによる連携で超水平線射撃が可能となり、遠距離で迎撃することで大きな余裕が生じます。

イージスアショアの利点

 グアム配備イージスアショア計画の要点は以下の通りです。

  • 対北朝鮮だけでなく対中国を主な理由に掲げる。
  • SM-3で弾道ミサイル、SM-6で巡航ミサイルに対応。
  • 将来的には極超音速兵器にも新型迎撃ミサイルで対応が可能。(※RGPWS計画やHDWS計画「SM-3HAWK」が始動済み)
  • 現状では極超音速兵器に対し拠点防空の狭い範囲ならSM-6でも対応が可能。(※ただしこの条件ならばPAC-3でも交戦可能)

 このアメリカ軍の方針で重要なのは巡航ミサイル対応も勿論ですが、「イージスアショアで中国に対抗する=極超音速兵器に対抗できる」と考えているという点です。SM-3では対応できない高度70km以下を飛んで来る極超音速兵器にも新型迎撃ミサイルで対応できるようになるものと予定されています。

 なお中国からグアムを攻撃しようとした場合には射程3000~4000kmは必要になるので、軍事パレードでも公開されたDF-17極超音速滑空ミサイルでは届きません。将来的に中国がもっと長い射程の新型ミサイルを登場させてきた際に、アメリカも新型迎撃ミサイルで対応する予定です。

THAADの欠点

 THAADも極超音速兵器にある程度は対応可能で、射程延伸型のTHAAD-ERも計画されていますが、以下のような問題があります。

  • 海面付近を這うような低高度で飛ぶ既存の巡航ミサイルを迎撃できない。
  • レーダーのカバー範囲は水平方向で120度。(迂回してきた巡航ミサイルを捕捉できない)
  • 極超音速兵器が高度40km未満を飛行してきたら迎撃できない。それ以上なら迎撃可能。

 THAADは従来型の巡航ミサイルを迎撃できない上にレーダーも巡航ミサイル警戒にはあまり役に立ちません。また極超音速兵器がTHAADの最低迎撃高度の40kmより低く飛行してきた場合、迎撃できなくなります。極超音速兵器は大きく分けて極超音速滑空ミサイルと極超音速巡航ミサイルの2種類がありますが、前者は条件次第でTHAADでも対応可能ですが、後者は高度30km付近を飛んで来るのでTHAADでは対応できません。極超音速巡航ミサイルはロシアが実用化間近で中国はまだ先の話になりますが、何時かは対応策を考えないといけなくなります。

 こうしてイージスアショアとTHAADを比較した場合、イージス向けの新型迎撃ミサイル(極超音速兵器に対応)が用意できるという前提に立つならイージスアショアの方がグアム防衛に適しています。アメリカ軍は「敵が迎撃し難い新型攻撃ミサイルを開発したら、こちらも新型迎撃ミサイルを開発すればよい」と考えており、イージスアショアは進化を続けて北朝鮮どころか中国にも対抗できる兵器であると認識している点は重要になるでしょう。

 そしてもしグアム以外にも太平洋にイージスアショアを配備したいとなった場合、ハワイのイージスアショア実験施設を実戦仕様にする案を除けば、何処かの同盟国に配備するという話になります。今後、新たなイージスアショア配備問題が生じるかもしれません。