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北朝鮮が弾道ミサイル発射、日本まで到達可能な新型の可能性

JSF軍事/生き物ライター
参考写真:北朝鮮発表より2019年5月に発射された短距離弾道ミサイル

 7月25日早朝、北朝鮮が元山付近から日本海に向けて弾道ミサイルを発射しました。韓国軍合同参謀本部の発表によると2発が確認され、水平方向の飛距離は430kmと690km、最大高度はどちらも50kmと伝えられています。飛距離430kmの方は5月に発射されたイスカンデル短距離弾道ミサイルの模倣品とほぼ同じ飛行性能であり、同じ物である可能性が高いと考えられますが、飛距離690kmの方は5月の発射時より遠くまで飛行しており、更なる改良型か別の新型ミサイルである可能性があります。

 水平距離430kmで最大到達高度50kmの弾道ミサイルならば打ち出し角度が約20度の浅い弾道(ディプレスト軌道)となるので、最もよく飛ぶ角度(最小エネルギー軌道。短距離ならば45度に近い)で飛ばした場合は水平距離600kmを超える最大射程を有していると推定できます。これはオリジナルのロシア製イスカンデル短距離弾道ミサイルに近い性能数値です。

 水平距離690kmで最大到達高度50kmの弾道ミサイルならば打ち出し角度が約15度の浅い弾道(ディプレスト軌道)となるので、最もよく飛ぶ角度の45度(最小エネルギー軌道)で飛ばした場合は水平距離1200kmを超える最大射程を有していると推定できます。これはオリジナルのイスカンデルの最大射程を大きく超えており、ノドン準中距離弾道ミサイルに匹敵する最大射程を有していることになります。

 

 つまり韓国軍の発表した水平距離と最大高度の数値が正しい場合、今回の北朝鮮のミサイルが浅い角度で発射された弾道ミサイルとするならば、能力的な最大射程は690kmではなく1200kmであり日本まで余裕をもって届く準中距離弾道ミサイルである可能性が出て来ます。日本への直接的な脅威となる上に、短距離弾道ミサイルまでなら問題視しない態度を取っていたアメリカを揺さぶる形になります。北朝鮮の脅迫が新たな次の段階に移ったことになるので、韓国軍の確認した数値が本当に正しいか精査して慎重に判断する必要があります。

【追記】韓国軍が北朝鮮ミサイルの飛行距離を600kmに修正、最大射程は推定800~1000km(2019/07/26)

 翌7月26日に韓国軍合同参謀本部は飛距離690kmを600kmに修正、最大高度は50~60kmのままでしたので、能力的な最大射程は推定800~1000kmの短距離弾道ミサイルとなります。これはスカッドER並みの射程となり、距離800kmで大阪を、距離1000kmで静岡を狙える能力があります。

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軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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